盗賊の拠点探索
「建物が燃えてるぞ!」
誰かが叫んだことで、多くの冒険者たちが恐慌状態に陥る。
彼らは「やばいぞ!」「焼き殺される!」「逃げろー!」と叫びながら門の外に飛び出していった。
「落ち着け! 燃えている建物は一つだけだ! 中に情報があるかもしれない。すぐに消火しろ!」
指揮官や兵士たちは落ち着いていて、すぐに魔法を使える兵士たちが消火に当たる。
「あの人に従うって決めていて良かったね」
「そうだな。あやうく僕たちもパニックに巻き込まれるところだったよ」
一瞬焦ったが、事前に方針を決めていたおかげで冷静に行動できた。
しばらくして、建物の火は消し止められた。
迅速に消火したので、火が周囲の建物に燃え移ることもなかった。
火災に巻き込まれた者は居なかったが、中に置いてあった物はすべて燃え尽きてしまったようだ。
「敵が情報を隠滅するために火を放ったんだろうな」
「多分そうだよね」
この建物にはそれだけ重要な書類があったのだろうか。
兵士たちが倒壊に気を付けながら、焼けた建物を捜索している。
冒険者の約半数はパニックを起こして逃げ出してしまい、戻ってくる様子はない。
こんなところでも兵士と冒険者の違いを実感するが、これも価値観の違いによるものだろう。
「俺たちも、手掛かりがないか探してみよう」
「そうだね」
俺とゼフレンは、二人で周囲の建物を調べ始めた。
「グレイン、何か見つかった?」
「うーん。ここには大したものは無さそうだ」
俺たちは今、拠点の中央にある建物を調べている。
ここにはベッドと机が一つずつ置かれていて、机の上には近隣の地図が置かれていた。
地図の所々には×印がされていて、印の一つは先日調査した村の位置に付いている。ザント団が襲撃した村を表しているのだろう。
だが、地図には今後の予定や、他の拠点の手掛かりになりそうな情報は書かれていなかった。
「うーん……」
俺は唸りながら部屋の中央に向かって歩く。中央に立つと、一瞬溜めてからパッと天井を見上げた。
「やっぱり何もないよな」
「何をやってるんだ……」
少し格好つけただけに、恥ずかしさがこみ上げてくる。ゼフレンに一部始終を見られていたので、なおさらだ。
羞恥心を紛らわすため、足元にあった石を蹴ろうとするが、勢い余って地面ごと蹴ってしまう。すると「ガコッ」という音とともに、地面が動いた。
「グレイン! そこに何かあるぞ!」
慌てて足元を見ると、木製の蓋が外れていて、地下に降りるための梯子が見えた。
一つ間違うと下に落ちていたんじゃないか。それに気付いて背筋が凍る。
「すぐに報告に行こう」
俺たちは、指揮官に穴のことを伝えに向かった。
指揮官に地下のことを報告すると、俺たちは数人の兵士と共に地下を捜索するように頼まれた。
まず、俺とゼフレンが慎重に地下へ降りていく。中は真っ暗で、何も見えない。
「明かりを下ろします!」
俺たちが地下に降りると、上に居る兵士が手持ちのランプを下ろしてくれる。
このランプは周囲が耐熱のガラスで覆われているので、服に火が付く心配もない。
「これ、便利だね」
「冒険に持って行っても良いかもね」
普段は暗くなる前に野営するので使う機会はないが、今回のように光源の無い場所を探索する際には重宝しそうだ。
しばらくすると、兵士たちも降りてきた。
俺たちはランプの明かりを頼りに、探索を開始する。
「どうやら小部屋になっているようだな」
「隊長、ここにロウソクがついています!」
「火をつけてくれ」
兵士の一人が壁に付いたロウソクを発見し、火をつける。
周囲が明るくなり、部屋全体が見えるようになった。
「あそこに机があるな」
部屋の隅に小さな机があるのを見つけた。机の上には何かの紙が置かれている。
俺はゼフレンと共に机に近付き、その紙を手に取った。
「これは、地図か?」
周辺の地図のようだが、よく見ると先ほど見た地図とは違う場所が丸く囲まれている。
「それ、他の拠点の場所じゃないか?」
ゼフレンの言葉にハッとして地図をもう一度よく見る。
街道の北側、先日行った村のさらに北側にも丸く囲まれている場所がある。
この場所は、カティア様たちと予想した、拠点の位置ともつじつまが合っていた。
小部屋の中に、地図以外の手掛かりは無かった。
俺たちは地上に戻ると、見つけた地図を指揮官に手渡す。
「ありがとう。助かるよ」
彼はそう言って丁寧に地図を受け取ると、地図をジッと見つめる。
微妙に口元が動いているので、暗記しているのだろう。
その後、彼は地図を安全に持ち帰るために、布で包んでいった。
拠点の探索を終えた俺たちは、本隊と合流する。
そこでは、ミレナとリリアが出迎えてくれた。
話を聴くと、二人は負傷者の治療を担当していたらしい。
ミレナも? と思ったが、彼女の水魔法は泥や血を洗い落とすのに重宝したそうだ。
「敵が本隊に攻めてこなくて良かったよ」
リリアがホッとしたように話す。
ずっと回復魔法を使っていたのか、少し疲労の色が見えた。
「手薄になった本隊に奇襲する戦法もあるもんね。昔、俺が読んだ物語に書いてあったよ」
まあ、今回は本隊にも魔法使いを中心とした戦力を残していたので、攻められても撃退していただろう。
三日後、俺たちはレイヴェルクに戻ってきた。
俺たちが持ち帰った地図を基に、貴族たちが話し合って次の動きを決めるらしい。
「さて、俺たちも次の任務に備えよう」
俺の言葉に、3人が頷いた。




