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Sランクパーティから追放された回復支援職、俺がいなくなった途端に全員死にかけてるんだが? ~追放ざまぁから始まる、戦わない最強支援職の物語~  作者: 山奥たける


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第34話 広がる基準

 最初の報告は、手紙だった。


 アルマから二つ先の街、ベルク。


 差出人は、若い神官の名。


「……来ましたね」


 リーナが、封を切る俺を覗き込む。


 便箋は、ぎこちない文字で埋まっていた。


『あなたの基準を使いました』


 その一文に、胸が静かに波打つ。


『奇跡を使う前に、三段階確認を行いました。

 軽症者の判断を、現場で完結させました』


 完璧ではなかった、と続く。


『ですが、処置は間に合いました。

 誰も待ちませんでした』


 最後に、小さく。


『ありがとうございます』


 俺は、しばらく手紙を握ったまま動けなかった。


「……成功例?」


 カイルが問う。


「ええ」


 頷く。


「しかも、俺抜きで」


 それが、一番大きい。


 数日後、別の街からも報告が届いた。


 支援基準の写しが、回っているらしい。


「勝手に広がってるね」


 リーナが、笑う。


「止めますか?」


「止めません」


 即答だった。


 広げると決めたのは、俺だ。


 小さな町で、若い冒険者が声をかけてきた。


「レオンさんですよね」


 まだ少年に近い顔立ち。


「ミナトです。

 あの……基準、読ませてもらいました」


 彼は、緊張しながら続ける。


「俺、回復は得意じゃないんです。

 でも、何を見るか分かったら、

 動ける気がして」


 その目に、迷いと希望が混ざっていた。


「実際にやってみたのか?」


「はい。

 小規模な依頼でしたけど」


 結果は?


「……成功です」


 誇張も、自慢もない。


 ただ、事実として。


 俺は、笑った。


「それなら、十分だ」


 ミナトは、少しだけ肩の力を抜いた。


 その日の夜、焚き火の前でリーナが言った。


「なんかさ」


 薪をくべながら。


「弟子、みたいになってない?」


「弟子ではありません」


 首を振る。


「真似してるだけです」


「それが弟子でしょ」


 軽口だ。


 だが、胸の奥に熱が灯る。


 翌月。


 いくつかの街で、同じ報告が続いた。


 処置は遅い。

 効率も悪い。


 でも。


 待たない。


 誰か一人を、前提にしない。


 それだけで、空気が違う。


「……上が動きますよ」


 カイルが、ぽつりと呟いた。


「ええ」


 分かっている。


 支援が独占されている間は、扱いやすい。


 だが、広がると――

 管理は難しくなる。


 夜、エリスが現れた。


「順調だね」


「今のところは」


「嬉しそう」


 否定できない。


「広がるのは、怖くない?」


「怖いです」


 正直に答える。


「でも、止めるほうが怖い」


 エリスは、少し目を細める。


「あなた、もう戻れないね」


「ええ」


 唯一無二の座には。


 焚き火が、静かに燃える。


 分けた正しさは、

 確かに広がり始めていた。


 だが――


 火が広がるとき、

 必ず煙も立つ。


 それに気づくのは、

 もう少し後のことだった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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