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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 山奥たける


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第33話 歪みの正体

 街を発つ朝は、いつもより静かだった。


 騒ぎはない。

 混乱もない。


 アルマは、ちゃんと回っている。


 俺が決めなくても。

 俺がいなくても。


 完璧ではないが、止まってもいない。


「……寂しくない?」


 リーナが、馬車に荷を積みながら聞く。


「少し」


 正直に答える。


 頼られることは、悪い気分じゃない。


 必要とされることも。


 だが、それを前提にした瞬間――

 歪みは始まる。


 出発前、イオナが駆け寄ってきた。


「……昨日、若い神官が判断を誤りました」


 心臓が、わずかに跳ねる。


「重症化はしませんでした。

 修正も間に合いました」


 彼女は、まっすぐに言う。


「でも、彼は泣いていました」


 当然だ。


 命を扱う判断だ。

 怖くて当たり前だ。


「それでも」


 イオナは続ける。


「次も、自分で決めると言っていました」


 それを聞いて、胸が軽くなる。


 完璧じゃない。

 でも、止まっていない。


 それでいい。


 街道に出ると、エリスが待っていた。


 いつの間にか、という顔で立っている。


「終わった?」


「ええ」


「世界、壊れなかった?」


「今のところは」


 エリスは、小さく笑う。


「歪みの正体、分かった?」


 俺は、空を見上げた。


 答えは、単純だ。


「世界は、歪んでなかった」


 エリスが、目を細める。


「歪んだのは」


 一拍置く。


「正しさの集まり方です」


 善意も、合理性も、悪くない。


 だが。


 それが一箇所に集中したとき、

 世界は“間違えられなくなる”。


 間違えられない世界は、

 修正できない世界だ。


「あなたは、集めるのをやめた」


 エリスが言う。


「集めない代わりに」


 俺は、続ける。


「広げる」


 完璧じゃない。

 効率も悪い。


 それでも。


 自分で立ち直れる世界のほうが、

 長く続く。


 エリスは、しばらく黙っていた。


「……それなら」


 彼女は、わずかに微笑む。


「あなたは、管理者にはならない」


「なるつもりはありません」


 即答だった。


「支援者で、十分です」


 エリスは、それ以上何も言わなかった。


 ただ、静かに姿を消す。


 街は遠ざかる。


 俺は、唯一無二であることをやめた。


 最強であることも、誇らない。


 代わりに選んだのは――

 繰り返せる支援。


 世界が、自分で間違え、

 自分で修正できる余地を残すこと。


 歪みは、まだある。


 きっと、また現れる。


 でも、もう分かっている。


 正しさは、

 抱え込むものじゃない。


 渡して、

 迷わせて、

 それでも支える。


 それが、

 追放された回復支援職が辿り着いた――

 次の在り方だった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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