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暗礁1



福沢夕子ユキチは静かに目を覚ました。


白い天井が無造作に映し出され、首を横に振ると、点滴や心臓の鼓動を知らせる心拍計が淡々とカウントを表示していく。


「えっ、ここは!

いったい、どうしたというの?」


ユキチ自身、やっと自我に芽生えたところだった。

だが、運命はとても残酷な仕打ちをすることになる。


すぐに彼女は、右半身に痛みを感じて、異変に気づく。


「どうしたんだろう。

いったいここはどこ?

どうなってしまったというの?」


ユキチはここが病室で

あることにすぐには気づかなかった。


自分が置かれている状況がどうしても把握できない。


「えっ、待って。私は誰?」


光を照らしている照明に視線を移しても、 

この器具が何という名称なのかわからない。


「嘘でしょ。何故わからないの」


ベットの脇の壁には時計がかけられている。

集中してぐっと視線を近づけても理解ができない。


「あれは何を意味してるの?

ここは何という世界?

私は、私は、私は、どうしたというの?」


ユキチは自分が記憶を

失ってしまったことに、初めて気づいた。


「こんなことがあるの。

自分の意識は機能していて、心も正常に感じられるはずなのに、記憶が出てこない」


ここがどこだかある程度は理解できる。

左手に繋がれた心拍計。口には酸素を送る器具がつけられている。


頭にズキンズキンと

痛みが走りきっと病院のはずだ。


だが、ユキチには病院という

名詞が思い浮かばなかった。


適切な治療により脳挫傷の危険性は無くなっていた。


MRIであらゆる角度から脳の画像を精査した結果、

大門医師も危険は回避した、と自信を持って母親の薫に説明をした。


薫もこの時とてもホッとした。あとは右半身の骨折の治療に専念すればいいはずになっていた。


しかし、ユキチの信じられない重大な知らせを聞くことになる。


病名は記憶障害。


大門医師は人によっては、その日のうちに記憶を取り戻せる事があるから、そんなに心配しないでほしい、と薫に告げた。


だが薫は事故後の夕子ユキチの姿を病室で

はじめて見た時、あまりの変化に愕然とした。


キョロキョロ周りを見回して、

オドオドと全く落ち着きがない。


あんなに活発だった姿はなりをひそめ、

ベットの上で憔悴しきっていた。


大門医師は、

「少しの間安静が必要です。

焦らずじっくり自分を取り戻せるような治療をしていきましょう。


だから、お母さんもまた、夕子さんを子供の頃から育てるような思いで接してください。そうすれば必ず良い方向に行くはずですから」


薫はフッと我に返り、

「そうですね。トラックに轢かれて、この程度に済んだことを感謝しなければいけないわ。

先生よろしくお願いします」


「このことは、まだ夕子さんの友達には伏せておきましょう。


すぐに良くなる症例もたくさんありますから、あまり心配しないでください」


「わかりました。本当にありがとうございます」


   

to be continue



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