表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きな人がパーティを追放された  作者: myano
盗賊団との戦い編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/77

ザント団との最終決戦

 どれだけの時間戦い続けただろうか。

 男は何度か仲間を呼び、そのたびに敵は増え続けた。

 こうなると攻勢に出ることはできないので、俺は時間稼ぎに専念する。

「はあっ、はあっ。くそっ! 何で倒せねえんだ!?」

 周囲にいるザント団員たちは、全員が苛立っている様子だ。おかげで奴らの攻撃が単調になって予測しやすいので、俺としては助かる。

 敵を倒すことは出来ないが、必死に耐え続けた。



「グレイン、よく耐えた!」

 突然、背後から名前を呼ばれる。驚いて後ろを向くと、ゼフレンたちが応援に来てくれていた。

「他の敵は?」

「グレインの前にいる奴ら以外は、ほぼ片付いた」

 軽く周囲を見回すと、フィルザードとその仲間たちが数人を相手取っているが、他の敵はみな倒れ伏していた。


「アンタがコイツを先に倒そうなんて言うから――」

「し、仕方ねえだろ!? 一番弱そうな奴だし、あと一歩で倒せると思ったんだ!」

 ザント団員たちが目の前で仲間割れを始める。さっきまでの余裕は完全に無くなっていた。

「よそ見をしている場合か!」

 ゼフレンがすぐ近くにいる男に斬りかかる。

 男は口論に気を取られて攻撃への対応が遅れ、あっという間に倒れた。


 味方の増援がやってきたことで、形勢が逆転した。

 俺はゼフレンやミレナたちと連携して敵を倒していく。

 目の前にいた敵を倒し終わると、立っているのはザント団のボスだけになっていた。

「バ、バカな!」

「確かにあなたの親衛隊は強かったですよ。わたくしの仲間たちの次ぐらいには、ね」

「お、おのれ! こうなったらお前たちも道連れにしてやる!」

 ボスはそう言うと、空洞の隅に向かって走り出した。

 グラシアさんやミレナが慌てて魔法を放つが外れてしまう。

「ふはははは! これでお前らも生き埋めにしてやる!」

 ボスはそう叫ぶと、部屋の隅に有った篝火(かがりび)を倒す。

 すると、炎が一瞬で周囲に燃え広がった。

「火が!」

 ボスの衣服に火が燃え移り、彼は一瞬のうちに炎に包まれる。そうなっても悲鳴すら上げずに笑い続けている姿に、恐怖すら感じてしまう。

「奴はもう駄目ね。急いで脱出するわよ! 幸い燃えているのは一部だけ。入り口側は無事よ!」

 カティア様がそう言った瞬間、ボスの周辺で大きな破裂音が響き渡った。それに伴って周囲が大きく揺れる。

「何だ!? まさか爆薬か!?」

「すぐに外へ!」

 俺たちは慌てて外に向かって走り出す。

 その間も洞窟の奥から爆発と崩落の音が断続的に聞こえてきて、生きた心地がしなかった。

「見ろ! 光だ!」

 前方を走る誰かが叫ぶ。俺たちは足をもつれさせながらも洞窟の外へ脱出した。



「みなさん無事ですか!?」

 カティア様が息を切らしながら尋ねてくる。

 周囲を見回すと、洞窟の奥に向かった冒険者は全員揃っていた。

 俺たちが洞窟内にいるうちに制圧したのか、周囲に敵の姿は無い。


「はあぁ……。死ぬかと思った……」

 へなへなとその場に座り込む。さすがに疲れた。

「グレイン、お疲れさま」

 声の方に顔を向けると、ミレナが柔らかな笑顔でこちらをのぞき込んでいた。

 彼女はそのまま俺の隣に腰を下ろす。

「ミレナもお疲れさま。今回は大変だったね。命が何個あっても足りないよ……」

「でも、今日のグレインもカッコ良かったよ。たまには軽い鎧も良いんじゃない?」

 ミレナが口にした、『カッコ良かった』という言葉が脳内で何度もリピートされる。

 他意が無いのは分かっていても、顔全体が熱くなる。

「……ち、違うの! 普段の鎧が悪いって意味じゃなくて、どっちもカッコ良くて――」

「ふふっ」

 ミレナの慌てている姿が面白くて、つい笑ってしまう。

 彼女は俺が笑ったのを見て一瞬だけ唇を尖らせたが、すぐにつられて笑い出した。


「あっ! 見て!」

「……日の出だ!」

 気が付くと夜が明けてきた。

 洞窟の外に出てきてからそんなに時間が経っていないので、中にいる時間が長かったということだろう。

「ねえ、ミレナ?」

 少し声を抑えて名前を呼ぶと、ミレナは小さく首をかしげた。

 ――ミレナは俺にとって世界一の魔法使いだ。

 そう言おうとして、やっぱり止める。ミレナが夢を叶えるまで隣に居るって決めたから。

 贅沢にも、もっと彼女の物語を隣で見続けたいと思った。

「ごめん。呼んだだけ」

「何それ?」

 ミレナはそう言ってクスクスと笑った。

 その笑顔が輝いていたのは、朝日のせいではないだろう。



 10日後、俺たちはレイヴェルクに凱旋した。

 あの後、数日かけてザント団の本拠地を調べ、残党が潜んでいないか、他にも拠点が無いかを確認した。

 洞窟は途中で天井が崩落してしまい、最奥部まで行くことはできなかった。

 そのため、ザント団のボスの死亡を確認することは出来なかったが、状況から考えて死んでいるだろうと結論付けた。



 レイヴェルクに入ってすぐ、城門の前で冒険者たちが整列する。

「冒険者のみなさん、今回はご苦労様でした。報酬については冒険者ギルドを通してお支払いしますので、しばらくお待ちください」

 カティア様が俺たちにそう声を掛け、部隊は解散となった。


「じゃあ、二日間休みということで。また三日後」

 俺たちは休養明けの再会を約束し、帰路に就く。

 街ではいつもと変わらない日常が流れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ