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【第09話】新たな仲間?


トトラド村から逃げ出した一行は、山を下った先にある街──キーリカへとたどり着いた。

このキーリカは、大陸の中でも比較的大きな都市のひとつである。


宿屋に二部屋を取り、そのうちの一部屋に全員が集まっていた。


「お前ら……なんか、知ってただろ?」


レイがユイとカイルを睨みつける。


「知らねぇよ。あんなとこに村があるなんて、俺だって聞いたことない」


「ユイ、お前は?」


「私も同じです」


「嘘をつくな。俺は行き先を誰にも話してない。なぜ知ってた?」


「レイ様の行き先を占っただけです。そこに何があるかまでは──」


「随分と都合のいい占いだな?」


「やめなさいよ。ユイちゃんの魔法のおかげで逃げられたのよ」


「その魔法も怪しいんだよ。あんな規模の魔法、一人の子供が使えるもんじゃない。十人がかりの魔術師でも難しいレベルだ」


「無我夢中で……私にも、よくわかりません」


「ユイちゃんばかり責めるのやめなさいよ! あんたがあんな村に行かなければ──」


「俺一人なら問題なかった。だから“ついてくるな”って言ったんだ」


たしかに、自分が元の体であったなら、逃げきるどころか、殲滅すらできただろう。

だが、今の自分には無理だ──と、カイルは内心で呟いた。


「それに、怪しい奴ら二人とも逃がしてるじゃない。まさか村人いじめて楽しんでたわけ?」


「……お前らが足を引っ張らなければ、一人はやれていた。魔王教だか何だか知らないが──」


「魔王教? 面白そうな話をしてるね、君たち?」


部屋の戸口に、眼鏡をかけた男が立っていた。帽子に黄土色の髪。どこか学者然とした雰囲気だ。


「なんだ貴様、盗み聞きか? ……刺客か?」


レイが剣に手をかける。


「この安宿で、防音の魔法もなしに大声で騒げば、そりゃあ聞こえるだろうさ。周りに誰もいないからって油断しちゃいけないよ?」


「チッ……」


「よかったら、もう少し詳しく聞かせてくれないか。君たちの力になれるかもしれない」


「怪しいなあ……」


カイルがぼやく。


「まあまあ。じゃあこっちから話させてもらおう。君たち、“トトラド草”って知ってる?」


男は勝手に腰を下ろして語り始めた。


「ハイランド高原で取れる薬草よね。あの村でも育ててたわ」


「そう。何に使われるか、知ってるかい?」


「麻薬……みたいなもんだろ? 昔、それを広めようとした組織を潰したことがある」


鼻高々に語るカイルに、リズが即ツッコミを入れる。


「……あんたにそんなことできるわけないでしょ」


「単体ではちょっと眠くなるぐらいの草さ。眠剤にせいぜい使われるぐらいかな」


「あれえ?」


「で、それがなんだってんだ?」


「あるとき、その草と魔法を組み合わせると、面白い効果が出ることがわかってね。意識を飛ばして、まるごと操れる。煎じて香料にすれば、洗脳のオンオフも簡単だ」


「は?」


全員が固まる。


「つまりあの村にいた人たちは……」


「魔王教の実験だった可能性が高い。たぶん洗脳と操りのテストだね」


「よく知ってんな?」


「……トトラド草にはちょっとした因縁があってね」


「ちょっと?」


ユイが首をかしげた。


「怪しいな……斬るか」


レイが剣に手をかけかけるのを、カイルが慌てて止めた。


「まあ待てよ、慌てんなって」


「トトラド草の効果に早く気づいていたのは、僕以外にもう一人いるんだ。その“もう一人”が魔王教に売り込んだ。今じゃどこの村にも間者がいるって噂だよ」


「じゃあ、あんたはその間者ってこと?」


「正確には、“魔王教の司祭”ってことになってる。肩書だけだよ。多少は奴らへの目くらましになると思ってね」


「やはり斬る!」


「だから落ち着けってば!」


「……目的は?」


「んー……まあ、あいつにひと泡吹かせてやりたい、ってだけさ。軽い嫌がらせみたいなもんだよ」


男の目が、ふと真剣になる。


「ノーランって言うんだ。よかったら、仲間にしてくれないか」


「あらあらまあまあ」


「強引だなぁ……」


カイルとユイが呆れながらつぶやく。


「まあまあ。旅は道連れって言うだろ? お互い助け合おうじゃないか、ね?」


「……勝手にやってろ」


こうして、やたら軽い学者肌の男──ノーランが、一行に加わることになった。


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