二
次の日、メイドさんたちに私は言いましたよ!
「今までのこと、ごめんなさい」って。
メイドさんたちは目を丸くしていました。
でも、私は引っ込み思案だからと言って、彼女たちを無視したり、していましたからそれについてはやっぱり謝らなくてはいけません。それに彼女達はいまの流行をばっちりと押さえているはず、仲良くなっておけば服選びも楽になるでしょう。
仲良く、これ大事。
メイドさんたちはきょとん、としていましたが、私の必死さが伝わったようで、みなさん許してくれました。
しかし、それも、私がお屋敷の娘だからであって、本心ではないかもしれません。
これからは月一回でも、彼女たちとお茶を飲む機会を作ったりして、なんとか仲良くなりたいものです。
とりあえず、今日は洋服を買うのに付き合ってもらうことにしました。
私がいつも行っている店に連れて行ってもらいます。
さすがに生地はよく、縫製もしっかりしていて高級なのは分かるのですが、悪役令嬢らしい毒々しさがありません。
こう、身から毒が染み出るようなぎらぎらとした洋服を見に行きたいものです。
「もう少し、派手なお洋服のお店はないかしら」
そういうと、ずっと私に仕えているミーナは驚いたように私をみました。
「お嬢様はあまりそう言ったお洋服は好みではないのでありませんでしたか?」
「ええ。そうなのだけれど、この間初めて学園に行った時に、みんながきらきらしているのが羨ましくて」
そう、もっともらしい理由を話すとミーナはきらきらと輝くような笑顔になった。
「私、以前からお嬢様にはもっと似合うお洋服があると思っておりました! お任せ下さい! 学園で一番かわいいのはノーチェ様です。別の店に行きましょう!」
そういって、連れてこられたのは、リボンとフリルで彩られた魔の……いやいや、可愛らしい世界。
ミーナは私にこれはどうでしょう? これは?
そう言って、さまざまな服を見せて来る。
「私、今日は何着ぐらい買えるかしら?」
「そうですね。いままでお嬢様は倹約でおられましたから、ここで百着服を買っていただいても問題がないほど蓄えがございます」
「ひゃ、百着!?」
「驚かれては困ります。お嬢様はクロース家の大事なお嬢様なのです。本当は小さなころからフリルの中で暮らしていただいてもよろしいくらいのお方ですのに。控えめでいらっしゃいますから。でも、ご安心ください。お嬢様は着飾れば、ご自身でも驚くぐらい見違えるほどの資質をおもちです!」
「あ、ありがとう」
「さ、さそくお着替えください」
そう言われ、都合三時間にわたって延々と試着が行われ、ミーナの厳しい選考に受かった三十着が私の私服に加えられた。
「これからはオーダーメードの服も作りましょうね! お嬢様!」
「ええ……」
私はもう疲れてしまって、先ほどから、頷くだけになっている。
その夜、布団に入りながら明日の事を考えた。
入学式でこそ、目立たなかったから従兄弟のオートルモンチェにしかあっていない。彼との挨拶も記憶の奔流に飲み込まれる中ではまともにできるはずもなく、本当の意味で、明日が私の学園生活の初日だ。
私は「ビブリオ学園」で、ちゃんと悪役になりきれるだろうか。
翌朝、私は早起きして、自分の髪をお嬢様風に巻いてもらい、うっすらと化粧までしてもらって、馬車に乗り込んだ。
ふ、新入そうそう、馬車で学園に乗り付ける厚顔不遜なお嬢様の誕生だ。
これで、文句なしに悪役路線に乗れるはずです。
学園まで着くと、下ろしてもらって大きな門から中に入ります。
ビブリオ学園は初等科、中等科、高等科、そして大学からなるエスカレーター式の学園だ。
皇子も入学するように小さい頃から帝王学を学ぶ授業のカリキュラムが組まれており、数多くの政治家を排出している。
また、一方でこの学園に入学する女子生徒は未来の花婿を見つけてもらいたい、親の意向で入れられていることが多い。中等科に上がると、とたんに色気づくのもこれが原因だ。しかも、今回は入学希望の女子生徒が後を絶たなかった。その理由が、今年入学する我が国メリル皇国の皇子「ブランスケット・メリダ」が入学するためだ。
皇子の目に留まること、これは未来の后候補になるということである。
躍起にならない筈がない。
私は逆に嫌われる方向性を極力目指しますが、もちろん。
私はとりあえず、両親に勧められたようにもう一度改めて、従兄弟のオートルモンチェに会いに行くことにしました。
「こんにちは」
「誰?」
オートルモンチェは無口でクールな、男の子です。けれどはまったものに対してになると、暴走してしまうところを魅力として書きました。やはり、彼はそいうタイプのようで、にこりともしません。
さあ、第一印象をこのままぶち壊してやりましょう。
「わたくしはルーチェ・クロース! ふん、あなたみたいな無口で愛そうにない男のためにもう一度自己紹介するなんて気が進まないのだけれど、従兄弟だから仕方なく挨拶してあげるのよ」
よし、決まった。