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好きな人がパーティを追放された  作者: myano
盗賊団との戦い編

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裏切り者の末路

 外で轟音が響き渡り、地面が小さく揺れる。

 パラパラと、洞窟の壁や天井から小石と土の塊が落ちる音が聞こえたが、崩壊の恐れはなさそうだ。


「な、何の音だ!?」

 洞窟の入り口付近にいる領主が慌てふためく。

 彼らの反応を見るに、ザント団にとっても予想外の事態なのだろう。

「……これも貴女のしわざかな?」

「さあ、どうでしょうね?」

 それまで勝ち誇った顔をしていたザント団のボスが、カティア様に警戒の目を向けた。


「た、大変です! 西門が突破されました!」

「何だって!?」

 領主の悲鳴のような声が洞窟内に響き渡る。その一方で、ボスは意外にも冷静だった。

「こうなっては仕方あるまい。お前たち、この場は任せたぞ」

 ボスはそう言い残すと、洞窟の奥へ消えていった。


 残されたザント団員たちが、俺たちに攻撃を仕掛けてくる。

 だが、団員一人ひとりの強さはそれほど脅威ではない。数の力で攻めてくれば話は別だが、1対1の状況下で後れを取ることはなかった。

「くそっ! ……ぐわっ!」

 今も、俺のところに向かってきた敵を斬り伏せたところだ。

 ザント団員たちも俺やゼフレンには敵わないことを理解しているはずだが、それでも構わずに攻め寄せてくる。本当に厄介な相手だ。

 俺は心を無にして戦い続けた。



 やがて、洞窟の奥からは誰も出てこなくなった。

「……もう居なくなったのかな?」

「かもしれないわね。ひとまず入り口側の敵を片付けましょうか」

 俺とミレナはカティア様の言葉にうなずき、ゼフレンたちの応援に向かう。

 後衛のグラシアさんはまだ余裕がありそうだが、前衛のゼフレンは息が上がっていた。

「ゼフレン、交代するよ」

「悪い。後は頼んだ」

 短く言葉を交わすと、ゼフレンの持ち場をそのまま引き受ける。

 グラシアさんとミレナが後ろから援護してくれたので、敵の攻撃を受けることもなかった。


「ん? あれは……」

 入り口側に来てすぐのこと。慌てふためく領主の姿が目に入った。

 どうやら冒険者隊が洞窟のすぐ外まで来ているらしく、領主たちは退路を失ったようだ。

「今度は領主たちが袋のネズミになっているんだな」

 俺は一度後ろを見て後方の安全と仲間の様子を確認すると、少しずつ領主に向かって前進を開始した。


「おい! あいつらが迫ってくるぞ! ワシのところに近づけるな!」

 俺の接近に気づいた領主が指示を飛ばすと、数人の団員が俺と領主の間に割り込む。

 だが、まったく相手にならなかった。

「ひぃいいい! お前の体力はどうなってるんだ!? この化け物め!」

「失礼な。冒険者ならこれぐらい普通だぞ」

 思わずそう言葉を返すが、後方から「グレインだけだよ……」と、若干引いたような声が聞こえてきた。……えっ?

 振り向きそうになるのを何とか我慢する。今は領主たちとの戦闘に専念しないと。


「う、うわあああ!」

 領主を守っていた最後の一人が俺に向かって突進してくる。

 彼は領主の参謀を務めている男だ。剣の腕は素人だったので、簡単に無力化する。

「ついにあなただけになってしまいましたね」

「――はずでは」

 領主が小さくつぶやく。

 初めは微かなものだったが、徐々に漏れ出す声と感情が大きくなっていった。


「……こんなはずではなかったのに! ザント団を利用して周辺の戦力を削ぎ落とし、ワシがレイヴェルクで独立して王となる計画だったんだ! それを邪魔しおって!」

 背後からカティア様のため息が聞こえた。

「本当にどうしようもない程の愚か者ですね。こんなのがトップに居たのに、レイヴェルクが破綻せずに回っていたのが不思議です」

 カティア様の父親であるフェルドリッジ伯爵が頑張っていたんだろうな……。

「黙れ! この戦いでレイヴェルクに居る冒険者と魔法使い、それから正規兵が壊滅すれば、ワシに抵抗できる勢力が駆逐されるはずだったのだ!」

「そうした上でザント団をレイヴェルクに差し向けるつもりでしたか? 仮にその作戦が上手くいったとしても、あなたは国王にはなれませんよ?」

「フン。それはその時に考えれば良い。あんな男など、ワシの手にかかれば簡単に始末できるはずだ」

 つまり、行き当たりばったりの作戦だった……と。

 カティア様は眉間を抑えつつ、領主との会話を続けた。


「そうなっていた場合、始末されていたのはあなたの方でしょうね。大人しく領主として生きていれば良かったものを……」

「うるさい! 制度から税率まで、何もかも王家の指示通りに動かなければならない生活に疲れたんだ! 本当はもっと税金を取りたかったし、領主の権限を強化したかったのに」

「……結局、自分の懐と欲望を満たしたかっただけですか」

 カティア様が冷え切った視線を領主に向ける。

 領主はその視線を受けて一瞬ひるんだが、すぐ表情に怒りの色が戻る。

「こうなったらお前だけでも道連れだ!」

 そう言うやいなや、領主はこちらに向かって駆け出した。彼は走りながら剣を構える。

 狙いは――やはり、カティア様だ。


 領主がいきなり走り出したので、カティア様は虚を突かれて反応が遅れている。

 ミレナとグラシアさんの魔法も間に合わない。俺が前に出ないと!

 そう考えたときには、既に身体が動いていた。

 間一髪、カティア様と領主の間に割り込む。

「ぐっ! 邪魔をするなあああ!」

 領主が力任せに攻撃を放つ。だが、所詮は素人の剣だった。

「はあっ!」

 剣を振ると、俺の両手に衝撃が走り、領主は声もなく崩れ落ちる。

「……あっけないものね」

 カティア様はすぐに領主から視線を外し、洞窟の奥を見た。


 ――ついに、ザント団との最終決戦だ。

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