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剣より鋏 〜異世界で人を整える理容師の物語〜  作者: 刈り〼


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第一話 静かな転生

どこか少し上の空で1日を過ごしていた、、


店を出る頃には、雨脚は少しだけ強くなっていた。


傘を差し、いつもの帰り道を歩く。


今日一日の出来事が頭の中を巡る。


最後のお客様


一本の電話


「父が最後まで『髪を切ってもらってよかった』と言っていました。」


あの言葉が、何度も胸の中で繰り返される。


(床屋って、人の人生に何ができるんだろう。)


信号が青に変わる。


横断歩道を渡る。


雨で滲んだ街の灯りが、アスファルトに映っていた。


あと数歩で歩道に上がる、その瞬間だった。


左後ろから雨とタイヤと水しぶきの音が響く、


大型トラックが左折してくる。


運転手は、雨で死角になった俺に気づいていなかった。


振り向く間もなかった


強い衝撃。


身体が宙に浮く


世界がゆっくりと回転する


雨粒だけが、不思議なほどゆっくり見えた。


意識が遠のく中、ふと右手を見る。


何も握っていないはずなのに、いつもの癖で指が動いていた。


ハサミを開くように。


カチッ。


そんな音が、確かに聞こえた気がした。


そこで、俺の世界は静かに幕を閉じた。

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