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好きな人がパーティを追放された  作者: myano


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内通者

 数日後。今日は味方の兵糧が運ばれてくる日だ。

 俺は密かにカティア様の狙いを見極めようとしていた。

 カティア様がザント団員と密会していたことは誰にも話していない。

 何度も仲間たちやフィルザードに相談しようかと迷ったが、どうしても最後の決心がつかなかったのだ。

 きっと、俺はカティア様のことを信じたいのだろう。


「今日もいつも通りにザント団を攻撃してください。戦果が見えづらく苦しい時期ですが、もう少しの辛抱です」

 ……ダメだ。カティア様の全ての言葉に裏があるように感じてしまう。

 彼女の真意を確かめるまではフラットに見るんだ!

 俺は気合を入れ直すと、今日もザント団への警戒任務に当たった。



 夕方になり、陣地に戻ると兵糧が届いていた。

 輸送隊が襲われないかと密かに心配していたが、無事到着したので安堵する。

「思っていたより慎重ね」

 ふと声が聞こえたのでそちらを見ると、カティア様が不敵に笑っていた。

 彼女の表情からは何を考えているのか読み取れない。

 カティア様の発した言葉から考えると、彼女はザント団が兵糧を狙って出撃してくることを望んでいたようだ。



 さらに数日が過ぎた。その間ずっとモヤモヤしたものを抱えていて、顔や態度に出ていないか心配になる。

 今日も遠巻きに本拠地を攻撃するだけで、戦況に変化はない。

「ホント退屈だなぁ……」

「早く思いっきり暴れまわりたいよな……」

 周囲の冒険者たちの愚痴を聞きながら陣地に戻っていく。

「ん? あれは……?」

 陣地に入る直前、陣地の東側の出入り口付近でカティア様とグラシアさんの姿を発見した。

 方向と時間からして、これから領主たちと軍議だろう。

「何だろう、この胸騒ぎは」

 二人をこのまま見送ると、何か取り返しのつかないことが起こる気がする。

 俺は見つからないように距離を保ちながら、二人のあとをつけることにした。


 カティア様たちを尾行した俺は、正門の向かいにある味方の陣地にたどり着いた。

 ここには領主や正規兵たちが布陣していて、出入り口付近は見張りの正規兵が固めている。

 二人は見張りの兵士たちと軽く挨拶すると、そのまま陣地の中に入っていく。

「うーん。許可なく陣地の中に入ることは出来なさそうだな……」

 俺は正当な理由が無いので中に入れてくれないだろう。

 仕方がないので、陣地近くの物陰に隠れることにした。

「グレイン、こんなところで何をやってるの?」

 すぐ横から話しかけられて心臓が飛び出そうになる。声を我慢できた自分を褒めてあげたいぐらいだ。

「ミレナ!? どうしてここに?」

「コソコソと歩いていくグレインの姿が見えたから……。どうしてカティア様たちを追いかけていたの?」

 しまった。カティア様たちに気づかれないことに意識を向けすぎて、周囲への注意が疎かになっていたようだ。

 ミレナだけは巻き込みたくなかったんだけど……。



 ミレナと二人で様子を見ていると、領主とカティア様が二人きりで陣から出てきた。

 グラシアさんも二人についていこうとしているが、見張りの兵士たちに止められている。

「……様子が変だね。止めに行く?」

「待って。カティア様は笑顔だ」

 ミレナは今にも飛び出そうとしているが、もう少し様子を見たい。

 グラシアさんにとっては不本意な状況だろうが、カティア様が困っているようには見えなかった。


 カティア様と領主は陣地を出ると、そのまま西へ向かって歩いていく。カティア様は終始笑顔で領主と会話しているので、やはり無理やり連れ出されたわけではなさそうだ。

 やがて、二人は森の中に入っていった。

「どうなってるの……?」

 ミレナが困惑している。領主とカティア様のどちらが相手を誘い出したのかは分からないが、このまま黙って見過ごすわけにはいかない。

「カティア様たちを追いかけよう!」

 俺たちは二人に続いて森に入っていった。



「うわあああ!」

 森の中に入って少し進むと、前方から悲鳴が聞こえてくる。

 慌てて急行すると、二人がザント団の男たちに取り囲まれていた。敵の数は10人ほどだ。

 カティア様は腰にはいていた剣を抜き、ザント団と相対している。

 一方、領主はカティア様の隣で尻もちをついていて、言葉にならない声を発していた。

「カティア様!」

 俺は剣を抜くと二人に向かって走る。後ろではミレナの魔力を感じた。

 カティア様は俺の方を見るとニヤリと笑ったが、何も言わなかった。


「増援が来るなんて聞いてねえぞ! お前ら、ずらかるぞ!」

 ザント団員は一太刀も交えずに引き揚げていく。俺が疑問に思っていると、背後から複数の足音と声が聞こえてきた。

「領主様! ご無事ですか!?」

 どうやら正規兵が救援に駆けつけたようだ。まだ後方にいて姿は見えないが、足音はしっかりと近づいてきている。

 ザント団があっさりと引き揚げたのも、彼らの存在に気付いたからかもしれない。

 正規兵に気を取られているうちにカティア様がすぐ隣に来ていた。彼女は俺の耳元に顔を寄せ、小さな声で命令する。

「グレイン、ミレナを連れて逃げなさい。絶対に正規兵に見つかってはダメよ」

 聞き返す間もなく、俺はカティア様に突き飛ばされてしまった。

 何が何だか分からないまま、ミレナのもとにたどり着く。

 ミレナが心配そうな顔で俺に話しかけようとした瞬間、領主が大声で叫んだ。


「お前たち! 反逆人、カティア・グラントールを捕らえよ!」

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