24.金色の瞳
血飛沫が絨毯を染め上げる。
静まり返った書斎。
ロットバルトは顔を横に向け、広がっていく血液を眺める。
「……なるほど。」
苦しむ様子もない。
その低い声に、オディールの背筋が凍る。
「愚かな娘だ。」
ロットバルトの足が、オディールの腹部を蹴り上げた。
身体が吹き飛び、机へ激突する。
机上の書類やインク瓶が床へ散乱した。
ロットバルトはゆっくり立ち上がる。
鮮血が溢れる。
左手を傷口へ添えると、小さく何かをつぶやき、黒い光が首を包む。
傷口が閉じていき、やがて血も止まった。
オディールは息を呑む。
(やっぱり……。)
人間ではない。
「終わりだ。」
ゆっくり近づいてくる。
オディールは腹を押さえ、体を起こす。
震える手で、床に転がった万年筆を拾う。
顎が震え、歯が音を立てる。
それでも立ち上がり、構えた。
ロットバルトはため息をつく。
オディールは叫びながら飛び込んだ。
「うあああっ!!」
一直線に突き出された万年筆。
しかし、ロットバルトの右手は、容易にその手首を掴んだ。
万力のような力。
骨が軋み、指先から力が抜ける。
万年筆が絨毯へ転がった。
ロットバルトはそのまま腕を引き寄せる。
体勢を崩したオディールを、絨毯へ叩きつけた。
衝撃に息が詰まる。
ロットバルトは馬乗りになると、両手で首を掴んだ。
ゆっくりと締め上げていく。
「……っ!」
爪を立て、腕をかきむしる。拳で叩く。足をばたつかせる。
しかし、視界が揺れる。
意識が遠のき始めた、その時――
廊下から怒号が響いた。
ドンッ!!
書斎の扉が激しい音を立てて開いた。
護衛たちを押し切り、ジークフリートが飛び込んでくる。
「何をしている!」
後ろには女性書記と数名の護衛。
廊下では、ロットバルトの護衛たちともみ合う音。
ロットバルトはゆっくりと振り返る。
猛禽類のような金色の瞳が、ジークフリートの姿を捕らえた。




