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好きな人がパーティを追放された  作者: myano


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交戦開始

 翌朝。準備を終えた冒険者たちがカティア様の前に集合する。

 カティア様は俺たちを見回してから、ゆっくりと話し始めた。

「みなさんのおかげでザント団の本拠地までたどり着きました。ザント団を壊滅させるため、もう少しだけ力を貸してください」

 カティア様がそう言うと、冒険者たちが力強い雄叫びを上げる。

 総大将ではないものの、カティア様が部隊の指揮官になっているので冒険者たちの士気は非常に高い。



 戦闘が始まると、俺たち前衛職は拠点からの攻撃がギリギリ届かない位置に並び、敵の出撃に備える。敵が籠城しているので、俺たち前衛は被害を抑えるため前に出すぎないように命じられているのだ。

 俺たちの後ろでは、ミレナたち魔法使いや弓使いの冒険者が遠距離攻撃を放っている。

 石造りの壁は燃やしたり壊したりすることができないので、壁の上から攻撃してくる盗賊たちを倒していく。

 だが、何人倒しても新たな敵が外壁の上に現れてキリがない。


 前衛はそれを見つつ、敵襲に備えて周囲を警戒する。

「そっちはどうだ? 来ていないか?」

「大丈夫だ。だが伏兵で正規兵がやられたことがあるからな。警戒を怠るなよ」

 俺は近くの冒険者たちと声を掛け合いながら目を光らせた。


 夕方になり、戦闘を終えた俺たちは陣地に引き揚げていく。

 敵が出撃して来なかったため、互いに遠距離攻撃を打ち合っただけで終わった。

 途中でミレナと出会ったので、二人で話しながら歩く。

「これは長期戦になりそうだね……」

「一日中魔法を使っていたみたいだけど疲れてない?」

「ありがとう。途中で何度か休憩を貰えたから平気だよ」

 普段の冒険でミレナが一日中魔法を使い続けることはない。

 魔法の使い過ぎで疲れ切っていないか心配していたのだが、杞憂だったようだ。

「敵は魔法を使ってきてないよね?」

「私が見る限りでは使ってなかったと思う。あれ、(いしゆみ)……って言うのかな? それと投石だけだったと思う」

「妙に射程が短かったのが気になるなぁ。不慣れなのか、油断を誘っているのか……」

 本来、弩と投石は両方とも魔法よりも射程が長いはずだ。

 これらの射程外から魔法で攻撃できるはずがないので、何か理由があるはずだ。

 突然射程が伸びるかもしれないので、油断しないように気を付けよう。



 陣地に戻って休んでいると、カティア様から招集がかかった。

 何事だろうと首をかしげながら陣地の中央にある広場に向かう。

 俺たちが広場に着いてすぐにカティア様もやって来た。彼女は冒険者が集まったことを確認してから話し始める。

「お疲れのところお集まりいただき感謝します。数日の間、ザント団の夜襲に備えて見張りの数を増やそうと思いますので、ご協力をお願いします」

 その後、フィルザードが主導となって話し合った結果、4つのグループで各グループ2時間ずつ見張りを行ことに決まった。俺にとっては普段と全く同じ見張り時間だ。

 俺は2番目のグループに立候補した。

 2番目と3番目は睡眠が分割されるので疲れが取れにくくなるが、普段の冒険で慣れているので問題ない。



 翌朝、少し早く目が覚めた。

 夜中に見張りをした割に眠気は無く、身体も元気だ。

「昨日、あまり動かなかったからかな? それに夜も静かだったし……」

 普段は一日中冒険してから見張りまでやっているので、それに比べると負担は小さい。


 朝の集合時間が迫って来たので広場に移動する。

 途中でミレナと出会ったので並んで歩く。

「ミレナはよく眠れた? 疲れてない?」

「うん。私たち遠距離攻撃担当は見張りを免除してもらったから、ぐっすり眠れたよ」

 そういえばそうだった。

 カティア様の指示で、負担が偏らないように調整したことを思い出す。


 広場に着くと、近くの冒険者が声を潜めて話していた。

 何事だろうかと聞き耳を立てる。

「正門と東門の前に布陣した味方が夜襲を受けたらしい」

「マジか!? 大丈夫なのか?」

「被害は調査中だそうだ。オレたちは見張りを強化してたから無事だったのかもな」

「ラッキーだったな。いや、伯爵令嬢のおかげで助かったのか……」

 彼らの話では、ちょうど俺が見張りをしていた時間に正門前と東門前の味方が夜襲を受けたようだ。

 ほぼ同時に夜襲を受けたらしいので、複数の夜襲部隊が編成されていたことになる。


 彼らの話を聞いて、気になることがあった。

「見張り中、敵の気配を感じなかったんだよな……。俺たちの所には来なかったのかな?」

「良いところに目を付けたねぇ」

「うわぁ!」

 ミレナとは反対方向から反応が返って来たものだから驚いて飛び退く。

 そこにはフィルザードが立っていた。彼は人を驚かせておきながら悪びれる様子もなく、「やあ」と手を上げる。


「どういう意味だ?」

 色々と言いたい気持ちをグッとこらえ、フィルザードに問いかける。

「ボクはグレインの次の番だったんだけど、そこでも敵の気配を感じなかった。つまり、夜襲部隊は初めから来ていなかったと考えるべきだ」

 フィルザードの言葉に、俺たちは頷く。

 彼の言葉を引き継ぐようにしてカティア様も会話に加わった。

「ということは、正面の正規兵と東側の魔法部隊だけを狙ったことになります。わたくしたちは夜襲に備えて見張りを増やしましたが、他の部隊は最低限の見張りしか置いていなかった。……果たしてこれは偶然でしょうか?」

 彼女の口ぶりと表情からして、偶然だとは思っていなさそうだった。

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