嫉妬
テレビや映画の向こうの顔ぶれに憧れてから、ここまでどれだけの時間をかけたか。
女優という職業を目指すのは、一か八かの賭けだ。勝者は「スクリーンデビュー」という栄光を掴み、敗者は何者にもなれず表舞台から去って行く。
そんな厳しい世界で続けられて、二作目の主演を手に取ることができたのは「運が良かった」からかもしれない。
同時に何年も何年も、ただひたすら地道に腐らず努力してきた成果だとも思っている。運だって自分の努力なしではつかめないはずだ。
だからこそ、あの女の存在が許せない。共演が決まったときから、彼女だけが憎い。
「——許せない」
一人でいると、そんなことを呟いてしまうほどに。
世間はもてはやすが、彼女は女優ではない。「アイドル」という売名行為で輝ける座を手に入れただけだ。そんなものただのまやかし、ずる勝ちだ。
だというのにもうすぐ彼女は「主演」として私の隣に立とうとしている。
許せない。私にはそれがどうしても許せない。彼女の前にいるときは、女優として友達のように笑っていなければならないのも許せない。
下唇を熱いものが垂れた気がした。舐めると鉄の味がして、指でぬぐうと赤い雫がついた。知らず知らずのうちに、下唇を強く噛んでいたらしい。いけない、肌は女優として大切な武器なのに。もっと気を付けなくては、自分を大切にしなくては。
要らないストレスが増えていく。あいつの存在が心底邪魔だから、あいつのせいだ。「爽やか」などと周りからは評されるが、あんなのいつもヘラヘラと笑っているだけだ。
ああ、本当にどうして彼女が共演者になったんだろう?
あいつなんて所詮、アイドルとしての知名度で抜擢されたに過ぎないのに。
あんな女、痛い思いをすればいいのに。苦しめばいいのに。




