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女神(アイドル)たち舞い歌いて、邪を祓う  作者: 暇崎ルア
幕間 あの人の話

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あの人の話

 ——ああ、はい。僕はホットのカフェオレ一つお願いします。

 はい、ありがとうございます——それで、何や。急に呼び出したりして。また若い頃みたいにバンドやろうなんて言うのは堪忍やで。僕ももうそんな体力残ってへんし、奥さんの仕事手伝うので忙しいんや。ああ? 奥さんの仕事? アパレルや。結構おもろいで。

 ——ああ、せやろな。お前も「ばんかみ」のプロデュースしとるもんな。今更そう簡単にバンド再結成なんかできへんか。はははっ。

「ばんかみ」、僕の奥さんも好きやで。グリーンの——そう、楓花ちゃんが好きみたいや。今風に言うなら「推してる」って言えばええんか? グッズとか集めとるわ。今度始まるドラマも楽しみにしとるみたいやで。「雰囲気が男装の麗人って感じで好き」って言うとったわ。言うとること、わかるやろ?

 ああ、そうや。うちの奥さん、次のライブ行く言うとったわ。「チケット、ダメ元で応募したら当たった」て、嬉しそうにしとったな。

 あ? 僕は推してるのかて? いや、特別誰か推してたりはせえへんけど……。だってええ年こいたおっさんが推し活するのも変やろ……。そういうの性別も年齢も関係ないやて? はっ、お前もなかなか言うやないか。

 まあそうやな、応援したい子がいるとしたら美亜ちゃんやな。なんちゅーか、何事にも一生懸命な感じがええわ。見てて応援したくなるんやろな。これからも隠れて応援させてもらうわ。

 ……って、話ズレたな。お前の本題、聞くだけ聞かせてもらうわ。

 ——ふーん、なるほど……はあ。

 お前も相変わらず、偉い難儀なこと抱えとんなあ。しんどくならんの?

 ほんで僕に助け求めに来たっちゅーわけか。まあ、お前の言う通り一応僕も拝み屋の家系やけど、大層なことはできへんで。

 それに、お前自身のことは自分で何とかしいや。僕におっさん助ける趣味はないねん。

 ……はっ? 「ばんかみ」のあの子たち絡みなん? 意味がわからんわ、何でそうなったん?

 はあ、見せてもらいたいもの、ね。ええけど、何や……って、うわっ! あかん、あかん、そんなもん! しまえ、しまえ!

 ——はああ、アホ。お前、何ちゅーもん見せてくれんねん。どこでそんなの手に入れた? 普通の生活しとったら手に入らへんやろ、そんなん。

 霊感あるやつはやばい言うとる? そらそうやろ、見るだけで鳥肌もんや。お前、それ知っとって僕に見せたん? ったく、それなら最初に言いや……心臓止まるかと思うたわ。

 ああ、お前の言う通りや。そいつらは紛れもない「呪物」やで。それも大層強い恨み辛みが入っとる。正直、どれだけのことしたらそないな強い恨み辛みになるのかわからん。

 で、これ何なん? 薬の錠剤のパックみたいに入っとるのと、栄養ドリンクみたいな容器に入っとるけど。まさか、食べ物やないやろな?

 ……えっ、商品として売ってる食品なん、これ? 嘘やろ? どこで売っとるん?

 ……はあ、こっちは販売中だけど、こっちはまだ未発売……どこでそれを手に入れたかは聞かん方がええか。別にどうでもええし。

 でもこれ売ってるのはどこなんや。正直言わせてもらうと、これを企業が「健康食品」として売っとるなんちゅーのは、悪意の極みや、極悪や。世間に出してええもんやない。冗談抜きに企業失格やで。

 ——まあ、それは言えんよな。まあ、ええわ。聞いても気分悪くなるだけやろうし。

 あ? これを口にしたらどうなるかて? お前、そんなん聞かんでもわかるやろ——呪われるわ。

 ……なあ、最悪のこと考えてしもたんやけど。これ、もしかしたらわざと人を呪うために作ったもんやないのか?

 ——ああ、やっぱり、お前もそう思うか。まあ、そう思う方が自然やろうなあ。

 呪いにはな、口の呪いってのがあんねん。呪いを人に食わせるってことや。

 お前「こどく」って知っとるか? 言うとくけど「ロンリネス」の方やないで……はははっ、それや。やっぱりお前も詳しいなあ。

 せや、古代中国にあった呪いの方法のことやな。色々あるけど、毒虫集めて壺入れて、戦わせて生き残った虫から強い毒を採取する方法が一番有名かもしれんな。

 ほんでその蟲毒でできた毒、つまり呪いを人に食わせるんや。嫌いな奴とかにな。

 無論、食ったもんは呪われて死ぬ。恐ろしいで。

 この錠剤とかドリンクにそれだけの強さがあるかどうかはわからへんけども——うわ、もう口にしたやつおるんや。そいつどないなった?

 ……ほうか、それは当然やろうな。悪霊に憑りつかれるのもおかしないわ。

 そんで、この気色悪いやつにあの子たちが巻き込まれとる言うんか? どないなっとんねん……。


 ——そうか、諸々の詳細はわかったわ。

 そうやな、正直関わりたないわ、そんなもん。僕も自分の身が可愛いからな。

 けど、事情が事情なだけにしゃあないな。協力するわ、しゃーなしや。

 ……あー、やめろ。別にお礼とかはいらんわ、アホ。お前に感謝されたくてやるわけやないさかい。

 さっきも言うたけど、お前自身のことだったらほっといたわ。ほんまや。何で僕がいい年こいたおっさんのこと守らなあかんねん。お前自身のことはお前で何とかしいや、って話や。

 せやけど、今回ばかりは話がちゃうやろ? 未来ある若い子たちが危険に晒されてるなら守らなあかん、と思うわ。頑張ってる若者を守るのが、老い先短いおっさんのすることやろ……。

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