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好きな人がパーティを追放された  作者: myano


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Cランク昇格試験③

「今日はこのあたりで野営しようか」

「そうだね。そろそろ準備を始めないと暗くなっちゃう」

 俺の言葉に全員が賛同してくれたので、野営の準備を始めた。


「グレイン、向こうは準備終わったよ。何か手伝えることはある?」

 夕食の用意をしていると、リリアがトコトコとやって来た。

「こっちももう少しで終わるから大丈夫だよ。気持ちだけ受け取っておくよ」

「分かった。じゃあ料理してるところを見させてね」

 そう言うと、リリアは俺が調理する様子を眺め始めた。


「……グレインって料理上手だよね。どこかで習ったの?」

 スープを火にかけて具材に火が通るのを待っていると、リリアが話しかけてくる。

「前のパーティの仲間に教えてもらったんだ。その人は俺より上手なんだぜ」

「そうなんだね。……ねえ、あたしも練習したら美味しい料理が作れるようになるかな?」

 リリアが少し恥ずかしそうにしながら聞いてくる。

 彼女の想いに見当はついたが、それを茶化すのは違うと思ったので真面目に答える。

「俺も教えてもらうまでは未経験だったし、できるようになると思うよ。今日は待つだけで教えられることがないから、また今度教えようか?」

「うん! ありがとう!」

 リリアの料理を食べてゼフレンが喜んでくれると良いな。


 食事と片付けを終え、4人で焚火を囲んで明日の流れを確認する。

「今日のうちにモンスターを倒して山を抜けられたのは良かった。もう一つの課題も明日の午前中には終わると思うから、時間に余裕をもってクリアできそうだ」

「もしかして明日のうちに街に戻れるかな? あたしたち、結構すごくない?」

 ゼフレンの言葉にリリアが嬉しそうに返す。

「こらこら。大事なのは確実に明後日の正午までに戻ることだから、慌ててはダメだよ」

「はーい」

 二人のやりとりは見ているこっちまで明るい気持ちになる。

 ふとミレナを見ると、彼女も楽しそうな顔で二人を見ていた。



 深夜。ふっと自然に目が覚める。

 月の位置から察するに、そろそろ見張りの時間だ。

 交代するため、焚火の前に座っているミレナのもとに向かう。


「ミレナ、そろそろ交代の時間だよ」

 寝ている二人を起こさないように、小さな声で話しかける。

「ありがとう。……少しだけこのまま居ても良いかな? 月が綺麗だからもう少し見ていたくて」

「良いよ。一緒に見よう」

「……うん」

 ミレナと並んで座り、空を見上げる。

 漆黒の夜空に大きな満月が浮かんでいた。


 ――ミレナに恋をした日も満月だったな。

 そんなことを考える。あの日は満月を見上げる彼女を遠くから見るだけだったが、今日は彼女の隣で一緒に満月を見上げている。

 今後、俺たちの関係はどう変わっていくのだろうか。柄にもなくそんなことを考えていた。



 小鳥のさえずりで目が覚める。周りは明るくなっているから、もう起きないと。

 ぼんやりと記憶をたどる。

 ミレナはしばらく月を見た後、少し残念そうな顔で寝床に向かった。たぶん、もう少し月を見ていたかったのだろう。

 その後は何事もなく見張りを務め、ゼフレンと交代したのだった。

 昨夜のことを思い出すうちに頭が回り始めたので、身支度を整える。

 今はリリアが見張りをしている時間だな。そんなことを考えながら焚火の場所に向かった。


「グレイン、おはよう。早いね」

「おはよう。よく眠れた?」

 起きているのはリリアだけかと思っていたが、彼女の隣にミレナも座っていた。

「二人ともおはよう。ミレナも起きていたんだね」

「寝起きの姿を見られたくないもんね?」

 リリアがニヤリと笑い、そんな彼女をミレナがポカポカと叩く。相変わらず仲が良いなあ。



 支度と朝食を終えて行動を開始する。

「今日も元気にいくよー」

「お、おー」

 後ろではリリアが楽しそうに掛け声を出し、ミレナが恥ずかしそうに応じている。

「この辺りもモンスターが少なそうですね」

「そうだね。見通しも良いから不意を突かれることも無いだろう。問題は森の中だね。課題の『箱』を探すのに夢中になりすぎないようにしないと」

 ゼフレンの言う通り、箱探しと周囲の警戒を両立しないといけない。それでいて『箱』は見つかりづらい場所に隠されているのだから意地が悪い。



 野営地から2時間ほど西に歩いたところでゼフレンが地図を片手に立ち止まる。どうやら地図に示された場所付近に到着したようだ。

「印の場所はこのあたりのはずだけど……」

 俺たちも立ち止まり、とりあえず周囲を見回してみる。案の定、目的の箱は見当たらない。

「箱、無さそうだね」

「少し範囲を広げて探してみようか」

「そうですね。木の上や地面の痕跡も見逃さないように気を付けましょう」

 俺の言葉に全員が頷いた。


「もしかしてあれかな?」

 しばらく周囲を探索していると、ミレナが声を上げる。木の上に何かを見つけたようで、そちらを指差している。

「僕が取ってくるよ」

 ゼフレンが駆け出し、身軽に木を登っていく。彼を待つ間、俺たちは周囲を警戒する。


 しばらくして、ゼフレンが掌ほどの大きさの箱を持って戻ってくる。

「お兄ちゃん、それってもしかして?」

「うん。『Cランク昇格試験』って書いてあるから間違いないね」

「やったあ!」

 周囲のモンスターを刺激しないように小声で喜びを分かち合う。


 そうして喜んだのも(つか)の間。自然と空気が引き締まる。

 程よい緊張感が戻ってきたところで、ゼフレンが目配せしてきた。

 俺は頷きを返すと、一歩前に出る。

「二つの課題はクリアしたけど、明日の正午までにレイヴェルクに戻るまでが試験だ。みんな、最後まで気を引き締めていこう。無事に街まで帰ろう!」

 その言葉に3人が首肯する。みんな気合に満ちた表情をしていた。



 二つの課題をクリアした俺たちは来た道を戻る。今はちょうど山道の途中、昨日昼食のために休憩した場所を超えたあたりだ。

「まずい、霧が出てきた」

「今日中に山道を抜けたかったけどこの視界では厳しいですね。もう少し進めば道幅が広くなるので、今日はそこで野営しませんか?」

「そうだね。僕もそれが良いと思う」

 他の二人も賛成してくれたので、慎重に進むことにした。


 ――グワァー、グワァー

 上空で昨日の鳥型モンスターの鳴き声が聞こえ、俺たちは思わず立ち止まる。

 見上げるが霧のせいでモンスターの姿は見えない。

「まさかこっちに仕掛けてこないよね?」

「リリア、落ち着くんだ。上空を旋回しているだけみたいだ」

 ゼフレンが青い顔をするリリアをなだめる。


 ――グワアー。バサッ、バサッ

 モンスターの羽音が大きくなる。

 まさか、霧の中に飛び込んで来たのか!?

 ――ズドン! グァ……

 直後、轟音が響き渡ったかと思うと激しい揺れに襲われる。モンスターが山肌に激突したようで、弱々しい鳴き声が聞こえてきた。

「きゃっ!」

「ミレナ!?」

 すぐ後ろでミレナの悲鳴が聞こえたので慌てて振り返る。

 揺れでバランスを崩したのか、あるいは足を踏み外したのか、ミレナの身体がゆっくりと傾いていく。その先に地面は無く、真っ白な霧だけが広がっている。

 ――助けないと!

 絶望に染まった顔で手をバタつかせるミレナに向かって懸命に手を伸ばす。

 ギリギリのところで彼女の手を掴んだが、俺も体勢を維持できなくなる。

「うわっ!」

 気が付くと、二人の身体は宙に投げ出されていた。


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