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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 山奥たける


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第37話 支援の標準化

 小さな講堂に、二十人ほどの冒険者と神官が集まっていた。


 即席の講習会。


 壇上に立っているのは、俺ではない。


「三段階確認、いきます」


 ミナトが、紙を握りしめながら声を張る。


「まず、症状の固定。

 次に、悪化要因の排除。

 最後に、回復の優先順位」


 ぎこちないが、間違っていない。


 俺は壁際で腕を組んで見ている。


「レオンさん、前出なくていいの?」


 リーナが小声で聞く。


「今日は、俺は補助です」


 そう答える。


 ミナトは、実例を挙げながら説明を続ける。


「全部を救おうとしない。

 でも、放置もしない」


 その言葉は、俺が何度も言ってきたものだ。


 だが、今は彼の言葉になっている。


 質疑応答の時間。


「もし判断が割れたら?」


 一人が問う。


 ミナトは、少し迷いながら答える。


「基準に戻る。

 それでも迷ったら、現場責任者が決める」


「レオンさんに聞くんじゃなくて?」


 ざわめき。


 ミナトは、首を振った。


「いない前提で、やる」


 その一言に、会場が静まる。


 講習後、何人かが声をかけてきた。


「思ったより難しくないな」


「奇跡に頼る前に、できることが増えた」


「正直、少し自信がついた」


 その空気を、俺は静かに受け止める。


 夜、野営地。


 焚き火を囲んで、ミナトがぽつりと言った。


「怖いですよ」


 火を見つめたまま。


「レオンさんみたいには、できません」


「必要ない」


 即答だった。


「同じになる必要はない」


 彼は、少しだけ笑う。


「でも……

 少しでも近づけたら」


 その願いは、悪くない。


 翌週。


 別の街で、若い神官が単独で判断を下した。


 完璧ではないが、処置は成功。


 報告書にはこうあった。


『レオン殿の基準に従い、

 最終判断は現場で行った』


 俺は、静かに紙を畳む。


 成功例が、増えている。


 支援は、少しずつ標準化していた。


 奇跡の回数は減り、

 処置の速度は安定し、

 何より――


 待たない。


 誰も、俺を待っていない。


 それが、何より嬉しかった。


 だが。


 王都では、別の報告が上がっていた。


「成功例が増えるほど、

 基準への依存が強まる」


 監察官が言う。


「個人差が減る。

 つまり、責任の所在が曖昧になる」


 成功は、喜びだ。


 だが、成功が続くと――

 人は、それを“当然”にする。


 夜更け。


 エリスが、静かに現れた。


「順調だね」


「ええ」


「今はね」


 その一言に、わずかな棘がある。


「火は広がってる」


 彼女は、焚き火を見つめる。


「でも、風向きは変わりやすい」


 俺は、炎を見つめ返す。


 標準化は、力だ。


 だが、標準は――

 誤用もされる。


 今は、希望が勝っている。


 だが、その均衡は、

 いつ崩れてもおかしくない。


 それでも。


 俺は、火を消す気はなかった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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