天逆毎篇 十一章 あ!やせいのバケモンがとびだしてきた!
とりあえず、近くの草むらに隠れて、様子をうかがおう。あの化け物に効きそうな何かといえばなんだ?
塩だ。でも塩なんて都合よく落ちてるわけない。しいて言えば修学旅行にこっそり持ってきていた塩おにぎりぐらい。
でもやめておこう。塩も米も多分神聖なものだけど自分が食べたいしもしかしたらずっと肌身離さず持っていたから腐っているかもしれない。さすがに腐っているものは神聖ではないだろう。
じゃあなんだ?やっぱりこんな時はこぶしか?こぶしなのか?うーん。
ウっ!
ずっと放置していたおなかに痛みが走る。
そういえばスマホ使ってたし、ずっと歩いていたから爪紅塗ってないんだった。急いで塗らないと。
そう思って急いで瓶を取り出し、ふたを開ける。いや、絵筆とかどこにあるねん。もういいや、瓶にそのまま指ツッコん―――
その時の経験をのちの伏見 咲哉はこう語る。
「いやーびっくりしましたね。指を突っ込もうとしたら、いつのまにか日向に出ていたんですよ。移動してないのに。つまり、隠れてたはずの茂みがなくなってるんですもん。最後まで隠れさせてくれよって感じですよね。何が言いたいかって、あの状況でびっくりするなと言われる方が無理なんですよね。」と。
端的に話すと、いつの間にか伶冶さんとバケモンの戦いが白熱し、近くまで来ていた。
そして、茂みが壊され、そこに隠れていた僕があらわになった。
視線を向けるとバケモンの汚らし――みにく――特徴的な顔がとても近くにあった。いやホラゲーかな?
さて、みなさんはバケモンの顔がガチ恋距離にあったらどうするか?
僕の答えは手を突き出した。せめてこぶしで一矢報わせてやろうとしたのだ。
しかし今の僕が持っているのは封の空いた中身入りの瓶。もうここまでくれば何が起こったかはわかるだろう。
そう、中身の液体がバケモンの顔にビッチャアしたのだ。ドッキリ番組でも見たことのないくらいきれいに濡れた。
「うわぁぁぁ許してくださいごめんなさいゆるしてくださいぃぃぃぃ!」
つい条件反射で謝ってしまった。お辞儀付きのフルコースで。が、反応がない。なんかやらかしてしまったか?
恐る恐る頭をあげると、バケモンが伸びていた。巨大化したわけではなく、地面に伸びる――つまり倒れていた。なんかごめん。
さらに頭を上げると、伶冶さんが口を開けてぽかんとしていた。その間抜け面に僕はつい、笑ってしまった。




