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好きな人がパーティを追放された  作者: myano
未開拓地探索編

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未踏地域の地図作成

 翌朝。俺たちは冒険者ギルド内のクエスト掲示板の前にいた。

「今日はどうしようか。比較的簡単そうなクエストを受けてみる?」

「Bランクになって最初のクエストだから、それが良いと思う。未踏地域の地図作成とかどうかな?」

 ミレナがそう言うと、俺たち3人は『なるほど』とうなずく。

 地図作成のクエストを受けることで、初めて行く場所の地形や環境、生息するモンスターなどを調査する。こうすることで、次回以降のクエストを効率的に進められるようになるはずだ。

 彼女の提案は、とても理に適っているように思えた。

「ミレナ、ナイスアイディア! あたしはその意見に賛成!」

 リリアが真っ先に同意を示し、俺たちもそれに続いた。


「とはいえ、地図作成も色んな地域の分が出てるね」

「うーん、レイヴェルクから一番近いのはこれかな?」

 そのクエストは、未開拓地の北部の地図作成だった。

 北部は山岳地帯になっていると聞いたことはあるが、ほとんど行ったことがない。

「そうだね。他に比べて報酬も良いし、それにしようか」

 ゼフレンがレイヴェルクから一番近い、クエストを手に取ろうとしたとき、近くにいたギルド職員が声をかけてくる。

「さっきから話を聞かせてもらっていたんだけど、君たちはBランクになったばかりかい? だったらそのクエストはお勧めしないよ」

 ゼフレンの手がピタリと止まる。

「どういうことですか?」

「その地域には強力なモンスターが居るらしいんだ。今までに何組かの冒険者がそのクエストに挑戦したが、そいつに邪魔されて、みんな失敗してしまった。悪いことは言わないから、慣れてからにした方が良いと思うぞ」

「そうですか……。教えてくれてありがとうございます」

 結局、俺たちは職員のアドバイスに従い、南側の地図作成クエストを受けることにした。



「……ここに目印があるね。ここまでが地図に載っている地域だ」

「じゃあ、この先は誰も行ったことの無いエリアかもしれないね!」

 リリアが興奮気味に言うが、実は俺も同じ気持ちだ。

 地図に載っていない場所、地図の真っ白な部分に自分が立っていると思うと、それだけでワクワクする。

「だけど、ここまで来るのも結構大変だったね」

「レイヴェルクを出てから今日で8日……あれ、9日目だっけ? 何にせよ、地図が全然更新されない理由が分かった気がするよ」

「せめて途中に街や村があれば良いのにね」

 片道10日近くも野宿するのは、なかなか辛い。

 日持ちしない食べ物を持ち込めないから、肉を食べるなら干し肉か現地調達になる。

 野菜に至っては基本的に手に入らない。代わりと言っては何だが、周辺に自生している野草やキノコを食べている。


「ホント、あたしたちのパーティにミレナがいてくれて良かったよ」

「リリアもね」

 ミレナとリリアが笑い合う。

 二人の言うとおり、魔法で新鮮な水を生成できるミレナと、怪我をしても魔法で回復してくれるリリアにはすごく助けられている。

 正直、二人のうちどちらかがいなければ、とっくの昔にギブアップしていたんじゃないか。


「もちろんお兄ちゃんも。ついでにグレインも居てくれてありがとう」

「ついでって何だ、ついでって。もう料理を教えてやらないぞ?」

「ウソウソ、冗談だって! グレイン先生には大変お世話になっています!」

 リリアが俺に向かって手を合わせたのを見て、思わず吹き出してしまう。つられて彼女も笑い始めた。

 俺たちのやり取りを見ていたミレナが一瞬口を尖らせたが、すぐに破顔した。



 食事と休憩を挟み、地図を描き始める。

 俺たちは誰も地図を描いたことがないので、全員が試しに少しだけ描いてみて、一番うまい人だけが最後まで描き上げることになった。

 二手に分かれる案も出たが、四人で固まっている方が安全なので、やめた。

 知らない土地で、モンスターの情報も無いのに戦力を分散するのはあまりに危険だからだ。

「……思ったより難しいな」

 周囲にある特徴的な木や岩、道などを描くが、すぐにバランスが崩れてしまう。

 出来上がったのは見たものを遭難させる悪魔の地図だった。

 ……描くのは誰か上手な人に任せて、俺は周囲の警戒をする方が良いかもしれない。


「グレイン、ちょっと見てもらえない?」

「いいよ。どれどれ」

 ミレナが、描いた地図を見せてくれる。

 俺のカクカクした線とは違い、柔らかいタッチで描かれていた。

 所々に粗こそあるが間違っているほどでもないし、見た人にしっかりと伝わる良い地図だと思う。

「俺の描いた地図より、ずっと良いと思うよ。ほら」

 そう言って俺の地図を見せる。ミレナはそれを見て、「うわぁ……」と漏らした。

 ひどい地図だという自覚はあるけれど、何か傷つく。

「そうだ、他の二人のも見せてもらおう」

「良いね!」

 俺たちはゼフレンとリリアのもとに向かった。



「せーので見せ合うよ。……せーのっ!」

 裏返していた地図を、一斉にひっくり返す。

 ミレナのものはさっき見せてもらったので、リリアの地図を確認する。

「リリア、この地図は左上から順に描いたね?」

「よく分かったね」

 リリアが目を丸くするが、簡単な推理だ。

 彼女の地図は、左上は精密に描かれているが、右下に向かうにつれて少しずつ誤差が大きくなっている。

 多分、最初はものすごく集中していたが、徐々に集中力が切れたのだろう。

 それでも決して雑にならないところに、彼女のまじめな性格が出ている。


「うわぁ……すごい」

 リリアの地図を見ていると、隣のミレナが感嘆の声を漏らす。

 彼女はゼフレンが描いた地図を見ていたようで、俺もそちらに目をやる。

「――っ!」

 そこにあったのは、街で売られている地図と遜色(そんしょく)ない、あるいはそれ以上に精密な地図だった。

「お兄ちゃん凄い!」

「地図を描くのは初めて……なんだよね?」

「ああ。正直、僕も驚いているよ」

 ゼフレンが照れたように頬をかく。

 結局、満場一致でゼフレンが残りの地図を描くことになった。



 翌日、俺たちは周辺を探索する。

 今回は地図を描くクエストなので、すべての道を一度は通り、道なき道も行かなければならない。

 必然的に歩く距離は伸び、戦闘の回数も増える。

「けっこう大変なクエストだね、これ」

「正直、甘く見てたよ」

 周囲に目を光らせながらそんなことを話す。

「普段は目的地まで真っすぐ進むから、こういうのも新鮮だけどね」

「あたしたちが新しい洞窟や建物を見つけたりして?」

「ありえるよね。地図が無いってことは、誰も通ったことのない道が有るかもしれないわけだから」

 ミレナの言葉にハッとする。

 地図作成のクエストは労力に報酬が見合っていないのではないかと感じ始めていたが、お金では測れない魅力もあるということか。


「よし、この辺りは描けたよ。次は向こうの森の中だね」

 ゼフレンが右側の森を指さす。大きな森だからと後回しにしていた場所だ。

 木々がうっそうと生い茂っていて、人が踏み入った形跡はない。

「……さすがに今から入ると真っ暗にならない?」

 空を見ると、太陽はとっくに頂上を越えていた。

「そうだね……。お昼ご飯もまだ食べていないし、本格的に入るのは明日にしよう。だけど、日照時間を少しでも無駄にしたくないし、ご飯を食べたら手前だけでも地図を作っておきたい」

「一日で作れるかどうかも分からないんだった……。あたしは暗くなる前に森から出るならそれで良いよ」

 俺とミレナもその言葉に同意する。

 こうして、俺たちは昼食を食べてから森の中を少しだけ探索することになった。

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