盗賊の拠点攻略戦
俺たちがレイヴェルクに戻ってきてから数日後の朝。
ギルドはある噂でもちきりだった。その噂というのは――
「聞いたか? ザント団の拠点の場所が分かったらしいぜ」
ちょうど今しがた、近くの冒険者たちがその話をしていた。
恐らく、先日捕らえた村長たちが耐え切れずに白状したのだろう。
「拠点は街道の南北に複数個あることが予想されるからね。長い戦いになりそうだ」
ゼフレンが周囲に聞こえないようにそう言うと、俺たちは揃って頷いた。
先日の調査結果については、かん口令が敷かれている。
俺たちがどの情報を掴んでいるかを、ザント団に知られないようにするためだ。
村長たちを捕らえたことも非公表にしていたはずなので、今日になっていきなり拠点の情報が出てくるとは思わなかった。
情報が漏れたのでなければ良いが……。
「Cランク以上のパーティのみなさんは窓口前にお集まりください!」
そんなことを考えていると、ギルド職員の大声が響き渡る。
この展開は予想していたので、慌てることなく窓口に向かった。
冒険者たちが窓口の前に集合すると、恰幅の良い男が一歩前に出た。
「今日もお集まりいただき、ありがとうございます」
男はゆっくりと俺たちを見回していく。
「噂になっているのでご存じの方も多いと思いますが、ザント団のアジトの場所が判明しました!」
男が高らかに宣言すると、「おお!」と冒険者たちの歓声が飛ぶ。
中には拳を突き上げる者もいた。
「みなさまには、兵団と共にアジトの攻略に向かってもらいたいと思います」
「えっ? ここに居る全員ですか!?」
冒険者の一人が驚いて声を上げた。他の冒険者たちも「街は大丈夫なのか?」「誰の指揮に従えばいいんだ?」などと不安そうしている。
「静粛に。みなさんの懸念はごもっともですが、我々冒険者ギルドとしても貴族に負けるわけにはいきません! 必ずや、彼らを上回る手柄を立てるのです!」
男が熱弁をふるう中、俺は周囲の反応を見てみた。
冒険者たちは、熱狂して「おおー!」と叫ぶ者、頭に疑問符を浮かべる者、ドン引きする者と様々だ。
「結局、貴族と冒険者ギルドの主導権争いってこと?」
リリアのつぶやきに、俺たちは「ハハハ」と乾いた笑いを漏らすだけだった。
その後、俺たち冒険者は貴族の兵団に合流した。
レイヴェルクからザント団の拠点までは距離があるので、二日かけて近くまで移動し、三日目に拠点を攻撃する予定になっている。
兵士たちは総じて士気が高く、ザント団を殲滅せんと意気込んでいる。
一方、冒険者たちの士気にはムラがあり、やる気が無さそうにしている者もいた。
俺たちはというと――
「まあ、来たからには手柄の一つでも立てられるように頑張ろっか」
「そうだね。私たちが頑張れば、ザント団の被害を減らせるはずだもんね」
リリアとミレナがそう話している。俺とゼフレンも同じ意見だった。
三日目の朝。
俺たちは特にトラブルも無く、ザント団の拠点に接近していた。
拠点は天然の地形を活用しており、小高い山の山頂付近を木製の柵で囲った構造だ。
山の裏側にも門があるのかもしれないが、ここからは確認できない。
味方も裏手に兵を回していないので、一方向から攻めることになっていた。
「何か仕掛けてくるかもしれないと思っていたんだけどな……」
隣でゼフレンが首を傾げている。
念のため伏兵や夜襲に警戒していたが、ザント団が奇襲を仕掛けてくることはなかった。
正規兵はともかく、冒険者は気が緩んでいる者もいたので、そこを狙われると危なかったかもしれない。。
「ここからが本番だね。気を引き締めていこう!」
俺が仲間にそう告げると、3人は真剣な表情で頷いた。
「掛かれ!」
指揮官の号令の下、兵や冒険者たちがアジトに殺到する。
近距離部隊である俺とゼフレンもそれに加わっていた。
「思ったより反撃が弱いな」
「逃げ出して数が少ないのかもしれないね」
そう言いながらも、油断せずに山を駆け上がる。
前方では早くも小競り合いが起きているようで、敵味方の怒号が飛び交っていた。
断末魔が聞こえ、血の匂いが漂い、倒れている味方が視界に入ってくる。
足がすくみそうになるが、勇気を奮い起こして前に進んでいった。
必死に剣を振るううちに、徐々に戦況が傾いてきた。
やはり数に勝る俺たちが優勢で、敵の抵抗が弱まってくる。
「門を突破したぞー!」
誰かがそう叫ぶと、冒険者たちが門に向かって殺到する。
兵士たちは指揮官の指示を待っている様子で、持ち場を離れずに戦闘を継続していた。
俺は目の前にいた敵を斬り伏せると、冒険者たちに倣って拠点内に向かった。
門さえ突破してしまえば、後は一方的な戦いだった。
盗賊たちは組織立った抵抗もできず、逃亡するか討たれるかのどちらかだ。
拠点内から敵の姿が無くなると、兵士たちは奇襲に備えて周囲を警戒し、冒険者たちは拠点内の建物を調べ始めた。
「勝手な行動をするな! まだ敵が隠れているかもしれないだろう!」
「知るか! 敵が居ても斬り捨てれば良いだけだろ!」
方針を巡って兵士と冒険者が口論を始める。
安全最優先で行動する兵士たちに、冒険者が痺れを切らした格好だ。
「ゼフレン、俺たちは安全を最優先にしよう」
「分かった。僕もそれが良いと思う」
俺とゼフレンはすぐに方針を決め、兵団の指揮官の指示に従うことにした。その時――
「おい! あの建物、燃えてるぞ!」
誰かの一言で、多くの冒険者たちがパニックに陥った。




