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好きな人がパーティを追放された  作者: myano


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撤退戦

「ミレナ!?」

 振り返ると、そこには少し怒った顔のミレナが立っていた。

 どうやら、俺たちだけで殿(しんがり)を務めようとしていることにご立腹らしい。

「ハッハッハ。ただ護られるだけのお姫様ではないってことだね」

「……何を一人で納得してるんだ」

 フィルザードのことは放っておいてミレナに向き直る。

 今ならまだ間に合う。一刻も早く逃げてもらわないと!


「ミレナ、危ないから早く逃げるんだ! 今ならまだ味方に追い付けるから」

「やだ。グレインを置いていけない。それに、二人のスタイルは近距離戦闘だから、遠距離攻撃のサポートがあると楽でしょ?」

 ミレナの言うことは正しい。

 彼女に助けてもらえれば、俺たちが生きて帰れる確率は大幅に上がる。……というより、彼女が居なければ俺かフィルザードのどちらか一方、または両方がここで脱落するだろう。

 俺の中にある、生き延びたいという気持ちとミレナを危険に晒したくないという気持ちがぶつかり合う。

「……分かった。そのかわり、危険だと思ったら俺たちを見捨てて逃げるんだよ」

 結局、ミレナに助けてもらうことにした。

 その代わり、一人たりともミレナのもとへ行かせないと強く誓う。

「わかった」

 そう言ってミレナは力強く頷く。

 ミレナはそう言いつつも逃げないだろう。そういう性格だ。

 彼女を無事に帰すためには、俺たちも生き延びないといけない。

「話は付いたようだね。ミレナはそこの岩場に隠れて、攻撃の時だけ出てくると良い」

 ミレナはフィルザードの言葉に首肯した。



 ザント団の追っ手が現れたのは、それから間もなくのことだった。

「冒険者が居たぞ! 敵は二人……いや、三人だ」

 先頭にいる男が後ろの仲間に向かって叫ぶ。

 後ろの連中はこちらの数が少ないことを聞き、明らかに気を緩めた。

「ここを通れると思うなよ!」

 俺とフィルザードが武器を構えると、敵が二人突進してきた。予想通り、この道幅だと二人が限界のようだ。

 一人はフィルザードが一撃で仕留め、もう一人は俺が食い止める。

「こっちの男の方が弱い! 当たりだ――ぐわっ」

 俺の肩の上を水魔法が通過し、敵の眉間に命中する。

 彼は白目をむき、そのまま後ろ向きに倒れた。

「おい! しっかりしろ!」

 ザント団の仲間が、気絶した男を回収していく。

「殺さないんだね?」

「その方が早く撤退してくれると思うんだ」

 昔、誰かが『戦場では、相手を殺すより負傷させた方が戦力を削げる』と言っていた。

 負傷した仲間を運ぶための人員が必要になるからと聴いて、なるほどと思ったものだ。

「なるほど。その案、ボクも採用するよ」

 フィルザードは不敵に笑った。



 どれぐらい戦い続けただろうか。

 気が付くと、日が傾き始めている。

 俺たちは互いに交代しながらザント団と戦い続けていた。

 やはりミレナの存在は大きく、俺の攻撃力では倒すのに苦労する敵を、簡単に無力化していく。

 彼女の凄いところは、中級魔法を長時間使い続けても精度が全く落ちない点だ。

 今も当然のように敵の眉間を射抜いている。

「本当にミレナは素晴らしい魔法使いだね。ボクの方が先に出会っていたらと心底思うよ」

 ザント団員が倒れた仲間を回収していく隙に、休憩中のフィルザードが後ろから声をかけてくる。

「もしそうなら、俺もお前のパーティに入っていたかもな」

「それは面白そうな話だね。今からでも二人一緒に来てほしいぐらいだ」

「大事な仲間が二人居るからな。お前がパーティを追い出されたら拾ってやるよ」

 二人で軽口を言い合い、最後に笑い合う。

 フィルザードとこんな間柄になるとは、夢にも思わなかった。


 数分後、休憩しながら敵の様子を見ていたフィルザードが、何かに気付いたような声を上げる。

「どうやら奴らは撤退を始めたようだ」

 確かに、ザント団が徐々に後退していく。

 念のため警戒を続けたが、ザント団が戻ってくることは無く、ついに見えなくなった。

「ふう、何とか撃退できたか……。フィルザード、立てるか?」

 俺はフィルザードの手を引いて立ち上がらせた。

「さすがにずっと戦い続けるのはキツイね。キミは何でそんなに元気なんだい?」

「防御中心だったのと、フィルザードと交代しながら戦っていたからじゃないか?」

 フィルザードは敵を次々と倒していたから、攻撃の分だけ余分に体力を消耗したのだろう。


「グレイン、フィルザード、大丈夫?」

 フィルザードと話していると、後ろから声がかかる。

 ミレナは少し疲労の色が見えるが、それ以上に晴れやかな表情をしていた。

「ありがとう。ミレナのおかげで助かったよ」

「う……。ど、どういたしまして」

「顔が赤いけど大丈夫? 疲れちゃった?」

「平気! 早く行かないと途中で暗くなるよ!」

 ミレナはクルッと後ろを向き、そのまま歩き始める。

 フィルザードが俺の肩にポンと手を置き、無言で頷いた。

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