表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きな人がパーティを追放された  作者: myano


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/57

情報漏洩

 今日も遠距離攻撃部隊が中心となってザント団の本拠地に攻撃を行っている。

 だが、俺たちは戦場ではなく陣地の本営内にいた。

 ここはカティア様たちが軍議を行う場所だが、今はパーティの仲間4人とカティア様とグラシアさんしか居ない。

 カティア様は戦況が見える場所に立って自ら指揮を執ることを好むが、今はフィルザードに任せているようだ。


「……つまり、カティア様はどこかから情報が漏れたとお考えなのですね?」

「ええ。もっというと、ザント団と内通している人間がいると考えているわ」

 この場にはカティア様の()を知る人間しか居ないので、お互いに砕けた話し方になっている。

「夜襲の件について、領主様たちは何か言っていましたか?」

「被害の報告だけよ。正規兵も魔法部隊も、被害自体は軽微だったんだけど、精神的なダメージが大きかったみたい。正規兵の大半が厭戦(えんせん)気分に陥っているらしいわよ」

 厭戦気分……もう戦闘を止めて街に帰りたいと思っているということか。

 正規兵の割に打たれ弱くないか? レイヴェルクは他の都市とは異なり、他国が近くに無いため実戦の機会が少ないからだろうか。


「正規兵の約半数は最近兵士になったばかりで、今回が初陣ですからね。仕方ないかと……」

 グラシアさんが詳細を教えてくれる。

 正規兵の半数以上はザント団の本拠地に攻め込むために領主がかき集めた新兵らしく、彼らはほとんど訓練を受けていないようだ。当然、実戦経験もない。

 もともとはレイヴェルクとその周辺に住んでいた若者たちらしい。

 最初はやる気に満ちていたそうだが、敵の攻撃で自分が死ぬかもしれないと実感して怖くなってしまったみたいだ。

「そんな兵士を数だけ揃えたところで意味ないじゃん」

「ほんと、領主様には街でおとなしくしてて欲しかったわ……」

 リリアとカティア様が頭を抱える。

 何なら、食い扶持が増えるからマイナスなんだよなぁ……。



「夜襲の件ですが、状況だけを見たら余計な憶測を招きそうですね」

「さすがゼフレン。鋭いですね。まさに上層部はその憶測のせいで混乱しています」

 グラシアさんが今朝の軍議での出来事を教えてくれる。

 領主たちは冒険者部隊だけが夜襲を受けなかったことを不審に思っているようで、冒険者の中に内通者が居ると思い込んでいるようだ。


「もっと言うと、内通者の正体はわたくしだと思っているみたいね」

 カティア様がうんざりした表情で吐き捨てた。

 過去に漏れたのは全てカティア様が集めてきた情報だ。だが、知っている人間は他にも居たわけで。

「そんな……ひどい」

「カティア様がザント団と繋がってるわけないじゃん!」

 ミレナとリリアが感情をあらわにする。

 ゼフレンとグラシアさんも同意するように頷いた。



 ザント団の本拠地をめぐる攻防戦が始まってから半月ほど経った。

 敵は本拠地の門を固く閉ざしたまま出てくる気配がない。

 初日こそ夜襲を仕掛けてきたが、それ以降は俺たちが警戒を強めているので出撃を控えているようだ。

 本拠地に近付くと容赦なく矢や石が飛んでくるので、迂闊(うかつ)に近寄ることもできない。

 まあ、総大将である領主が力攻めを禁止しているから、俺たちがこれより前に出ることは無いのだが……。


「今日も遠くから攻撃しただけで終わりか。……この戦闘、いつまで続くんだろうな?」

「さあな。ザント団側の兵糧が尽きるまでじゃないか?」

「毎日突っ立ってるだけで飽きてきたぜ……」

 冒険者たちも焦れてきているように感じる。

 指揮官がカティア様でなければ、不満が爆発していたかもしれない。



 陣地に戻る途中、誰かの話し声が聞こえてきたので立ち止まる。

 声がした方に向かうと、物陰でカティア様と黄色い服を着た男が話していた。

「そうか。兵糧が――経由で運ばれてくるんだな」

「はい。討伐軍の兵糧は残り数日です。輸送隊から食料を奪えば、彼らは撤退していくでしょう」

「規模は?」

「私兵たちが護衛しているようです。少し多めに部隊を送るのが良いかと思われます」

「……考えておこう」

 そう言うと、男はザント団の本拠地に向かって歩いていく。

 男の声は聞き取りづらかったが、カティア様の声は嫌というほどよく聞こえた。

 ――そんな、まさか!?

 目の前で行われたやり取りが現実の出来事だと頭では理解しているが、心が必死に抵抗していた。



 しばらくその場で呆然としていたが、ようやく心が落ち着いた。

 ぼんやりしている間に、二人の姿は無くなっている。

「カティア様は……もう居ないか」

「わたくしに何か御用ですか?」

「ひえっ!?」

 後ろからの声に驚いて振り返ると、そこには頬を染めてニコッと笑うカティア様が居た。

 先ほどのやり取りを見た後だと、その笑顔すら怖く見える。

 俺がさっきの会話について尋ねようとすると、カティア様はそれを制してきた。

「やはり見られていたのね……。この事は他言無用でお願いね。わたくしも、リリアやミレナを巻き込みたくないから」

 そこで仲間の名前を出されると何も言えなくなってしまう。

 俺が「分かった」と答えると、カティア様は「よろしい」と言って笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ