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好きな人がパーティを追放された  作者: myano
未開拓地探索編

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カナリスの迷推理

 翌朝。

 俺が冒険者ギルドに入ると、唯一先に来ていたリリアが歩み寄ってくる。

「やったね。おめでとう」

 彼女はそう言いながら俺の肩をポンポンと叩く。

「なっ!? どこから見て――」

 俺がそう言った途端、リリアがニマッと笑った。

 その表情を見て、カマをかけられたことに気づく。


「やっぱり。二人が『恋人繋ぎ』をしてベンチに座ってるのを見て、絶対何かあったなって思ったんだ」

 くっ……。まさかあれを見られていたとは。

 火がついているのかと思うほど、顔が熱い。

 だが、リリアには普段からお世話になっているし、何より何度も相談に乗ってくれた。

 彼女には、しっかりと伝えておく必要があると思う。


 俺はそう考え、リリアの目を見つめた。

「リリア、実は――」

「グレイン、待って。私も一緒に」

「ミレナ!?」

 気がつくと背後にミレナが立っていた。彼女はそのまま俺の隣に並ぶ。

 リリアはニコリとほほ笑むだけで、俺たちのことを茶化したりしない。


「リリア。この度、俺とミレナは付き合うことになりました」

「今まで私たちのことを見守ってくれてありがとう」

「うん。二人とも、おめでとう!」

 リリアはそう言って、祝福の笑みを浮かべた。



「おはよう。何の話をしているの?」


 背後から声がかかったので振り向くと、カナリスとガルドが小さく首をかしげていた。

 俺とミレナは、二人にも付き合い始めたことを報告する。

 すると、二人とも穏やかな笑みを浮かべて祝福してくれた。



 やがて、女性陣が3人で固まって恋バナを始めた。

 気が付くと、リリアとカナリスの表情が消えている。

「ミレナは良いなぁ……。ずっと一途に想い続けてくれる人で」

「ねえ。私たちはずっと片思いなのにね」

「あ、あはは……」

 ミレナが助けを求めるように俺たちを見てくるが、どうすることもできない。

 俺とガルドは苦笑を浮かべた。


「カナリスとリリアが昨日の今日で仲良くなっていてビックリしました」

「昨日の帰り道に話して、意気投合したようだ。理由は……まあ、あれだ」

「大丈夫です。察しました」

 正直、リリアは関係が近すぎるだけで、ゼフレンがリリアのことを『異性』として認識すれば進展すると思うんだけどな。

 カナリスは……どうすれば良いんだろうね。これはレオディスが悪い。


「それにしても、よく3人で活動してましたね」

「俺に許嫁がいるおかげで、三角関係にならないことが幸いしたのかもな。……悪い、そういうつもりじゃなかったんだ」

「気にしないでください! それに、無事ミレナと付き合えましたので……」


 気恥ずかしさもあり、自然と頬に手が伸びる。

 ガルドは目を細めてこちらを見ていた。


「お前は本当に立派な男だよ。ちゃんとミレナを幸せにするんだぞ」

「はい!」

 ガルドが差し出してきた拳に、そっと拳を合わせた。



 その後、ゼフレンとレオディスがギルドにやって来た。

 メンバーが揃ったので、俺たちはギルドの会議室に移動する。

 待っていると、窓口のお姉さんが魔導書を持って来てくれた。


「これが魔導書……。確かに今までに見たことのない表紙ですね」

「予想以上に分厚いな」

「ああ。こんなに分厚い魔導書は初めて見たぜ」

 レオディスパーティの3人は、初めて見る魔導書に興味津々だ。

 特に、カナリスは目をキラキラと輝かせている。

「少し中を見ても良いかな?」

「ええ。構いませんよ」

「やった!」

 お姉さんが許可を出すと、カナリスは嬉しそうに魔導書を手に取った。

 そのままパラパラとページをめくっていく。


「もう写本は完成したんですか?」

「はい。ですので、必要でしたらいつでも言ってくださいね」

 これまでは泊りがけクエストを自粛していたが、これからは自由に受けられるな。

 俺は仲間3人と顔を見合わせてうなずいた。



 魔導書を読み終えたカナリスが、そっと書を閉じて顔を上げる。

「何か分かりましたか?」

「残念ながら何も……。それにしても、すごい情報量ね」

「ですよね。私も最初に見たときはビックリしました」

「それで『魅了魔法』のページにメッセージが残されていた、と」

「はい。本人はその魔法を使って後悔したので、絶対に使わないようにと言っていました」

「そう……」

 カナリスが残念そうな顔をしてうつむく。

 ……まさかレオディスに使おうと思ってたんじゃないよな?


 俺がそんなことを考えていると、レオディスがスッと手を挙げた。

「もう少し情報が欲しい。俺たちにも、魔導書を手に入れた経緯を教えてもらえないだろうか?」

「そうね。このレベルの魔導書をどうやって手に入れたのか、興味があるわ」

 レオディスの言葉に、カナリスとガルドが同意する。

 ミレナは「分かりました」と言って、あの日の出来事を順に話し始めた。



「そうか。そんなことが」

「……使わなくて良かったわ」

 会議室に重苦しい空気が満ちた。

 この話は、何度聞いても胸を(えぐ)られるような痛みを感じる。

 ずっと片思いし続けることの苦しさは身をもって知っているので、どうしても感情移入してしまう。


 沈黙の中、カナリスが「はっ」と何かに気づいたような素振(そぶ)りを見せた。

 彼女は小さな声で「そうか、この手があった!」などとつぶやいている。


 ――何だろう。すごく嫌な予感がするぞ。


「謎は解けたわ。その魔導書は『恋愛の波動』に飢えているのよ!」

 カナリスは胸を張り、自信に満ちた表情で告げた。

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