表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/89

【第08話】真紅の瞳


「……あれか」


 レイが目を細めた先には、村の中央に立つ柱があった。

 どす黒い染みが浮き、異様な気配を放っている。


 次の瞬間、カイルが駆け出した。


「ちょっと、あんた何するつもり!?」


「蜂と同じさ! 俺が囮になるから、あの柱の周りに集めて魔法で吹っ飛ばしてくれ!」


「無茶よ! やめなさいって!」


「余裕余裕!」


 笑って飛び出したカイルだったが、村人たちは彼を無視した。

 真っ直ぐに別の獲物を求めるように散っていく。


「……あれ? 思ったより効かねぇな」


 焦ったカイルは、今度は柱へ石を投げつけた。


「せめてあれだけでも壊せば――」


 その瞬間。


 鈍い衝撃が後頭部を打ち抜いた。


「……っぐ……!」


 視界がぐにゃりと歪む。

 膝が落ちる。


 何人もの手が体を押さえつけ、身動きが取れなくなった。


「放せ……!」


 無表情の男が近づいてくる。

 その手には、鈍く光る注射器。


 中に満たされた液体を見た瞬間、本能が叫んだ。


(これを打たれたら、終わる……!)


「ヤメロ」


 無機質な声が響いた。


 ユイの声だった。

 だが、ユイの声ではなかった。


 振り向いたカイルは、息を呑む。


 ユイの目が、真紅に染まっていた。


 ぞっとするほど静かな殺意。

 小柄な体から、ありえない圧が放たれる。


 空気が震えた。重力がねじ曲がったような感覚。

 次の瞬間、柱が爆音とともに炸裂した。


 光。熱。爆風。


 カイルを押さえていた村人たちがまとめて吹き飛び、カイル自身も地面を転がる。


「……かはっ……!」


 土と血の味が口に広がる。

 だが、意識は戻った。


「おい、生きてるか」


 すぐ横にレイが駆け寄り、そのままカイルを背負い上げる。


 柱の近くにいた村人たちは、困惑した顔で辺りを見回していた。


「……あれ? おら……何してた……?」


「村が……なんで燃えてる……?」


 正気を取り戻しかけている。

 レイはそれを見て、低く呟いた。


「……操られていただけか」


 少し離れた場所で、ユイが立ち尽くしていた。


 自分の手を見つめたまま、動かない。

 炎の明かりが、その小さな背中だけを静かに照らしている。


「ユイちゃん、大丈夫!? しっかりして!」


 リズが駆け寄って肩を掴む。


 ユイははっと我に返った。


「……大丈夫、です。私は平気です」


 だが声はかすれていた。

 自分に言い聞かせるような、不自然な平静だった。


「とにかく今のうちに引くぞ! 街へ出る道はこっちだ!」


 レイの声で、一行は走り出す。


 背後では、砕けた柱の残骸がまだ煙を上げていた。

 この村で起きたことは終わっていない。むしろ、ここから始まるのだと告げるように。


 真っ直ぐ立ちのぼる煙が、夜空へ細く伸びていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ