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好きな人がパーティを追放された  作者: myano
未開拓地探索編

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甘い時間

 俺とミレナは街の中央にある広場に移動した。

 ちなみに、レオディスはいつの間にかいなくなっていた。

 俺が告白したのを聞いて、気を利かせて二人きりにしてくれたのだろう。次に会ったときにお礼を言わないとな……。


 今はミレナと寄り添って座り、目の前を行き交う人たちを眺めている。

 茜色に染まり始めた広場では、食材を買い求める夫婦やギルドに向かう冒険者、酒場を目指す若者……多くの人たちが、それぞれの時間を過ごしていた。


「ねえ、グレイン」

 耳元で名前を呼ばれる。

 振り向くと唇同士が触れ合いそうに思えたので、俺は前を向いたまま答えた。

「どうしたの、ミレナ」

「ふふっ。幸せだな~って。まだ気持ちがふわふわしてる」


 そう言いながら、ミレナは俺の左肩に頭を預けてくる。

 ……ミレナさん? ここ、人前ですよ。

 花屋の店先にいた店員さんと目が合う。彼女は口に手を当てて表情を緩めた。「あらあら」とか言ってそう。


「ミレナさん、みんなが見てるよ」

「もう少しこのままが良い。だめ?」

 初めて聞く彼女の甘え声に、何も言えなくなってしまう。

 それにしても、あのミレナがこんなことになるとは思わなかった。

 まあ、普段は誰にも甘えられない分、色々と溜まっているのかもしれない。


 明日には元に戻っているだろうから、今は至福の時間を味わっておこう。



 しばらくすると、ミレナが顔を起こす。

 そのまま彼女の右手と俺の左手の、指と指を絡ませ始めた。

「何をしてるの?」

「おまじない。恋人とこうすると、魔法の出力が上がるんだって」

「へぇ……」

 きっと気持ちの問題だろう。

 漠然と魔法を放つより、誰かのために魔法を使った方が、出力が上がるのだと思う。

 それが大切な人ならなおさらだ。


「俺の攻撃力と防御力も上がりそうなおまじないだな」

「ふふっ。だと良いね」

 ミレナは俺の手を握る力を強くしたり弱くしたりしている。

 ふと、花屋を見ると、店員さんが赤い顔でこちらを見ていた。……意外と初心なのかな?


 ミレナが握った手を後方に引く。

 俺たちの手が死角に入ったのか、店員さんは「あっ」と残念そうな顔に変わる。

「こうすれば、手を繋いでいるのは二人だけの秘密になるね」

「そう……だな」

 後ろからは丸見えだと思うが、そんなことはどうでも良い。

『二人だけの秘密』という言葉が持つ甘美な魅力に、俺は抗えなかった。



 ミレナはひとしきりスキンシップを取ると、満足したような表情を浮かべて手を離した。

 そのタイミングで、俺はずっと気になっていたことを尋ねる。

「その、こんなことを聞くのは野暮かもしれないが、ミレナってガルドのことが好きだったんだよな?」

 ミレナがジトっとした目で俺を見る。

 ……俺だって空気読めてないと思うよ。でも、どうしても気になったし、今を逃せば一生聞けない気がしたんだ。


「うん。一緒のパーティにいた頃はね」

「その……いつから俺のことを――?」

 ミレナは少しだけ考えてから答えた。


「私の中でグレインが一番になっていることに気づいたのは、この間、王都でガルドさんと再会したとき。だけど、今になって思うと、中級魔法を完成させたあたりからグレインのことが好きだったんだと思う」

「ああ、あの村長たちをやっつけた時の!」


 俺が人質になって、そのせいでカティア様までもがザント団に連れ去られそうになったんだよな。それで俺はミレナに、未完成の中級魔法を放つように言ったんだった。


「あのとき、私の魔法が完成していなかったのに、グレインは撃てって叫んだよね。最初は絶対無理だって思ったけど、グレインの顔を見てたら不思議と勇気が湧いてきて……」

「俺は、ミレナならやれるって信じてたからな。何より、あの場面はそれしか方法が無かった」

「グレインが私のことを信頼してくれているっていうのがすごく伝わってきたよ。離れていたけど、心と心が通じ合っている感覚だった」


 俺も目と目で意思疎通ができたように感じていたけど、ミレナも同じだったようだ。それを知って心が温かくなる。


「前に言ったかもしれないけど、あなたが信じてくれたから、私は自分の魔法を信じることができたんだよ」

「前に言ったはずだけど、俺はミレナの魔法だけじゃなく、きみのすべてを信じているからね。だからこそ、命を預けられたんだ」

「……ずるい。でも、もしも私が失敗したらどうするつもりだったの?」

「えっ?」


 ミレナが失敗するなんて、あの場面では考えもしなかったことだ。

 俺は少し悩んでから結論を出す。


「多分、大人しく運命を受けいれたんじゃないかな? カティア様が連れ去られないように抗って、村長と刺し違えていたと思う」

「私の魔法がグレインに当たったかもしれないんだよ?」

「愛する人の攻撃を受けて死ねるなら本望というものだよ」

「うわぁ……。さすがにドン引き」

 ミレナはそう言いながらも、俺に体重を預けてくる。


 俺たちは、あたりが暗くなるまで思い出話を続けた。

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