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万能勇者、敗北。そして二度目の人生は最弱から  作者: 虚無しお
第2部4章 それぞれの選択
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【第37話】久々の勇者

 カシウスが、険しい表情で口を開いた。


「エミル様と合流できたのはありがたいのですが……」


 一拍置く。


「セントヴェナ、いやイシュタリア側に、この拠点を知られてしまった可能性が高い」


 ざわめきが広がる。


「……もう我らもおしまいではないか」


 誰かが弱々しく呟いた。


「あら」


 アリアが、つまらなそうに周囲を見渡す。


「わざわざ城から出てきてみれば、反乱軍とやらは随分と頼もしいこと」


 皮肉だった。


 一人の兵が睨みつける。


「何かしら?」


 アリアは微笑んだまま言う。


「私を睨めばすべて解決するとでも? あなたたちのやっていることは、セントヴェナへの反逆よ」


 一歩踏み出す。


「私も含めて、全員打ち首ね」


「姉上」


 エミルが静かに制する。


「味方同士で争っている場合ではありません」


「そうは言ってもね」


 アリアは肩をすくめた。


「まったく、人間というものは愚かですねえ」


 その空気を割るように、カイムが口を開いた。


「おいおい」


 カイルが呆れたように言う。


「なんのために私がいると思っているのです?」


 カイムは胸を張る。


「随分な自信ね?」


 アリアが目を細める。


「なんのためかしら?」


「この戦争に勝ちたければ──まず私に服従を誓いなさい」


 一瞬、場が凍りつく。


「違うだろ、まったく」


 カイルがため息をついた。


「俺たちはロマールからの援軍だと考えてくれ」


「なんと……ロマールから」


 カシウスが目を見開く。


「そう。トラヴィスに頼まれてな」


 カイルは軽く肩をすくめた。


「もしセントヴェナを取り戻せたら、一つだけ認めてほしい組織がある」


「何かしら?」


「魔王教って言うんだが──」


「私が女神です。崇め奉りなさい」


 カイムが即座に割り込む。


 アリアがじっとカイムを見つめた。


「それは結構。でも──」


 ゆっくり視線を巡らせる。


「あなたたちのような少人数で、何ができるの?」


「えーと?」


 セレナが指を折る。


「暗殺とか、詐欺とか?」


「薬と爆薬だな」


 クレインが淡々と続ける。


「ぼんずでも、それなりに強い方だと思うぞ」


 ミユキが軽く言う。


 最後に、アリアの視線がカイルへ向いた。


「あなたは?」


 問いが落ちる。


 カイルが口を開こうとした、そのとき――


 違和感。


 視界が、わずかに揺れる。


 自分の目線が、高い。


 体が違う。


 カイムが目を見開いた。


「……レイ」


 エミルが呟く。


「嘘……」


 セレナの声が震えた。


 そこに立っていたのは。


 かつての姿。


 万能勇者――レイ。


「まさか、お前がやったのか、ユイ」


 カイル――いや、レイが低く言う。


「分かりません」


 ユイはあっさり答えた。


「ありえない……」


 カイムが眉をひそめる。


「弱い方がかわいいのに」


「おい」


 レイが即座に突っ込む。


「あなた……まさか、万能勇者」


 アリアが静かに言った。


「イシュタリアに協力していると聞いているけど」


 周囲が一斉に身構える。


「いや、俺はそれとは別で……いや、別でもないのか?」


 レイは頭をかいた。


 その様子を見て、カイムがにやりと笑う。

 瞳がわずかに青く光る。


「聞きなさい!」


 声が響いた。


「イシュタリアにいるのは偽物!」


「彼こそが本物の勇者です!」


「これぞ神の奇跡!」


「私を信じて戦う限り、負けはありません!」


 一瞬の静寂。


 そして。


 歓声が上がった。


 空気が一変する。


 絶望が、希望に塗り替わる。


 ただ一人。


 アリアだけが、怪訝そうにその様子を見ていた。


「……いいのか、これ」


 レイが小さく呟く。


「さあ」


 ユイは淡々と答えた。

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