地上の飛行甲板
1941年11月11日午前11時
大日本帝國帝都大阪都八尾市八尾空軍基地第3滑走路
「何とか様になってきたわね。」
峰川中佐はそう言うと笑顔を見せた。大鳳級飛行甲板275メートルの幅を第3滑走路に描いて練習したが、開始当初は峰川中佐しか飛び立てなかった。他は全て飛行甲板を通り過ぎてから離陸したのである。事態を重く見た峰川中佐は一式爆撃機の軽量化に取り掛かる。13ミリ機銃を12門全て撤去する機体と、爆弾を搭載しない機体に分けたのである。これにより軽量化が図られ、全機飛行甲板の範囲内で離陸が可能となった。当初予定より爆撃する機体は減ったが、爆撃用と護衛用に分ける事により作戦の成功確率を高めたのである。
「見事ね、中佐。」
「司令官、提督まで。」
第1航空軍司令官小森聡子中将の声に峰川中佐は振り向き驚いた。第1艦隊司令官上戸紗耶香中将と第2艦隊司令官大森知香恵中将が小森司令官の後ろに立っていた。
「中佐、作戦の詳細が決まったわ。中佐の部隊は大森司令官の艦隊の空母に乗り込むわ。」
「宜しく、峰川中佐。」
大森司令官はそう言うと峰川中佐に手を差し出した。それに慌てて峰川中佐は手を差し出した。
「こちらこそ宜しくお願いします。」
「そして上戸司令官の艦隊が大森司令官の艦隊を護衛するわ。何せ大森司令官の空母は中佐の部隊を飛行甲板に乗せるから、艦載機を発進出来ないからね。」
「そう言う事よ、中佐。知香恵の艦隊と中佐の部隊は私が守るから、アメ公を1人でも多く殺しなさいよ!!」
「りょ、了解しました。」
「声が小さい!!」
「了解しました!!」
「いい声ね。」
上戸司令官は笑顔を見せた。困惑する峰川中佐に大森司令官が耳打ちした。
「紗耶姉はあの性格だからあまり気にしない方が良いわ。」
「分かりました。」
峰川中佐は小さく頷いた。
「何をコソコソ話してるの!!小森司令官、早く全員を集めて。会議よ!!」
そう言うと上戸司令官は司令部に行ってしまった。
「大森司令官、凄い従姉妹ですね。」
「もう紗耶姉には馴れましたよ。」
小森司令官の言葉に、大森司令官は笑いながら答えた。
司令部3階第1会議室
「それでは会議を始める。今回はアメリカ本土空襲作戦の詳細に付いて話し合う。その為海軍から第1艦隊司令官上戸紗耶香中将、参謀長天海仁美少将。第2艦隊司令官大森知香恵中将、参謀長中野優里少将にお越し頂いたわ。この作戦は現在の戦況を打開する切っ掛けになるかもしれない、重要なものになってくるわ。空軍と海軍が協力して、アメリカ本土を爆撃する。必ず成功させるように。それでは上戸司令官。御挨拶を。」
小森司令官の言葉に上戸司令官は大きく頷くと立ち上がった。
「よし皆、私が上戸よ。皆も知っての通り、今回の作戦は重大よ。アメリカ本土を爆撃する。絶対に失敗しないように!!アメ公を殺して、殺して、殺して、殺すのよ!!失敗したら私が貴女達を殺すわ!!」
そう言うと上戸司令官は腰に下げていた軍刀を抜いた。それを見て会議室は静まり返った。上戸司令官は正装で無い時も軍刀を下げている事で有名である。
上戸司令官の行動に大森司令官が傍に駆け寄った。
「紗耶姉、落ち着いて。皆、怖がってるわ。」
「……後は頼むわ。」
上戸司令官は大森司令官の言葉に、軍刀を鞘に納めると席に着いた。そして大森司令官が次に口を開いた。
「皆さんお騒がせしました。私が大森知香恵です。今回の作戦では私の艦隊の空母に皆さんは乗ってもらいます。」
大森司令官の言葉に、搭乗員達は一様に安堵の表情を見せた。
「そして私の空母に乗ってもらいますので、艦載機が飛ばせません。そこで紗耶姉に艦隊の護衛を頼みます。紗耶姉は護衛が主任務になり、皆さんを目的地に御届けするのが私の主任務になります。」
「そう言う事になる。皆、明日からは早速空母に乗っての訓練になるわ。気を引き締めて訓練を行うように。」
小森司令官が全員に言い聞かせた。
同時刻
クレタ島イラクリオン地中海軍総司令部
「総司令官、もはやこれまでです。金村司令官も戦死され、陸上兵力は壊滅的です。早急に撤退の御命令を!!」
「……」
地中海航空団司令官上村多香子中将の言葉に、地中海軍総司令官高梨真喜枝大将は腕を組んだ。上村司令官の言う通り地中海方面軍司令官金村美紀枝司令官は自ら戦車隊を率い戦死した。地中海艦隊司令長官麻倉由紀恵中将は地中海艦隊(第3艦隊)旗艦超弩級戦艦金剛に座乗している。地中海騎兵軍団司令官倉田日奈子中将も自ら騎兵隊を率い今も戦っている。だが陸軍や騎兵隊の奮戦虚しく、情勢は圧倒的に不利であった。そして現状地中海艦隊が何とか制海権を有している間に完全撤退する事を上戸司令官は進言したのである。
「今なら間に合います。ここで死ぬよりも一時の屈辱を絶え、反撃の機会を待ちましょう。」
「陛下に申し訳ない。」
高梨総司令官はそう言って立ち上がると、帝居のある東を向くと深々と頭を下げた。上戸司令官も高梨総司令官に倣った。3分以上頭を下げ続けた高梨総司令官は頭を上げると呟いた。
「クレタ島を放棄する。」
ここに地中海の情勢は更に連合国に不利となった。
『I.shall.return~私は必ず戻る~
第二神聖ローマ帝国領リビアの港湾都市トブルクに撤退した大日本帝國軍地中海軍は、被害を最小限に抑え撤退を完遂させた。地中海軍はクレタ島に上陸して来た枢軸軍相手に善戦した。陸軍の奮戦は目覚ましく、陸軍地中海方面軍金村司令官が戦死。この戦いはクレタ島に駐留する大日本帝國軍にとって負けられない戦いであった。しかしその奮戦虚しく、枢軸軍に流石の大日本帝國軍も押された。陸軍は壊滅、騎兵隊も総司令部を防衛するしか無くなった所で高梨総司令官はクレタ島の放棄を決定した。その決断により陸軍と騎兵隊の生き残りは海軍の艦艇と空軍の輸送機に乗り、一路トブルクに撤退したのである。トブルクは大日本帝國の支援を受け北アフリカ沿岸ではポートサイドに次ぐ規模となっており、大日本帝國軍が撤退する地点には好条件であった。ポートサイドで無かったのはトブルクが近かったからである。そのトブルクで高梨総司令官は記者達の取材を受けた。数々の質問に答えた最後に高梨総司令官はこう呟いた。[私は必ず戻る]大日本帝國軍の反撃を待ちたい。』
1941年11月14日付
『ロンドンタイムス』より抜粋




