↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きな人がパーティを追放された  作者: myano
未開拓地探索編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/98

密林地帯と雨

 明くる日。

 調査を終えて野営地に戻ったのは昼前のことだった。

 朝から降っていた雨は時間が経つにつれてどんどん強くなり、今では土砂降りになっている。

 俺たちは小さなシートを木の枝に張り、その下で身を寄せ合っていた。


「こんなに激しい雨が降るなんて……」

「場所を変えたほうがッ! 良いのかな」


 雨水が溜まって垂れ下がってきたシートを殴り上げる。

 すると、バシャリと四方から水が落ちた。


 ……なんかこれ、楽しいかも。


「でも、近くに雨を凌げるような場所なんてあるかな?」

「土砂降りの中探すのも……ねぇ」

「とはいえ、ずっとこうしているわけにはいかない。ご飯を食べられないし、横になることもできないんだから」

「――っ! 確かにそうだね。グレインのご飯抜きなんて考えられない!」


 ミレナが瞳に闘志の炎を燃やすと、リリアとゼフレンは苦笑した。



 俺たちは雨の中、雨宿りできる場所を探し回る。

 持っていた小さな笠を被ることで頭だけは雨を防げるが、他はすぐにずぶ濡れになってしまった。

 気温が高いおかげで冷たい雨じゃないのと、霧が出ていないことが救いだ。


 隣のミレナをちらりと見る。

 彼女とリリアはローブの上に毛皮の外套ケープというらしいを着ている。だが、丈が胸元までと短いせいで、それより下はしっかりと濡れていた。

 濡れたローブが身体に纏わりつき、身体のラインが浮き出ている。カナリスやグラシアさんのような体型だと目のやり場に困るが、二人は……うん。


「グレイン、何か失礼なことを考えていなかった?」

「キノセイジャナイカナ」


 ミレナが怪訝な顔で見てくるので、俺は話を逸らすことにした。


「そ、それより! 濡れて身体が冷えてない? 大丈夫?」

「この辺りは暖かいから平気だよ。濡れた服が身体に張り付いてくる感触が気持ち悪いけど……」

「早く雨宿りできる場所を見つけて、服を乾かさないとね」



 だが、1時間以上探し回っても雨宿りできそうな場所は見つからない。

 その間も雨は容赦なく降り続け、俺たちの体力と気力を奪っていく。


 ――さすがに辛くなってきた……。どこでも良いから雨宿りがしたい。


 その願いが通じたのだろうか。リリアが左前方を指差す。


「あっ! あれ、洞窟じゃない!?」


 木々の隙間から、岩肌がポッカリと大口を開けているのが見えた。

 少しでも居場所が前後すれば木の死角になっていただろう。見つけてくれたリリアに感謝だ。


「本当だ! 行ってみよう!」


 俺たち4人は洞窟に向かって駆け出した。



 洞窟はかなりの道幅があり、ずっと奥まで続いている。

 空気の流れを感じるので、どこか外に繋がっているようだ。


 俺とゼフレンが協力して焚火を用意する。

 長い間、この洞窟には誰も立ち入っていなかったようで、足元に木の枝が散乱していた。たぶん、外に生えている木の枝が風で飛ばされて来たのだろう。

 俺たちはそれを拾い集めて焚火の燃料とした。


 火が十分に大きくなったのを確認し、ミレナとリリアがローブを脱いだ。


「いいか? 二人とも、絶対にこっち向いちゃダメだからな!」

「いや、それあたしたちのセリフだから!」

「グレインってもしかして背中派?」

「背中派って何!?」


 互いに後ろを向いているので表情は分からないが、ミレナの声に脅えの感情が混ざっている気がする。とにかく今は誤解を解かないと!


「俺は断じて背中派じゃない! ミレナ派だ!」


 俺の叫び声が洞窟内で反響する。岩肌に跳ねて戻ってくる『ミレナ派だ』という言葉を聞くたびに体温が上がっていく。


「……ごちそうさま」

「……情熱的だね。同じ男として尊敬するよ」

「……グレインのばか」


 3人の言葉が追い打ちとなり、俺の羞恥心は限界を迎えた。



 心に負ったダメージが癒えてきた頃、ミレナとリリアの服が乾いたようだ。

 二人分の衣擦れの音が、妙に大きく聞こえた。


「おまたせ。もう大丈夫だよ」


 リリアの許可が出たので俺たちは焚火のそばに移動し、4人で焚火を囲む。

 洞窟の外からは激しい水音が絶えず聞こえてくる。


 ――ぐぅ


 それに交じって小さな音が聞こえた。

 俺は何も言わずに立ち上がり、料理の準備を始める。


「あたしも手伝うよ」

「悪いな」

「おじいさん、それは言わない約束ですよ」

「……なんじゃそりゃ?」


 またわけの分からんことを。

 とはいえ、ほどほどにしておかないと。ミレナが赤面している理由が変わってしまうかもしれない。


「今日は干し肉だな」

「じゃあ、スープを作らないとだね」


 干し肉は日持ちするし、かさが減って持ち運びやすい反面、硬くて塩辛いのでそのまま食べても美味しくない。

 なので、干し肉を食べるときは少し薄めのスープを作り、水分でふやかしつつ塩分でスープの味を調(ととの)えながら食べるのだ。


 俺はリリアと協力し、手早くスープを作る。

 お腹を空かせている仲間がいるから、一秒でも早く完成させたかった。


「グレイン、味はこれで良いと思う?」

「……うん。良い感じ」


 覚えたての頃に比べて、リリアの料理は随分上達したなぁ。

 もうどこへ嫁に出しても恥ずかしくないぐらいだ。まあ、相手は決まっているだろうけど。



 結局、夜まで雨が止むことはなかった。

 俺たちはいつもの順番で見張りと火の管理を行う。


 ――朝には止んでるといいな。


 そんなことを考えつつ、眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。