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第2話 聖域への侵入者

ご覧いただきありがとうございます。ぜひ最後まで読んでいただけたら幸いです。よろしくお願いいたします。

キーンコーンカーンコーン。


四時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。


「澪央、一緒にご飯だーべよっ!」


「うん。いいよ。おいでー」


「ずるい!あーしも!」

「わたしも!!!」

「抜け駆けしないでよ!!」


相変わらず近寄りがたい雰囲気(ふんいき)をまとっているのに、「女帝」の人気といったらすごいもんだ。


「じゃあ俺もー!いいよね!?澪央ちゃん!」

チャラ男が声をかけた、その瞬間。


「ん?普通に無理だけど。」

グサッ。


チャラ男、撃沈(げきちん)。 


その冷たい視線とともに放たれた一言は、チャラ男の心に深い傷を刻み込んだ。

まあ、知らんけど。


そんなこんなで待ちに待った昼休み。俺は、活気(かっき)に包まれる教室を後にして、そそくさと廊下(ろうか)へ出た。


購買(こうばい)の菓子パン戦争に挑むわけでもなく、向かう先はというと、トイレである。


……別に腹の調子が悪いわけじゃない。


いつも通りの居場所。言ってしまえば、俺の聖域(せいいき)。

そして、ミラクル☆ハートの風呂敷(ふろしき)に包まれた弁当箱を取り出す。


便所メシならぬ、聖域メシである。


穴場は一階、昇降口前のトイレだ。


三つある個室のうち、真ん中を陣取る。そして結界を張る。

左右の個室に人を入れないという作戦だ。 


「結界、起動!へへっ」


結界を張るなんていっても、そんな能力を持っているわけがない。


......まあ、なんだ。別にそんなのいいじゃないか。あるんだよ、オタク特有の人を寄せ付けない何かが。


「これでこの空間は俺のものだ。青春リア充野郎どもは腹痛を我慢し、午後の授業は苦しむがよいさ!ハハッ!」


そんなくだらないことを口にし、ラノベのページをめくる。そして唐揚げへと箸を運んだ。


「にしても、奴らはすごいもんだ。俺らのような人種は、人と会話するだけでMPを消費してしまうからな。」


が、あいにく俺に会話できる相手なんて存在しなかった。


___あの一人を除いて。


ピコン。


聖域の中に、通知音が鳴り響く。

恐る恐るスマホを取り出し、画面を確認する。


噂をすれば、【澪央】と表示されたメッセージが一件。


俺と関わりのある唯一の人物で、幼馴染。「女帝」こと黒瀬澪央からだ。


高1の頃からクラスメイトだが、もちろんクラス内では話すことはない。


【澪央】

ねー、今日部活やるよね。ね??



さっきの教室との違いはなんなんだ。そう心の中で思いつつ、俺は返信する。


【和泉】

そりゃやるんだけどさぁ。お前、まさかまた来るのか?



俺は別に来てほしくない......なんてことはない。いや、だからといって来てほしいわけでもないんだが。


【澪央】

へー、そんなこと言っていいのかなー?あれがあるのにーー?



あれとは一体なんなのか。思い当たる節(ふし)はないと思っていたが、あれのことなのか......?


違う意味でトイレで悶絶(もんぜつ)する俺。


脳裏(のうり)には、俺をからかう黒瀬のニヤついた顔が浮かぶ。


そして俺は、思いがけない彼女のメッセージに息を呑(の)む。


【澪央】

ミラクル☆ハート第3巻の円盤特典OVAを持ってきたのに。残念残念。



「嘘だろ!第3巻の円盤特典OVAだと!?あの伝説の温泉回!!見たすぎる!!」


思わず声が漏れた。


この『ミラクル☆ハート』第3巻は、特典であるOVA目当ての購入者が殺到し、即完売してしまった。俺は手に入れることができなかったのだ。


なんとしてでも見たい。この伝説の温泉回を!!!!ルミナのタオル姿を!!!!!!


【澪央】

じゃ、この話は無しだね。一緒に見たいって言ってたくせにー。



実は先日、OVAを貸してもらうことを約束していた。


【和泉】

一緒に見るなんて約束はしてない!!!貸してって言っただけだ!!


【澪央】

そんなこと言ってますが、ほんとは私と一緒に見たかったくせにー。


【和泉】

は、はぁ!?違うわい!!!妙な憶測(おくそく)はやめろ!!


【澪央】

ほら、また鼻の下伸ばしてるんじゃないの??

この変態オタクー


【和泉】

は、はぁ?!変な憶測はやめろ!!!


【澪央】

トイレでぼっち飯のくせにー。どうせラノベでも読んでんでしょ?ぼっちっちー



「あんたもオタクだろうが!」

「この猫被り偽クールギャルが!」

「いや、あと普通にぼっちっちーってなんだよ。このビッチッチーが。」

......。


(いやビッチッチーってなんだよ。)


【和泉】

わかったよ、放課後部室な。


【澪央】

はいはい笑

じゃ放課後ね。



畜生(ちくしょう)、いつもしてやられる。ほんとにこのクールギャル。俺の世界に入り込むのが好きらしい。


こうして俺は、午後の授業を乗り越え、放課後を迎えることになる。


_____このときの俺は、まさかあの部室で、あんな目に遭(あ)うとは思ってもいなかった。

最後までお読みいただきありがとうございます。読者の皆さんが読んでいてクスッと笑える。そして、ヒロイン澪央ちゃんの魅力が存分に伝わるような作品にできたらと思います。まだまだですが、これからの展開にも期待していてもらえたら嬉しい限りです。よろしくお願いします!



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