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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 山奥たける


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第38話 責任の所在

 問題は、小さな遅れから始まった。


 北方の街サリエで、感染症が再発した。


 規模は限定的。

 だが、判断が割れた。


「基準の第二段階を優先するか、

 例外処置を認めるか」


 現場責任者は、迷った。


 レオンはいない。


 基準はある。

 だが、どこまで踏み込むかは――現場次第。


 結果、判断は保守に傾いた。


 安全側。


 それは、間違いではない。


 だが。


「重症化、三名」


 報告書が王都へ届く。


 死者は出ていない。


 それでも、監察官は資料を机に置いた。


「これが、最初だ」


 誰も声を上げない。


「基準は、便利だ」


 彼は言う。


「だが、現場判断を前提とする以上、

 責任は分散する」


 分散は、思想としては美しい。


 だが、国家にとっては曖昧だ。


「今回の件、

 誰の責任か」


 沈黙。


 現場責任者か。

 基準を広めたレオンか。

 放置した国家か。


「曖昧だ」


 それが、最大の問題だった。


 ――


 サリエ。


 現場責任者の神官は、頭を下げていた。


「判断が遅れました」


「基準通りだろ」


 ミナトが言う。


「逸脱はしていない」


「だが、結果が」


 神官は、拳を握る。


 重症者の家族が、不安げに見守る。


 レオンは、静かに状況を確認していた。


「遅れは、二時間」


 冷静に分析する。


「致命的ではない」


 だが、重症化は事実。


 その夜、簡易の会議が開かれた。


「今回の判断、間違いですか」


 神官が問う。


 全員が、レオンを見る。


 いつもの構図だ。


 だが、レオンはすぐに答えなかった。


「……間違いではありません」


 重く、そう言った。


「ただ、最適ではなかった」


 その言葉に、神官は顔を上げる。


「では、どうすれば」


「基準は枠です」


 レオンは続ける。


「枠の中で、最終判断は

 あなたが下す」


「それで、重症化が出たら?」


 問いは、鋭い。


 レオンは、目を逸らさなかった。


「責任は、分かち合う」


 沈黙。


「俺が広めた基準なら、

 俺にもある」


 ミナトが、思わず声を上げる。


「でも、現場で決めたのは――」


「それでいい」


 レオンは遮った。


「一人に戻す気はない」


 その言葉は、覚悟だった。


 翌日、王都から監察官が到着する。


「状況確認だ」


 形式的な調査。


 だが、視線は冷静だ。


「支援基準は、有効か?」


 レオンに問う。


「はい」


「ならば、今回の遅れは?」


 罠ではない。


 純粋な問いだ。


「改善点です」


 即答だった。


「撤回は?」


「しません」


 迷いなく。


 監察官は、しばらくレオンを見つめた。


「……失敗が出た場合も?」


 レオンは、一拍置く。


「その時は、

 分散の代償です」


 空気が、固まる。


 監察官は、静かに頷いた。


「覚えておけ」


 去り際に言う。


「国家は、曖昧を嫌う」


 サリエの空は、曇っていた。


 重症者は回復に向かっている。


 だが、何かが変わった。


 成功だけでは済まない段階に入った。


 責任の所在が、

 静かに問われ始めている。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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