21-2 命の価値 (後編)
◆
私は座り込んだまま、リンを見ていた。
彼を見捨てることなんて、できない。
それは単純な理由で、彼に死んでほしくないだけだ。
例え自分が死ぬとしても、彼には生きていて欲しい。
それでもここで自分が死ねば、彼の今までの努力は水の泡になる。
許せるのか? それが。
どうしたらいい?
もうリンは何も言わない。時折、咳き込んで血を吐いている。その状態でも、体を起こし、剣を構えようとしている。
反乱軍はすぐそこだ。
私が生き延びられる可能性なんて、どれだけあるのか。
ここに至る前、多くに人が私のために戦った。
その全てが、無駄になることを、受け入られるのか。
私は肌身離さず持っていたものを取り出した。長い紐があるその小さな袋を、リンに押し付けた。
「生きなさい」
私はそれだけ言って、どうにか立ち上がった。
左膝が物凄く痛んで、立てなかった。倒れこんで、今度は右脚と両手を頼りに、斜面を這い進む。リンを振り向きたかったけど、できなかった。
人の喧騒が聞こえる。
まるで帝都の喧騒だ。
静かなはずの森の中なのに、おかしいな。
私はもう、死んでいるのか?
これは夢か?
夢だったら、良いのに。
喧騒が押し寄せた。
私は顔を上げて、光を背景にこちらへ向かってくる兵士の群れを、やっと認めた。
◆
僕はリーアが禁軍に保護されるのを見てから、やっとしゃがみ込んだ。
モロー砦への偵察に行った兵士が、援護を手配してくれたんだろう。
これで、終わりだ。
全身が痛んだ。呼吸が苦しい。
視界も暗くなってきた。
もう、日が暮れるのか。
長い一日だった。
静かだ。
体がふわりと、浮かんだ気がした。
闇の中に、浮かんだ気がした。
(続く)




