【第36話】魔王MKⅡ
「あなたへの特別製ですよ、レイ。さあ、行きなさいMKⅡ!」
カイムが楽しそうに指を立てる。
その声と同時に、漆黒の鎧が動き出した。
魔王人形――MKⅡ。
「これは困りましたね」
レイが呟く。
だが、その声はどこか楽しそうだった。
「あんた後で覚えてなさいよ。洗脳とか理由にならないから」
リズが低く言う。
先に動いたのは、レイだった。
刀が閃く。
鋭い斬撃が魔王人形へ走る。
次の瞬間――
同じ斬撃が、返ってきた。
「やはりですか」
レイが軽く笑う。
今度は手を掲げた。
光の魔法。
眩い光弾が放たれる。
だが。
魔王人形の胸部が光った。
――ドンッ!!
レーザーが戦場を薙ぎ払う。
レイは横へ跳んでかわし、間を置かず炎の魔法を放つ。
火球が直撃した。
直後、肩の装甲が開く。
ミサイルが数発、空へ飛び上がった。
「厄介ですね、まったく」
レイはわずかに笑った。
レイは魔王人形を牽制しながら、少しずつ後退していく。
ビームを横に跳んでかわす。
その直後、同じビームがもう一度放たれた。
「おっと危ない」
迫るミサイルに、レイは空中へ飛び上がる。
だが、その軌道を読んだように、さらにミサイルが追いかけてきた。
レイはわざと高度を下げる。
次の瞬間――ミサイルが戦場中央へ落ちた。
轟音。
爆炎。
焦げた匂いが一気に広がり、戦場は完全に混乱した。
「何をしているのですレイ!」
ルナが怒鳴る。
「申し訳ありません!」
そう返しながら、レイはわずかに笑っていた。
「よそ見すんなおらぁ!!」
タケル王が跳び上がった。
凄まじい高さだった。
空中にいるルナへ向け、刀を振り下ろす。
ルナは翼を広げて後退し、同時に魔法を放った。
光の弾が降り注ぐ。
「そんなもん効くか!」
タケル王は空中で体をひねり、地面へ着地する。
その瞬間、矢が飛んだ。
ルナの翼をかすめる。
「……?」
ルナが目を細めた。
「トーシローは飛んでりゃ安全と思ってやがるから困る」
タケル王が笑う。
どこからか矢が飛び、さらに石まで投げつけられる。
魔法を撃てば石がぶつかって相殺される。
やりたい放題だった。
「ほんとに人間かしら、あいつ」
ルナが呟く。
「私こんなの作った覚えないんだけど」
そのとき、轟音がまた戦場に響いた。
魔王人形がレーザーを乱射している。
レイはそれをかわしながら、戦場を縦横無尽に走り回っていた。
ミサイルが降り注ぎ、兵士が吹き飛ぶ。
戦場は、もはやめちゃくちゃだった。
「いつまで遊んでいるつもりですか」
ルナが冷ややかに言う。
「申し訳ありません! この敵が厄介でして……」
ルナが目を細めた。
「あなた、対処法を知っているはずですよね」
「さあ、何のことやら」
レイが肩をすくめる。
その瞬間だった。
魔王人形の標的が変わる。
ルナ。
ミサイルが一斉に飛ぶ。
ビームが翼をかすめた。
ルナの表情が、初めて変わる。
「……興ざめ」
吐き捨てるように言った。
「帰ります」
次の瞬間、イシュタリア軍が一斉に動く。
撤退だった。
ジークもレンの剣を弾いて後退し、レイは煙の中へ姿を消した。
戦場に、ようやく静けさが戻る。
「今回も勝った!」
カイムが胸を張る。
「追い返したはいいけど……」
リズは眉をひそめたまま、何かを考えていた。
「どうしたんだ、リズ」
レンが気づいて声をかける。
リズは少しだけ黙り、それから言う。
「あいつ、斬るときに私に言ったのよ」
「何を?」
リズは小さく息を吐いた。
「……よけろよ、って」
誰も、すぐには言葉を返せなかった。
そして――
誰も気づいていなかった。
ゼノの姿が、いつの間にか戦場から消えていたことに。




