王都へ
翌朝。
朝一番でギルドに向かうと、フェルドリッジ伯爵が俺たちに宛てた依頼が出ていた。
俺たちは窓口でその依頼を受けると、伯爵との約束通り東門の前に移動する。
伯爵たちは先に到着していて、出発の準備もすでに整っていた。
「お待たせいたしました」
約束通りの時間とはいえ、伯爵を待たせてしまったことに恐縮する。
だが、伯爵は特に気にしていない様子だ。
「おお、来たか。では出発するか」
そう言うと、フェルドリッジ伯爵は伯爵家の家紋が入った黒塗りの馬車に乗り込む。
彼に続いて従者であり、伯爵の右腕でもあるエルドさんと、二人の護衛が順に乗った。
「わたくしたちはこちらよ」
カティア様がピンク色の、派手な装飾が付いた馬車を指さす。
懐かしさを覚えながら、俺たちもその馬車に乗り込んでいった。
約半月後、一行は王都に到着した。
道中何事も起きずに一安心だ。
「……戻ってきたね」
「……そうだね。ミレナ、大丈夫?」
ミレナにとっては嫌な思い出のある街なので、フラッシュバックしないかが心配だ。
だが、ミレナは笑顔で首を横に振る。
「心配してくれてありがとう。私は大丈夫だよ」
その言葉を聞いて少しだけ安心する。
だけど何があるか分からないので、彼女のことをしっかりと見ておこう。
王城の前に着いて馬車を降りると、伯爵が俺たちのもとにやってきた。
「後は我が家の護衛が居るから、そなたたちは夕方まで王都を回って来ると良い」
クーデター防止のため、王城内に連れていける護衛の数には限りがある。
なので、城内の警護は伯爵家の私兵が担当することになっていた。
「ありがとうございます。では、また夕方にこちらで」
俺たちはありがたく伯爵のご厚意に甘えることにする。
羨ましそうにこちらを見るカティア様を見送ると、俺たち4人は王都を散策し始めた。
リリアの希望もあり、俺たちは王都で1番大きな通りにやってきた。
「ここが王都! 何かキラキラしてる気がする!」
「たぶん気のせいだよ」
リリアの言葉にミレナが苦笑する。
確かに他の街に比べると道幅が広く、多くの店が並んでいるが、だからといって輝いているわけではない。
「だって、あたし王都に来るの初めてなんだもん! ミレナのおすすめの店を教えて!」
「良いよ。こっち!」
ミレナがリリアの手を引いて駆け出していく。
俺とゼフレンは顔を見合わせて笑うと、二人の後を追った。
色々な店を巡り歩くうちに、日が傾いてきた。
「あ~楽しかった!」
「ふふっ。楽しんでもらえたようで何より」
二人はゆっくりと羽を伸ばせたようだ。
終始楽しそうに過ごしていたし、良いリフレッシュになってよかった。
「そろそろ王城に戻らないとだね」
伯爵たちの用事が終われば合流する約束になっているので、それまでには王城の前に戻っておく必要がある。
リリアの言うとおり、少し早いがそろそろ移動し始めた方が良いだろう。
俺たちは王城の方へ歩き始めた。
「あれ? グレインとミレナじゃねえか。久しぶりだな!」
王城に向かう途中、後ろから声をかけられる。
振り返ると、そこに立っていたのはガルドだった!
まさか会えるとは思わなかったが、久しぶりなので懐かしさと嬉しさがこみ上げてくる。
「お久しぶりです! 今日はお休みですか?」
クエストに行っていたにしては早い時間に街を歩いているので、俺はそう予想した。
「よく分かったな。お前たちはどうして王都に? クエストか?」
ガルドはゼフレンとリリアの姿を見て、俺たちがパーティで王都に来ていると推測したようだ。
「はい。要人の護衛で王都に来たんです」
「そうか、二人とも元気そうで何よりだ。……おっとすまない。俺はガルド。グレインとミレナが王都に居たころ、同じパーティで活動していたんだ」
ゼフレンとリリアが呆然としているのを見て、ガルドが二人に向かって自己紹介をする。
「僕はゼフレンだ。よろしく」
「リリアです。あなたがガルドさんですか……」
ゼフレンは少し硬い表情で、リリアは興味津々といった様子で応じる。
そういえば、リリアには俺の過去を話したことがあったんだった。
その時にガルドのことも少しだけ話したので、そのことを思い出したのだろう。
「さて、俺はそろそろ行くぜ。グレインたちも行くところがあるんだろう?」
……本当にガルドには敵わないな。何で分かったんだろう。
「お互いに時間が合えば、数日中にまた会いましょう」
「おう! じゃあまたな!」
ガルドはニカッと笑うと去っていった。
あの眩しいほどの笑顔も変わっていないなぁ……。
「ミレナ? どうしたの?」
「……えっ? な、何でもない」
リリアが心配そうにミレナの顔をのぞき込む。
……そういえば、ガルドと話しているあいだ、ミレナは一言も喋らなかったな。
まだガルドへの恋心が残っているのだろうか。




