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22/27

22.披露宴

街中でのパレードを終えた一行は、ジークフリート本家の邸宅へ移っていた。


宵の帳が下りる頃には、広間は貴族や豪商たちで埋め尽くされた。


天井にはシャンデリアが輝き、楽団が穏やかな円舞曲を奏でている。


「ご結婚、おめでとうございます。」


「末永いご多幸を。」


祝いの言葉が絶え間なく続く。


ジークフリートとオディールは笑顔で応えながら、次々と客へ挨拶を返していく。


少し離れた場所では、ロットバルトも多くの商人に囲まれていた。


「素晴らしいお嬢様ですな。」


「ありがとうございます。」


満足げに杯を傾けながらも、その視線だけは会場全体を見渡している。


すべて計画どおり。


そう思っていた。


その時だった。


広間の入口が騒がしくなる。


「お待ちください!」


使用人の制止する声が響いた。


場違いなほど古びた外套を羽織った一人の女が、よろめくように中へ入ってくる。


乱れた髪。やつれた頬。


酒の匂いまで漂ってきそうな姿だった。


オディールの顔から血の気が引く。


(お母さん……。)


女は人混みを見回し、やがて壇上のオディールを見つけた。


「見つけたよ!」


その声に、楽団の演奏が止まり、広間が静まり返る。


「オディール!」


女は手を伸ばした。


「幸せそうじゃないか!」


ジークフリートは困惑しながらオディールを見る。


「……あの方を知っているの?」


オディールは答えない。


硬い表情で女性をじっと見つめている。


間にロットバルトが割って入った。


「いいえ、存じ上げませんな。」


冷たい声だった。


ジークフリートは使用人へ目を向ける。


「何をしている。」


声に厳しさが宿る。


「すぐにお引き取り願いなさい。」


使用人が女を取り押さえようとする。


「離しな!」


女は暴れる。


「娘に会いに来ただけだよ!」


「娘?」


ジークフリートは再びオディールを見る。


間髪入れずにロットバルトが鋭い声をかぶせた。


「耳を貸してはなりません。所詮、祝いの席に紛れ込むタチの悪い詐話師の類でありましょう。よくある事です。」


ジークフリートが使用人に目配せする。


使用人たちは女を会場の外へ引きずるように連れて行った。


やがて扉が閉まる。


楽団も恐る恐る演奏を再開した。


止まっていた時間が、再び動き始める。


しかし、オディールだけは違った。


胸の鼓動が速い。


視線は自然とロットバルトへ向かう。


何事もなかったように客へ頭を下げ、穏やかに笑う姿がそこにはあった。


−−−−−−−−−−−−


ジークフリートは、花嫁の異変に気づいていた。


「オディール。」


小さく声を掛ける。


「大丈夫か。」


「……はい。」


笑おうとする。


けれど、その笑顔はひどくぎこちない。


「疲れたのなら、少し休んできてもいいからね。」


祝宴は華やかな音楽に包まれて続いていく。


誰もが新郎新婦を祝福していた。


その一方で、ロットバルトという男への疑念が、ジークフリートの中で静かに膨らみ始めていた。

挿絵(By みてみん)

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