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無自覚【神匠】鍛冶師、勇者の聖剣が実は呪われた魔剣だったのでへし折ってしまう  作者: 物語あにま


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第4話 腹黒の王とクズ王子が暗躍するようです

 玉座に腰掛ける国王の前で、勇者シャルロットは恭しく膝をついていた。


 その場には王族や貴族、騎士団の幹部たちが集められている。


 彼らの視線は、ただ一人の少女、勇者シャルロットに注がれていた。


「勇者シャルロットよ。魔王バルサを討ったというのは誠か?」


 国王の問いかけに、謁見の間がにわかにざわつく。


 魔王討伐は人類にとっての悲願であった。


「はい、陛下。魔王の気配は、この世界のどこにも感じられません」


 シャルロットは静かに答えた。


 勇者としての力を通じて、彼女は確かに感じ取っていた。


 魔王バルサの消滅を。


 その言葉に、居並ぶ者たちから歓声と安堵が上がる。


 しかし、一人だけ顔色を失っている男がいた。


 王国の宰相である。


 彼は魔王軍のスパイとして宰相を殺し入れ替わった偽物、変身が得意な魔族であった。


 勇者の言葉を聞いた宰相は、信じられないといった表情で震えていた。


(ば、馬鹿な……! 魔王様が……!?)


 宰相の動揺に気づく者はいなかった。


「ならば勇者よ。聖剣は返してもらおう」


「それが、その……」


「何を口ごもっておる? その腰に下げた聖剣を返せばよいのだ」


「いえ、あのー……」


 シャルロットは困ったように視線を泳がせたあと、聖剣を鞘から引き抜いた。


「聖剣は魔王を討ったときに真っ二つに折れてしまいました」


「はぁーーーーーーーー!?」


 国王の絶叫が謁見の間に響き渡り、玉座からずり落ちる。


「へ、陛下ぁぁぁぁ!? お気を確かに!」


 慌てて駆け寄る近衛騎士たち。


 王族や貴族たちも騒然となり、王の間はたちまち混乱に包まれた。


 一方で、宰相は別の意味で愕然としていた。


(聖剣に……呪いの痕跡が、まったく残っていない……!?)


 魔王バルサが仕掛けた呪いは、聖剣の力を通じて、勇者を弱体化させるためのものだった。


 それが跡形もなく消え去っている。


 つまり魔王バルサは、本当に死んだのだ。


(そ、そんな……魔王様ぁぁぁぁぁ!!)


 宰相はその場に崩れ落ちた。


「宰相殿まで!?」


「聖剣が折れたことが、そこまでの衝撃だったとは……!」


 周囲の者たちは、宰相の心中など知る由もない。


 彼らはただ、聖剣の喪失に絶望したのだと思い込んでいた。


「まあまあ、陛下」


 王の間が騒然とする中、場違いなほど軽薄な声が響いた。


「魔王が討たれたのなら、聖剣の一つや二つ、なくなろうとも些末なことではありませんか」


「……王子」


 シャルロットは顔を上げた。


 そこにいたのは、王国の第一王子であった。


 以前からシャルロットにしつこく求婚している困った男だ。


 彼女にとっては下手に権力を持っていて、かつ諦めが悪くしつこい、という頭の痛い存在である。


 王子は悠然と歩み寄ると、シャルロットの前でキザったらしく片膝をついた。


「美しき勇者シャルロット。今こそ、私との婚儀を真剣に考えては——」


「お断りいたします」


 即答だった。


「私はあなたと共に生きるつもりはありません」


「ぐ…………!」


 王子の顔が引きつる。


 大勢の貴族たちの前でプライドをズタズタにされたからだろう。


 表情から余裕が消え、やがて怒りに歪んでいった。


「へ、陛下! この者は勇者を騙るニセモノに違いありません!」


「なっ……!?」


「でなければ、神鉄を鍛え上げた聖剣が折れるなどありえません! 魔王を討ったというのも大嘘に決まっておりましょう!」


 王子の言葉に、謁見の間が静まり返った。


 国王はしばし考え込むように顎を撫でる。


 まずい、とシャルロットが冷や汗をかく。


「ふぅむ……王子の言うことも最もだな」


 ニヤリ、と王がヒゲの下で笑う。


 魔王がいなくなったことを王は確信しているのだ。


 その上で扱いに困る勇者を都合よく消そうとしている。


 シャルロットはハメられた事に気づいた。


「陛下!?」


「その者を捕らえい!」


「お待ちください! 私は本当に——」


 シャルロットは抗議の声を上げたが、その言葉は続かなかった。


 真実を話せば、ガルドの存在が明るみに出てしまう。


 聖剣を叩き折った鍛冶師。


 神の力すら宿す《神匠》のスキルを持つ男。


 恩人でもあるガルドの存在を、この場で明かすわけにはいかなかった。


「……っ」


 シャルロットは唇を噛み、俯いた。


 近衛騎士たちが彼女を取り囲む。


「勇者シャルロット。王命により、貴殿を拘束する!」


「…………」


 シャルロットは、今度は抵抗しなかった。


 こうして、魔王を討ち人類を救ったはずの勇者は、【勇者】を騙った大罪人として投獄されることとなった。


 その知らせはその日のうちに王都中へと触れ回ることになる。


 ——勇者シャルロット、聖剣を破壊し、魔王討伐を偽った罪により投獄。


 当然、その悲報は聖剣をへし折った張本人、【神匠】ガルドにも届くことになる。

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