【第20話】守る者、奪う者
「来たぞ!」
洞窟の空気が、一瞬で凍りついた。
黒装束の忍びたちが入り口を突き破るように飛び込んでくる。
その中には、トトラド村で見た忍者の顔もあった。
「くっ……!」
レイがすぐさま応戦する。
飛びかかる敵を蹴り飛ばし、次の敵を捌き、また次へ。
手数は多いが、その視線はちらちらと奥の避難経路へ向いていた。
「ぬしら、なめるでないわい!」
ムン老師が杖を手に立ち上がる。
軽やかな踏み込みで敵の一人を地面に叩きつけた。
杖が空気を裂く音が、一拍遅れて耳に届く。
「ユイ、いくわよ!」
「はいっ!」
リズとユイが息を合わせて魔法を放つ。
爆風が巻き起こり、氷の槍が敵を穿った。
「こう騒がしいのは嫌いなんだけどね……」
ノーランは鞭を巧みに操りながら、武器を絡め取って次々と無力化していく。
「前、いきます!」
ミユキが叫ぶと、ノーランと見事な連携で敵陣を押し返した。
「連携、悪くないな」
「当然です、師匠の前ですから!」
その顔は、どこか誇らしげだった。
洞窟の奥では、非戦闘員たちが必死に奥へと動いていた。
「この奥の空間に……多少は隠れられる場所がある。急げ!」
「わかった、俺が誘導する!」
カイルは足元のおぼつかない老人の肩を支え、震える手を握り返す。
目の不自由な者の腕をとり、静かに先導した。
戦いの音が背後から届くたびに、胸の奥で何かが燻る。
自分が戦えない、という焦りだった。
――そのとき。
洞窟の入り口付近に、影が踊った。
「……ッ!」
少年の背後に忍び寄る人影。カイルが即座に気づき、声を上げた。
「誰だ!」
姿を現したのは、黒を基調にした密偵の装いの男だった。
その動きは忍びというより、鍛え上げられた軍人のそれだった。
「……ちっ、面倒だな」
カイルはすかさず剣を抜いて立ちはだかる。
だが、まるで相手にならなかった。
男――タダシはすっと動き、少年へ向かって突進する。
「しまっ――」
咄嗟にかばいに入ったカイルの後頭部に、重い衝撃が走った。
視界が揺れる。膝が折れる。地面が近づいてくる。
「また……かよ……くそ」
歯を食いしばっても、体が動かない。
「兄ちゃん!」
少年が叫び、反射的に飛びかかる。
その声だけが、やけに遠く響いた。
「お前も来るか」
タダシは軽くいなし、少年の背中に手刀を打ち込んで気絶させる。
そして二人を抱えたまま、仲間たちへ向き直った。
「こいつらの命が惜しければ、城まで来い。話はそこでだ」
それだけ言い残して、闇の中へと消えた。
「カイル!」
ユイの叫び声が洞窟に響く。
「立場、逆になってない?……やられたなあ」
ノーランがぽつりと呟く。
「茶化すなっての!」
戦いは、新たな局面を迎えようとしていた。




