冬の訪れ
雪降りました。
冬がやってまいりました。
北海道的なサラサラな雪ではなく、もふもふとしてて、湿った重い感じの雪です←
●12月初日
十二月になって数分経った頃。
ぎりぎり十一月に放送していた天気予報で、真夜中零時を過ぎると冬将軍がやって来るのでご注意をと言っていたので、夜中冷え込むのだと思っていた。
その割にはあまり冷え込んではいないなぁと思いながら、日付が変わる時刻を鐘で知らせている柱時計の音をなんともなしに聞きつつ寝室へと向かう。
途中、先日美人さんとの会話をしていた窓の前を通ったので、何となく窓の外を見てしまう。
そして目に入った光景に固まる私。
つい数時間前まで、そろそろ秋が終わるかなと思わせていたはずの外は──真っ白な雪化粧に覆われて、真冬の雪景色へと見事な変貌を遂げていた。
「へ?」
目の前の光景が信じられなくて思わず間の抜けた声が洩れる。
そういえばちらっと雪が降るという予報を見た気もするけれど、この時期の雪が降る予報なんてせいぜいチラつくぐらいか、山の上の方で降るぐらいの話で。
例え早めに降ったとしても、一晩かけて薄っすら真っ白ぐらいの話だ。
まさかこんなゲームみたいに、十二月になりました! って瞬間から見事な雪景色になるとは……。
異世界パねぇなと心の内で妙なキャラが呟いているのを聞きながら、窓へ近寄って順調に雪へ覆われていく外を眺める。
「お隣さんの言う通り、早めに冬タイヤに替えといて良かった……」
安堵の呟きを洩らしながら、こうなるってわかってたからお隣のご夫婦はあれだけ強く十一月の内にタイヤを替えなさいって言ってくれてたんだなぁと納得する。
お隣のご夫婦もまさか私が「雪なんていつから降るかわからないですよー」みたいな感じでいるとは思うまい。
私もこんな、十二月なり! って勢いで雪が降るとは思わなかったから、人様の事は言えないけど。
「……冬の間、毎日こんな勢いで降るのかな」
少々不安を覚えたが、積雪量に関しては特に不安を感じるような事は言われてないから、ある程度溜まるとピタッと止むのかもしれない。
それこそもともと降る量が決まっていたみたいに。
考え込む間にも積雪は増えていき、見るからにふわふわな白い雪になんだかちょっとうずうずしてきてしまう。
雪国生まれの雪国育ちで雪の大変さはもちろん嫌というほど身に沁みてわかっているが、ふわふわの雪が楽しみな子供心がついわっしょいわっしょいしてしまうの仕方ないよね。
この子供心は初雪限定だけど。
たぶんしばらくすると「また雪掻きかーっ!」と叫んでいると思う。
降りしきる雪を見ながら現金過ぎる自分の心の内にくすくすと笑っていた私の目に、雪の白と空の灰色に染まる世界の中の異物が映る。
「……ん? あれ、なに? スカイフィッシュ? 一反木綿? 無難に未確認飛行物体系?」
ちらちらと視界に映り込むナニカに、まるで飛蚊症にでもなった気分だがどうやら本当に何か飛び回っていた。
異世界なのでどれが飛んでいてもおかしくないが、どうやら飛び回っているモノはどれとも違うらしい。
ちなみにだが、一番身近な空を飛ぶ異世界生物であるハーピーさんからは「ソトサムイ、ヨルクライ、トバナイ」と聞いてたので、同族な他のハーピーも飛んでいないと思われるので候補から外してある。
「……あ、見ている事気付かれたらヤバいお相手かな?」
まじまじと飛び回っている相手を見ていた私だったが、つい先日も赤い月の件で色々注意された事を思い出して窓から目を離そうとした。
──しかし。
一瞬どころかかなり遅かったようだ。
「うむ? このような夜に外を見ている者がおるか」
飛び回っていたナニカがあっという間に距離を詰めてきて、逃げ隠れする間もなく窓から覗き込んで話しかけられてしまってます……。
それは……鎧を着たとても大きな武者だった。
その顔だけで窓を埋め尽くし、ぎょろりとした目が驚きをはらんで見張られ、じっと射るように私を見ている。
黒々とした立派な髭もお持ちなのだが、目力のせいであまりそちらを見ている余裕はない。
「……美しい初雪に見惚れておりました」
ひとまず、この武者様は美人さん側の存在だなと判断して、無礼にならない程度の距離感の答えを模索して、何処の詩人だよという突っ込みを入れたくなる一言を何とか口にする。
私の言葉を聞いた武者様はぎょろりとした目をさらにカッと見開く。
その反応に、これは対応をまずったかと身構えた私は、ついに美人さんの名前を呼ぶ時が! と気合を入れて息を吸い込む。
「う「かっかっか! 初雪に見惚れていたとな! 見込みがある人間よのう! わしが降らせた雪は美しかろう?」……え」
呼びかけた名前は武者様の豪快な笑い声に掻き消されてしまった。
リアクションに時間差があっただけで、ご不興を買った訳ではなかったらしい。
なんだったら上機嫌なご様子だ。
かなり大きな武者様が、その体を揺らすほどに笑っていらっしゃるが、不思議と我が家や周辺に影響はない。
笑い声も響き渡っていると思うのだが、誰かが外へ出てきたり、通報されたりした様子もない。
やはりこの武者様は相当な大物かもしれない。
引きつり気味の愛想笑いをしながら、この後どうしようかと悩む。
お茶かお酒でもお出ししてもてなすべきだろうか。
なんて考えを巡らせていると遠くから、
「いらっしゃったぞー!」
という声が近づいて来て、ガヤガヤと近づいて来る人影が複数。
武者様よりは小柄だが、それでも普通の人より明らかに大きな…………これは、アシ◯ール……じゃなくて、足軽かな? あの漫画で見たような格好をしているし。
「もう来おったか。風流のわかる人間よ、わしが降らせた雪を存分に楽しむがいい」
そう言ってニヤリと笑った武者様は、集まって来た足軽達を連れて白へと染まりつつある夜の闇へと消えていく。
「あ、はい。ありがとう、ございます」
遠ざかる背中へ感謝を告げて頭を下げた私は、ふとあの武者様の正体かもという固有名詞を思い出す。
「あれって、冬将軍だったりして?」
いやまさかそんな、ねえ? みたいな感じで打ち消したが、結局それが正解だった事を私が知るのは数日後のことだ。
いつもありがとうございますm(_ _)m
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珍しく察しの良かった主人公です(๑•̀ㅂ•́)و
まさかのリアル冬将軍の来訪でした。
しろきつね様を再び出す前に、冬将軍やって来ちゃいました。




