表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/41

【第07話】本当の目的


「で、何のためにこの村に来たわけ?」


リズが腕を組み、うさんくさそうに尋ねた。


「時折、依頼を受けた冒険者が帰ってこない村があるらしい。ここのことだと、酒場で耳にしてな」


「盗み聞きでしょ?」


「まあな。だが、何かあったとしても、俺が一人で片づける。お前らは動くな」


「大した自信だこと」


リズが皮肉っぽく笑う。


「何があったんだ?」


カイルが素朴に問いかける。


「魔王教が、邪教の儀式で生贄をささげてるって話がある。あくまで噂だがな」


「魔王教……?」


ユイが小さく首をかしげる。


「あまり聞き慣れない名前ですね。最近では、そういうものが流行っているのですか?」


「あー、なんかそんなのいたような気がする」


「ばっかみたい。帰りたい!」


「帰れよ」


「もう夜遅いわよ!」


「まあまあ、四人もいるんだし。協力して、さっさと終わらせちまおうぜ」


「お前は二人分邪魔だから、実質俺一人だ」


「なんだとコラァ!」


リズが笑いをこらえる。


「まあまあ、勇者様落ち着いてください」


カイルをなだめるユイ。


そのとき──


屋敷の扉がきしみをあげて開き、白髪の老人が出ていった。


「……動きがあるようだな。俺が行く。邪魔だからついてくるなよ」


そう言い残し、レイは静かに老人の後を追った。


◇ ◇ ◇


レイは屋敷の離れに忍び込んだ。


おまけが三人に増えてしまったが、新興宗教にはまるような連中など、何人束になろうが自分の敵ではない。


そう、高を括っていた──が。


「草はそろったか」


黄色の着物を纏った老人が、静かに問いかける。


「抜かりなく」


灰色の服に身を包んだ、忍のような男が一礼する。


「この村も、もう用済みか」


「焼き払ってしまった方がよろしいかと」


「……そうだな。──ところで、ネズミが紛れ込んでいるようだが?」


「俺のことか?」


声とともに、闇からレンが姿を現す。まるで、ずっとそこにいたかのように。


「ご丁寧に悪巧みの相談まで聞かせてくれて感謝するよ。何を考えてるかは知らんが……ありがとな」


「身の程も弁えぬ無礼者が……始末しておけ!」


老人の姿が、何の前触れもなく、そこから姿を消した。


「おい、待て──」


その瞬間、室内に土のような、雨の降った後のような匂いが立ちこめた。


──これは、森の中でも時折感じた、あの草の香りに似ている。


レイが違和感に眉をひそめた直後、仮面をつけた男が剣を抜き、飛びかかってきた。


「貴様、今の状況が分かっているのか?」


刃と刃が交錯する。打ち合いは互角──いや、かすかにレイが押していた。


「お前、なかなかやるな」


「貴様も、素人にしては腕が立つ。だがな──」


男は数歩後ずさり、天井を見上げる。


「俺の仕事の邪魔をした落とし前は、必ずつけてもらう。覚えていろよ」


その姿は、煙のように掻き消えた。


「チッ……骨折り損か」


レイは剣を収め、男の去った方向へ目を向けたが──


「ちょっと! 遊んでないで、こっち助けてよ!」


聞き慣れた声が廊下に響く。


「……何があった」


「村人が、急に襲ってきたの! まともじゃないわ、この村!」


屋敷の入り口。


そこには、狂気に満ちた目で武器を構え、なだれ込んでくる村人たちの姿があった──。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ