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好きな人がパーティを追放された  作者: myano


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盗賊被害の調査①

 次の日。

 ギルドに着くと、普段とは様子が違っていた。職員たちが慌ただしく動き回っている。

「どうしたんだろう?」

 俺が首をかしげていると、先に来ていたゼフレンが事情を教えてくれる。

「どうやら、近隣の村にザント団が現れたらしい」

「ザント団って、あの?」

 ザント団といえば、レイヴェルクの東側を根城にしている大規模な盗賊団だ。最近活発に活動していて、貴族たちも手を焼いていると聞く。

 以前にも、掲示板にザント団関連のクエストが掲載されていた。

「ああ。ギルドも今後の対応を話し合っているようだ」

 もしかしてギルドからも冒険者を派遣するのだろうか。



 その後、ミレナとリリアを交えて今日の予定について話していると、ギルド職員の大きな声が響き渡った。

「えー、Cランク以上のパーティの皆さんは窓口の前に集合してください。繰り返します。Cランク――」

 俺たちは顔を見合わせる。

 タイミング的にザント団に関することだろうと思いながら窓口へ向かった。


「あれ? あそこにいるのって……」

「ほんとだ、カティ――こほん。フェルドリッジ伯爵令嬢だね」

 ミレナとリリアが話している通り、窓口の前にはギルドの職員たちとカティア様が並んで立っていた。その佇まいは凛としていて、この場にいる誰よりも威厳と気品を感じる。

 カティア様は俺たちに気付くと小さく微笑む。それに目ざとく気付いた冒険者が「今、伯爵令嬢がオレに微笑んだよな?」などと言って周囲から呆れられている。


「うぉほん。みなさんお集りですね」

 恰幅の良い男が話し始めると、冒険者たちの視線が彼に集まる。

「えー、すでに知っている人も居ると思いますが、近ごろザント団という盗賊団が活発に動いています。つい先日も、レイヴェルクのすぐ近くの村を襲ったという報告がありました」

 その言葉を聞いた冒険者たちがざわつくが、男の「こほん」という咳払いで再び静まり返る。

「今、我々は領主様たちと対応を検討していまして、近々討伐隊を出す予定です。その際はみなさんにも協力を要請すると思いますので、それまでの間は泊りがけのクエストを控え、いつでも参加できるように準備しておいてください」

 どうやら、今日これから駆り出されるわけではなさそうだ。

 だが、当面稼ぎの良い泊りがけクエストに出られないとあって、冒険者たちは不満そうにしている。

「では、今日のところはこれにて解散とします。また後日お声がけすると思いますので、その時はよろしくお願いします」

 男がそう言うと、冒険者たちは散っていく。

 誰もが去り際にカティア様に一礼していることから、彼女の人気の高さがうかがえる。


「さて、俺たちもそろそろクエストを受けに行くか」

 周囲の冒険者たちがまばらになり、クエスト掲示板の混雑が解消されてきたのを見て、そう提案する。

「あら、あなたたちはこっちよ」

「えっ?」

 気が付くと、カティア様がすぐ隣に来ていた。彼女は他の冒険者に聞こえない大きさの声で、俺たちに話しかけてくる。

 だが彼女の存在は目立つので、周囲の好奇と嫉妬の視線に晒される。

「フェルドリッジ伯爵令嬢、お部屋の用意ができました」

 そのとき、ギルド職員がカティア様に恭しく話しかける。

「ありがとうございます。案内してもらえますか?」

「畏まりました。どうぞこちらへ」



 俺たちが案内されたのはギルドの会議室だった。この場にいるのは俺たち4人とカティア様、それにグラシアさんと案内してくれたギルド職員だ。

「案内してくださってありがとうございました。もう下がっていただいて結構ですよ」

「は、はあ……。では失礼いたします」

 ギルド職員は少し苛立った様子でそう返事すると、部屋を出て行った。あまり貴族のことを快く思っていないのだろうか。

「カティア様、また伯爵に内緒で依頼ですか?」

「ち、違うわよ! 今回はちゃんとお父様の名代としてここに来たの! ほら、これがお父様から預かってきた書面よ」

 リリアがジトっとした目を向けると、カティア様が慌てて弁明する。

 差し出された書面を見ると、確かに伯爵直筆のサインが書かれていて、伯爵家の印も押してある。公式な書類に間違いなさそうだ。

 それにしても、いつの間にかリリアとカティア様は気安い関係になっていたみたいだ。リリアのコミュニケーション能力にはいつも驚かされる。


「それで、今回はどういったご用件ですか?」

 俺が問いかけると、カティア様がパッと目を輝かせる。まるで訊いてくれるのを待っていたと言わんばかりだ。

「盗賊による被害の確認よ。この近くの、襲われた村を巡って被害状況を訊いて回るの。もちろん、わたくしも参加するわ!」

 カティア様は腰に手を当て、得意げに胸を張る。

「お嬢様、今回は暴走してグレインに迷惑をかけないでくださいね?」

「そ、そんなことしないわよ! わたくしだって、あの時のことは申し訳ないと思っているのですから……」

 そう言ってカティア様は少し頬を染め、上目遣いで見つめてくる。普段は強気な彼女が見せたしおらしい態度、そのギャップに思わずドキドキしてしまう。

「――っ!?」

 その瞬間、背後で強い魔力を感じて背筋が冷たくなる。その魔力は一瞬で消えてしまったので、他のみんなは気付いていなさそうだ。

 ……いや、グラシアさんが青ざめた顔で俺の後ろを見ているので、彼女だけは気付いたらしい。

 俺の後ろにいるのはミレナのはず。なんで魔力が漏れたんだ?

 気になって彼女を盗み見るが、本人は魔力漏れに気付いていない様子だった。


「ということは、泊りがけになるんですか?」

「ええ。そうなるわね」

 俺がミレナのことを気にしている間にも話が進んでいる。今もゼフレンがカティア様に質問を投げかけている。

「カティア様とグラシアさんのパーティですと、ランクが足りないのでは……?」

「わたくしたちは父の名代として参加するからランクなんて関係ないわ! それに、『冒険者を派遣してザント団を調査せよ』という領主様のお達しも出ているから、ギルドの方針よりもこっちが優先よ」

「ああ、だからあの職員は苛立っていたんですね……」

 ゼフレンが遠い目をしてつぶやく。

 カティア様の後ろではグラシアさんも頭を抱えていた。

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