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喫茶厨房本能寺 ―織田信長、感情のままに喫茶店を運営中―  作者: 本能寺
第四章 黄金の輝きと復興

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第29話「積層する光と、黄金の芽吹き」


第29話「積層する光と、黄金の芽吹き」



『人生の節目を祝う特別食堂』として、本能寺が「特別な日」に特化した営業を始めてから数ヶ月が経過した。


「よし……! お食い初め、結納、退職祝い、就職祝い……数々のお祝いの席を重ね、本能寺の再建資金、順調に積み上がっております!」


光秀が帳簿を閉じ、満足げに深い吐息をついた。


「手作業の良さを活かした高単価の特別コースと、あの『黄金茶室』の評判が完全に定着いたしました。いまや清須のみならず、近隣の市町村からも『人生の節目にはぜひ本能寺で』という予約の問い合わせが入るようになりましたよ!」


「ガハハハ! 順調なら結構なことだ!」


信長が缶ビールをあおりながら豪快に笑う。その横では、秀吉がどこかソワソワとした様子で自分のスマートフォンを眺めていた。


「……羽柴殿。先ほどから画面をチラチラ見て、どうかしましたか?」


「あ、いや……今日、このあと仕事が終わったら、寧々ちゃんと新しく出来た喫茶店へ遊びに行く約束をしておりまして……」


秀吉は気恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべた。


あの日、恋人としての関係には一度区切りをつけた二人だった。しかし、己の生き方を見つけた秀吉と、一人の人間として彼を認めた寧々は、今では互いの健やかな歩みを応援し合い、休日に普通に遊びへ出かけるような、心地よい距離感の友人関係を築いていたのだ。


「……フン、己の足で立ち上がった男の顔になったじゃねえか」


信長がニヤリと笑う。そして厨房の奥に向かい、パイプの煙をくゆらせている技術顧問・松永久秀を振り返った。


「で、久秀。頼んでいた『アレ』の進捗はどうだ?」


「クックック……順調でございますよ、織田社長」


久秀は黒漆塗りの怪しげな追加ユニットを弄りながら煙を吐いた。


「旧式の感情エネルギー技術を用いた『黄金茶室』……元々は部屋全体を一律に黄金色へ染め上げるだけの装置でした。ですが、照射範囲を細かく絞り込む制御機構を追加いたしました」


「ほほう?」光秀が眼鏡の奥の目を光らせる。


「これにより、室内に存在する『特定の物体だけ』を選択的に黄金色に輝かせることが可能となります。例えば――結納の品々や祝いのケーキ、さらには今後の通常営業再開を見据え、名物のソフトクリームだけを黄金色に光らせる……といった芸当も自在」


さらに久秀は、窓の外をパイプで指し示した。


「それだけではありません。店外や店内に吊るした提灯や照明器具のみをピンポイントで輝かせ、店内外のライトアップ演出に転用することも可能。客の純粋な【喜び】そのものを、様々な形として可視化する技術……名付けて『黄金発光チューニング』でございます」


「つまり……もう『黄金茶室』は、あの個室だけの設備じゃないってことですな!」


光秀が目を輝かせると、信長もギラギラと目を輝かせ、拳を強く握りしめた。


「客が心から喜んだ時、その喜びが祝いの品や店全体の灯りとなって弾けるか! 面白え!」


信長は豪快に笑い飛ばした。



挿絵(By みてみん)



「一組ごとの客と丁寧に向き合い、利益を積み上げる『特別な日戦略』は完璧に軌道に乗った。資金も、技術も、俺たちの腕も……着実に次の一手へ向けて仕上がってきているぞ!」


「はい! 俺も、もっともっとたくさんのお客さんを喜ばせて、この店を最高の場所にしてみせますわ!」


秀吉もまた、晴れやかな笑顔で強く頷いた。


一皿一皿の利益と、確かな客の喜びを積み重ねながら、本能寺は更なる進化を遂げようとしていた。


失われた設備を取り戻し、新たな厨房設備『楽市楽座』の開発、そして食による天下統一『天下不武』へ向けて――復興の灯火は、より一層強く、眩く輝きを増していく。


そして物語は、次なる深遠な「人生のドラマ」へと向かっていくのだった。


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