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好きな人がパーティを追放された  作者: myano


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作戦会議

 俺とミレナは冒険者隊の陣地に戻ってきた。

 正直、どうやって森を抜けたのかはよく覚えていない。

 確かなのは領主と正規兵には見つからなかったことと、カティア様が捕らえられたことだけだ。


 何も手につかないまま過ごしていると、フィルザードに呼び出される。

 それに応じて本営に向かうと、そこにはパーティの仲間3人とフィルザードがいた。

「来てくれてありがとう。その……災難だったね」

 フィルザードにしては珍しく、気遣うような言葉をかけてくる。

 俺が短く返事すると、フィルザードは俺たちを集めた理由を話し始めた。


「領主サマから書簡が届いたよ。『フェルドリッジ伯爵令嬢とその従者グラシアはザント団と内通していた。二人は本陣で拘束するから、明日からはフィルザードが冒険者隊を指揮せよ』だってさ」

 俺たちは何も言えなかった。

「キミたちにお願いがあるんだ。ボクはカティア様を助けたいと思っている。だから手伝ってもらえないだろうか?」

「俺たちも二人を助けたい。だけどどうやって?」

「カティア様はこの事態を想定していたのか、こんなものを残してくれている」

 フィルザードは本営の隅に置いていた木箱の蓋を開ける。

 中には4領の鎧が入っていた。よく見ると、正規兵が身に着けているものだ。

「これを使えば二人のところに行けるはずだ。もちろん、危険な任務になるから無理にとは言わない。キミたちが嫌だというなら――」

「行かせてくれ」

 俺が言葉を遮ってそう告げると、フィルザードはニヤリと笑った。

 彼は最初から分かっていたんだろう。


「私も行く」

「僕も」

 次いで、ミレナとゼフレンも参加を表明する。

 二人とも引き締まった表情をしていて、決意も固そうだった。

 俺は何も言わずに二人を見て頷いた。


 それにしても、領主たちに顔を見られていないのは僥倖(ぎょうこう)だ。

 カティア様が命じた『領主や正規兵に見つかるな』という言葉。あれは俺たちを安全に逃がすためであると同時に、カティア様を助けに行く選択肢を残すための言葉だったのだ。


「あたしも行く!」

 リリアも鋭い目つきで参加を希望する。

「ダメだ! リリアには危険すぎる!」

 ゼフレンがそう言うのは当然だ。

 リリアは回復魔法使いなので、敵のど真ん中に行くべきではない。ないのだが……。

「カティア様が用意した鎧が4領ってことは、あたしにも何か仕事があるってことだと思うんだ。あたしのことを足手まといだと思ったなら3領しか用意しないはずだもん」

 そう。唯一それが気にかかっていた。

 カティア様が4領の鎧を用意していたということは、冒険者が4人居れば状況を打開できると考えているということだ。

 あの場で俺とミレナを逃がしたので、俺たち二人は数に含まれているはず。そう考えると、残りの二人はゼフレンとリリアである可能性が高い。


 ゼフレンとリリアの視線が交差する。

 俺たちは何も言わずに二人を見守った。しばらくして、ゼフレンが「はぁ」とため息を吐く。

「分かった。だけど絶対に一人になっちゃだめだよ」

「うん。約束する」

 リリアは真剣な声色でそう答えた。

「決まったようだね。じゃあ、明日の朝またここに集まってくれ」



 翌朝、俺たちは本営に集合し、カティア様が用意していた正規兵の鎧に着替えた。

「すごい……全部私たちの身体に合ったサイズだ」

「やっぱりこれは俺たち4人のための鎧だったんだな……」

 正規兵の鎧は男性用と女性用で若干デザインが異なる。用意されていた鎧は男性用と女性用が共に二つずつだった。

「みんな準備できたみたいだね」

 そのとき、領主たちとの軍議を終えたフィルザードが戻ってきた。

 彼は軍議の内容を共有してくれる。


「――というわけで、正規兵の部隊も今日は遠距離攻撃が中心だ。キミたちは前衛に交じって一日やり過ごし、そのまま正規兵の陣に潜り込めば良い。正規兵は新兵が多くて互いに顔を覚えられていないみたいだから、その格好なら誰にも疑われないだろう」

「分かった」

「次に、カティア様についてだ」

 全員の顔が引き締まる。俺も、フィルザードの言葉を一文字たりとも聞き逃すまいと集中力を高めた。

「カティア様たちは本陣にある檻付きの馬車に閉じ込められているらしい。檻は金属製で壊すのは不可能だろう。扉の鍵を持っているのは領主だと相場が決まっている」

 ……そこは分からないんだな。

「忠告しておくが、領主を脅したり鍵を盗んだりしないことだ。カティア様は冤罪を立証できる余地があるかもしれないが、キミたちは言い逃れが出来ないからね」

 そう言うと、フィルザードは右手を首の前で横一文字にスライドさせた。

 領主に対して危害を加えると死罪になると言いたいようだ。

 まだ死にたくないし、カティア様の疑いを晴らす方向で動いた方が良さそうだな。

 彼女たちを救い出す方法についてはカティア様と相談するべきかもしれない。


 作戦会議が終わると、俺たちは本営を出ていく。

 すると、俺だけがフィルザードに呼び止められた。

 3人には先に出てもらい、俺は残ってフィルザードの話を聞く。

「グレイン、キミにだけ伝えておくよ。あくまでボクの勘だけど、近々事態が動きそうな気がする。たぶんその時が絶好のチャンスになるから、それまでは焦らないようにね」

「ありがとう」

 俺はそう言って、フィルザードとグータッチを交わした。

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