峰川空襲
この小説は今回が今年最後です。
本年もありがとうございました。
1941年11月16日午前11時
大日本帝國帝都大阪都帝居東一の間
クレタ島陥落により、御前会議が開かれた。
「それでは御前会議を始めます。」
野中宮内大臣の言葉に、紗耶香女帝陛下を除き気を引き締めた。
「それでは総理、状況報告を。」
「それでは報告させて頂きます。クレタ島ですが……」
東久邇宮総理が立ち上がり話をしようとした時、紗耶香女帝陛下が口を開いた。
「安藤内務大臣。日本警備安全保障株式会社の業務拡大要請だが。」
「は、はい!!」
突然の御言葉に安藤内務大臣は飛び上がった。
「内務省としてどうする。」
「な、内務省としましては、御前会議と閣議での業務拡大要請を了承して頂きました後に、警備局長を通じ要請する予定でありゎぁす!!」
慌てて話した事により語尾を噛んだ安藤内務大臣だが、その事に笑みを浮かべ空気が緩む事は無かった。ただでさえ大日本帝國建国史上初の領土の陥落である。御前会議に出席する誰もが緊張を隠しきれずに参加している。その空気を察して紗耶香女帝陛下は話題を変えたが、効果は今一つであった。
「野中宮内大臣、その件に関する採択を。」
「了解致しました。それでは日本警備安全保障株式会社への業務拡大要請について採択致します。賛成の方は挙手をお願いします。」
野中宮内大臣の言葉に閣僚達は全員手を挙げた。
「賛成、全会一致で日本警備安全保障株式会社への拡大要請は承認されました。陛下、御許可を御願いします。」
「許可する。」
「天命が下りました。」
野中宮内大臣の言葉に、閣僚達は全員立ち上がり紗耶香女帝陛下に頭を下げた。それを受け紗耶香女帝陛下は口を開いた。
「必ずこの戦争に勝利せよ。」
「御意。」
閣僚達は口を揃えて答えた。
1941年12月2日午後4時
太平洋サンフランシスコ沖1860キロ地点第2艦隊旗艦超弩級戦艦山城戦闘指揮室
「何とか今は作戦通りですね。」
参謀長中野優里少将の言葉に、司令官大森知香恵中将は大きく頷いた。
「アメリカ軍の警戒網には十分に注意しないといけないわ。国防情報捜査庁の情報によると、アメリカ軍は沿岸警備隊だけ無く、漁船を徴用して警戒させているらしいわ。」
「成る程。敵も必死ですね。」
「警戒を怠る事は許されないから。」
大森司令官はそう言った。
「敵の本土に向かっていますからね。」
「まさか本土に陸上爆撃機で爆撃されるとは思っていないからね。」
「爆撃を受けた時のアメリカの反応が楽しみですね。何処から出撃したか悩むでしょう。何せ可無着加県からじゃ無く、西から来ますからね。」
中野参謀長が笑いながら言った。大森司令官も笑顔を見せながら湯呑みのお茶を飲んだ。
「参謀長、少し艦内を見回ってくるわ。」
「了解しました。」
大森司令官は戦闘指揮室を出ていった。
同時刻
第2艦隊第2航空戦隊正規空母皇鳳飛行甲板
峰川麗香中佐の周囲に人だかりが出来ていた。
「中佐、何を着けているんですか?」
第1爆撃隊隊長川江奈美子中尉が代表して訪ねた。
「これは1933年にワシントンで行われたアメリカ合衆国独立150周年記念式典で、駐米海軍武官補佐官の小保方洋子元中尉が貰った記念章よ。是非とも返してほしい、と言われたから取り付けているの。」
「成る程。確かに良い機会ですからね。」
川江中尉はそう言うと笑顔を見せた。峰川中佐も笑顔を見せると、記念章を爆弾に取り付けた。取り付け終わると峰川中佐は部下達を見回した。
「さて皆、これで準備が出来たわ。いよいよアメリカ合衆国への本土に攻撃を仕掛けるわ。これは歴史的よ。未だに大日本帝國とアメリカ合衆国は本土に攻撃を受けた事が無い国よ。それを唯一大日本帝國だけにし、アメリカ合衆国を攻撃する名誉に輝くの。絶対に失敗出来ないわ。これを乗り越えた先には、大日本帝國の大いなる反撃が待っているわ。絶対に成功させるように。以上!!」
峰川中佐の言葉に部下達は歓声をあげた。
それから10時間後の午前2時。草木も眠る丑三つ時、第2艦隊に緊張がはしった。
午前2時
第2艦隊旗艦超弩級戦艦山城戦闘指揮室
10時間前より380キロ進んだ1480キロ地点、山城に緊急無線が入った。
「艦長。第5水雷戦隊駆逐艦舞風より無線です。『本艦水上電探に方位28度地点(大日本帝國海軍連合艦隊は艦首を方位0度としている)に光点2を確認。至急対処する必要あり。』以上です。」
通信員にそう言われ山城艦長村中高絵大佐は顔をしかめた。
「敵ね。参謀長、敵に見付かった可能性があります。」
「分かったわ。司令官を呼ぶわ。」
中野参謀長は村中艦長の言葉にそう答えると、艦内電話に飛び付いた。
2分後。大森司令官が走って戦闘指揮室に飛び込んできた。
「見付かった?」
「はい。舞風より緊急無線が入りました。舞風の水上電探が光点を2つ確認しました。」
それを聞いた大森司令官は顔をしかめた。
「艦長、どう思う?」
「アメリカ軍が水上電探を実用化していないと国防情報捜査庁は結論付けてましたが、完全に実用化していないと決めつけるのは危ないと思います。ここは見付かった、との前提で進めるのが得策かと。」
「そうね。参謀長、私の名前で紗耶姉に索敵の為戦闘機の出撃を要請して。」
「了解しました。」
中野参謀長はそう言うと再び艦内電話に飛び付いた。
1分後
第1艦隊旗艦超々弩級戦艦大和戦闘指揮室
通信員が唐突に画面から目を離すと、上戸司令官に通信を伝え始めた。
「司令官。大森司令官より要請です。『当艦隊第5水雷戦隊が方位28度地点に光点2個を確認。貴艦隊より索敵及び攻撃の為、戦闘機の出撃を要請す。』以上です。」
「参謀長、見付かったわね。」
上戸司令官は通信員から話を聞くと天海参謀長に呟いた。
「可能性は大きいですね。」
「対処は早い方が良いわ。至急第1航空戦隊に命令。『緊急出撃体制の九六式を出撃させよ』よ。」
「了解しました。」
天海参謀長はそう言うと艦内電話に飛び付いた。
上戸司令官の命令により第1航空戦隊から蒸気カタパルトに緊急出撃体制にあった九六式艦上戦闘機が2機出撃した。




