↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無自覚【神匠】鍛冶師、勇者の聖剣が実は呪われた魔剣だったのでへし折ってしまう  作者: 物語あにま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/6

第5話 【神匠】鍛冶師は勇者を救い出すことにした

 勇者の聖剣をへし折った翌日。


 ガルドはいつものように、朝食を片手に新聞を広げていた。


 王都の事件や商会の広告、遠方から届いた珍しい素材の情報。鍛冶師にとって新聞は、なかなか有益な情報源なのだ。


 そんな何気ない朝のひとときだった。


「……ん?」


 ガルドの手が止まった。


 新聞の見出しに、見覚えのある少女の顔が大きく掲載されていた。


『勇者シャルロット投獄! 聖剣を破壊し、魔王討伐を偽る!?』


「は?」


 思わず声が漏れた。


 記事を読み進めるにつれ、ガルドの顔から血の気が引いていく。


 勇者シャルロットが王城にて王に魔王討伐の件で謁見。聖剣の破損を理由に魔王討伐の功績を疑われたこと。そして、王命によって投獄されたことが詳細に記されていた。


「な、なんでシャルロットさんが……!?」


 ガルドは新聞を握りしめた。


 昨日、彼女が持ち込んだ聖剣をへし折ったのは、紛れもなくガルド自身だ。


 あのときは呪われた魔剣を処分しただけのつもりだった。


 しかし、新聞の記事を読む限り、どうやらあの剣は本当に聖剣だったらしい。


「うわぁ……僕やらかしちゃった……!」


 今さらながら、自分のやらかしの重大さに気づく。


 もちろん、呪いを見抜き、聖剣をへし折ったことに後悔はない。


 実際、それでシャルロットは喜んでくれたのだから。


 だが、それが理由でシャルロットが投獄されるのは話が違う。


「僕のせいでシャルロット様が……」


 ガルドは頭を抱えた。


 記事には、彼女が聖剣を破壊した経緯について一切触れられていない。


 シャルロットは【神匠】の鍛冶師であるガルドを庇ってくれたのだろう。


 これほどの大事を引き起こした鍛冶師がいると知れれば、王国は目の色を変えて探し始めるはずだ。


 シャルロットはそれを良しとしなかった。


 平和、平穏が一番と考えているガルドのことを想い、黙っていてくれたに違いない。


「……下手すると、死刑になるかもしれない」


 その可能性に思い至った瞬間、ガルドは椅子から立ち上がっていた。


 居ても立ってもいられなかった。


 自分のせいで勇者が命を落とすなど、絶対にあってはならない。


「僕が、僕が助けなきゃ……!」


 しかし、どうすればいい?


 相手は王国だ。いくら腕の立つ鍛冶師といえど、真正面から乗り込んでも理由をつけて拘束されてしまいそうだ。


 ガルドはしばらく考え込んでいたが、ふと何かを思い出したように顔を上げた。


「……そうだ!」


 工房の奥にある物置には、長年放置していた品々が眠っている。


「昔作ったお蔵入り装備が、たくさんあるじゃないか!」


 ガルドは勢いよく物置へ駆け込んだ。


 そこに並んでいるのは、彼が鍛冶師としての探究心を満たすためだけに作り上げた、試作品の数々だった。


 神と悪魔の力を宿した聖魔の剣。


 身に着けた者の身体能力を飛躍的に高める魔法の防具。


 使用者の存在を消し去る隠形マント。


 さらには、空間を跳躍する靴やあらゆる魔法を弾き返す盾まで。


「懐かしいな〜!」


 ガルドは次々と装備を手に取っていく。


 どれもこれも、完成した当時は自信作だった。


 しかし、いざ売りに出そうと考えたところで、ふと我に返ったのだ。


 こんなものを一般の冒険者に売ってしまっていいのだろうか、と。


 剣を一振りしただけで山が割れ、防具を着ければ竜のブレスすら無傷で耐え、マントを羽織れば誰にも気づかれなくなる。


 いくらなんでも、性能が過剰すぎた。


 結局、どれもこれもお蔵入りとなり、物置の山の一部となったわけである。


「もう一生使うことはないと思ってたけど、役に立ちそうでよかった!」


 ガルドは満面の笑みを浮かべた。


 目の前に並ぶ装備は、どれも勇者救出の助けになるだろう。


 まあ過剰な力かもしれないが。


 大は小を兼ねるとも言うし、問題ないだろう。 


 なにより恩人を救うためなら、出し惜しみなどしていられなかった。


「よーし! 勇者様をお助けするぞ!」


 ガルドは装備を次々と身に着けていく。


 聖魔の剣を腰に下げ、魔法の防具を身にまとい、隠形マントを肩に掛ける。


 その姿は、もはや一介の鍛冶師とは到底思えない。


 どこぞの国の英雄か。


 あるいは、魔王を滅ぼすために遣わされた神の使徒か。


 そんな規格外の装備を身にまとった男が、工房の扉を勢いよく開いた。


「待っていてください、シャルロット様! 必ず助け出しますから!」


 こうして、王都一の鍛冶師【神匠】ガルドが動き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。