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6話 外道勇者と外道大臣

致命的な怪我が原因で勇者のパーティーメンバーから外れた筈の、天上王国の王子が魔王を討伐したばかりの勇者達に会いに来た。


「あれがフィル王子と大臣…確か、天上王国の大臣は名の知れた魔導師でもあると言っていたな…」


国務をこなしつつ、魔導師の力で勇者を導く、非常に忙しい人らしいが……


『大臣は普段から沢山分身を出して仕事をしたり、勇者達の様子をわざわざ見に来たり、皆んなのために強い装備を作ってくれたって言ってた!』


「ああ、そうだったな」


【……で、今は向こうの時間は止まっている状態だけど…どうする?】


「……白黒、とりあえず時を進めてくれ」


【はいよ】


白黒が軽く返事をすると、テレビの中の勇者達が再び動き出した。



「フィル王子…!」


「それに大臣まで……」


「王子は怪我をしていた筈なのに、こんな場所までわざわざ来るなんて……」


勇者3人組は、急に魔王城に現れたフィル王子と大臣に驚きつつも、装備していた武器を素早く鞘に収めた。


「僕はね、君達にお礼を言いに来たんだよ。ラファー、ゴドー、メレン、魔王を討伐してくれてありがとう。今日から君達は英雄だ」 


魔王を討伐してからすぐ現れたという事は、勇者達を近くで監視でもしていたのだろうか。

(だが、勇者達の新しい装備に対する指摘が一切無いな…特に気にしていないのか?)


「フィル王子、ありがとうございます」


「うんうん、やっぱり君達は素直でいい子だね。君達との旅は楽しかったよ、ラファーは優しくて勇敢だし、ゴドーは力が強くて本から得た知識も豊富だったし、メレンの魔法は度々僕達を助けてくれた。英雄になる素質は十分にあった訳だ。でもね……





英雄は1人で十分なんだよ」




「……えっ?」


「大臣、やれ」


「はい」



パチン!



大臣が勇者達に向けて軽く指を鳴らした瞬間




ボ ォ オ ン ! !




勇者達の身体が紫色の炎に覆われた。


ガシャン!バサバサッ……


黒い炎に覆われた勇者達の身体は一瞬で消え、宙に取り残された勇者達の装備が音を立てて床に落ちた。


「あははっ、呆気ないなぁ!あの邪悪で最強な魔王を倒した勇者達が指一つであっという間に消えるなんてさ!


……さて、これで邪魔者は失せたし……大臣、魔王城の宝を全て回収する為に外に待機している兵士を呼んでくれないか?」


「畏まりました」


大臣が手を2回程叩いて合図を出した数分後、外から兵士が数人やって来て、周りに散らばる遺品の回収を始めた。




『智恵、勇者達が消されるちゃったよ……』


「………」


私はテレビから目を離すと、深いため息を吐いた。



ドササッ!!



私の背後に何か重いものが落下する音がした。落下してきたのは……



「あたたた……」

「くっ、床に頭をぶつけた……」

「2人とも大丈夫?血は出てない?」


ラファー、ゴドー、メレンの3人だった。


3人は部屋着のような衣類と『執念のロケット』のみを装備していた。




何故3人が助かったのか?理由は、3人が身につけていた『執念のロケット』にある。


『執念のロケット』を身につけている者が致命的な攻撃を食らった瞬間、装備者は死を避ける代わりにプレイヤーの手元…つまり私の下へと戻る効果のある装備だ。



「お帰り、大丈夫だったか?」


「あっ!ローザン様!身体がまだふわふわしますが大丈夫です!」


「怪我は無い…平気だ」


「そうか、無事で良かった」


3人は怪我一つせず、無傷で生還したのだが……



「僕達、最初から天上王国に利用されていたのかな……」


「俺達、勝とうが負けようがこの土地で死ぬ定めだったんだな……」


「うぅ……あんまりです……」


今まで信じていた国から裏切られたショックは、想像以上に大きかったようだ。



「ううむ、やはりこうなってしまったか……」




あれは、勇者達と魔王退治の為の装備を選んでいた時の事だ。



私が勇者達が持っていた大事な『天上王国のペンダント』を『修復』で直した後、ペンダントの性能が気になった私は、ペンダントに向かって『封印』のカードを使用した。


(『封印』は、どんな道具も簡単にカードに変える事が出来る便利な呪文だ。更に、その道具の詳しい説明まで見れる、実に素晴らしいカードだ)


だが、ペンダントの説明に書かれていた内容はとんでもないものだった。




『死のペンダント』


これを装備した者の命は、『死のペンダント』の製作者の意志で消滅させる事が出来る。

この装備の効果は、『攻撃無効』『魔法無効』の効果を無視して発動出来る。



勇者達を助ける所か、いつでも勇者達を始末出来る残酷な装備だった。


私は勇者達にこのペンダントの性能を告げ、望むのならペンダントのレプリカも作るから、代わりにそれを装備するといいとも説明した。


だが、それでも3人はペンダントを装着すると宣言した。勇者達は最後まで天上王国を信じる道を選んだのだ。



(『魔術師のローブ』の効果は無効化されたようだが、『執念のロケット』が上手く発動してくれたおかげで死を避けられたようだな。念の為に持たせておいて本当に良かった…)




「……で、勇者3人はアイツらをどうしたい?」


「えっ?」


「どうしたい…とは?」


「天上王国の王子と大臣は君達を最悪な形で裏切ったんだ。奴らに仕返ししたいとは思わないのか?」


私の発言を聞いた勇者3人組は、お互いに顔を寄せると小さな声で話し合いを始めた。


やがて話が纏ったのか、お互いの顔を見て頷き合うと再び私に向き直った。


「僕達は何もしません。あんな人達に仕返しをする価値なんてありませんから」


「寧ろ、あのような奴らに仕返しをすれば、再び仕返しをされるだろうからな。魔王さえ倒せれば俺達はそれで十分だ」


「私は悔しいし悲しいですが…そんな事をしたらあの人達と同じになってしまいますから…」


「そうか…分かった、では天上王国にはこれ以上深くは関わらないって事で……」



【あ、この件はそう簡単に済まないみたいだよ】



「何?それはどう言う事だ?」


【テレビ見なよ】


「?」


白黒に言われ、テレビの画面を見ると……




肌は真っ青、背中には蝙蝠のような翼、頭には禍々しい角が生えた、変わり果てた大臣の姿があった。




『キャーーッ!?何あれ!?』


「あんな小さなモノの中に王子と大臣が!?」


今はテレビの説明をしている場合では無い。


「おい白黒!私が少し目を離した隙に何が起こったのだ!?」


【何かね、魔王が装備していた透明な指輪を大臣が拾い上げて、そのまま指にはめたらこうなってた】


「白黒!!誰かが怪しい動きをしたら時間を止めろ!!と言うか何故時間を止めなかった!?」


【いや、止めろって言われなかったし…】



そうだ…こいつは人間でゲームをしようとした録でもない奴……


人間の味方では無いタイプの神だった…!!




「ローザン様…大臣がはめた指輪、あれは恐らく魔王の指輪です……!」


「魔王の指輪?ラファー、それにはどんな力があるのだ?」


「魔王の指輪をはめた人は、例え魔力の無い人間でも、強大な魔力を持つ魔王に変わってしまうと言われているんです……」


「魔王を討伐した後、魔王の指輪も処分するつもりだったのですが…まさかこんな事になるなんて…」


【因みに、さっき君達が討伐した魔王は元農民でね、碌に戦闘をした事が無い一般人だったんだよ】


「そんな人間ですら凶暴な魔王になってしまうとは…」




私達が会話をしている間も、テレビの中では時間が流れ続けている…


『魔王の指輪がようやく私の物に……強大な魔力に永遠の命も手に入れた……!』


「大臣!一体どうしたんだ!そのおぞましい姿…まるで魔物じゃないか!!兵士!何故アイツじゃ無くて僕を囲むんだ!!」


フィル王子は恐怖のあまり床に座り込み、本来は味方である筈の兵士も武器を構えてフィル王子を取り囲んでいた。

どうやら兵士は大臣に操られているようだ。


『ククク……貴方のお父様には感謝しかありませんよ。此処まで導いて下さりありがとうございました。貴方はもう不要です』


「ふ、不要って何だ!!要らないのは…捨て駒はあの勇者3人組だったんだろ!?」


『あの3人を消したのは『魔王』を討伐する力があったからですよ。だが、魔王を討伐した勇者はもう居ない!!

厄介者が去った今、この私を邪魔出来る輩はもう居ない……これからは私の時代だ!!』


「そ、そんな……!」


フィル王子は未だに立ち上がらすに、大臣を下から見上げながら体を震わせている。



「白黒!時間を止めろ!!」


【はいよ】


私が指示を出すと、テレビの映像が再びピタリと止まった。


「ローザン様、申し訳ございません…!もし素直に忠告を聞いていれば、魔王の指輪も直ぐに処分出来た筈なのに…!」


「過去を悔やんでも仕方が無いだろう。それに、もし私も君と同じ立場だったら、私も君達と同じ事をしていただろう…」


【ンな訳無いでしょ…】


「……ルルー」


『はいよっ!!』


ガリッ!!


【あだだだっ!針で引っ掻くのをやめろ!】


「ローザン様!再び僕達に力を貸してくれませんか!?あのまま大臣を放っておいたら今まで以上に恐ろしい事が起きてしまうかもしれません…!!」


「勿論だ!私も全力で力を貸そう!だが……


もう自重するのはやめだ!!先程は君達の敵討ちの事も考えて、装備についてはある程度自重してはいたが……先程の魔王討伐はあまりにも地味過ぎた!!」


『主、敵討ちに華を求めないで下さい』


「奴への手加減は一切無しだ!大英雄セットフル装備もドラゴンも遠慮無しで召喚するからな!!これで城ごと消し飛ばせ!!」


「いやいや!ローザン様、流石にやり過ぎるのは……!」


私の発言に対し、ラファーはあまり乗り気では無いようだが…


「……ローザン、俺は大英雄の防具を全て装備してみたい」


「ゴドー!?」


「ローザン様!私は『ドラゴン』に乗りたいです!!」


「メレンまで!?」


残る2人は私の意見に賛成のようだ。 


「……そうですね、今はやり過ぎなんて言ってられませんよね。分かりました、僕もローザン様の指示に従います」


「よし、全員賛成だな!では、まず先にゴドーに大英雄装備を与えてから魔王城に送り込むぞ!残る2人は魔王城の外に移動させてから、コレを装備して貰う!!」


そう言って私はポケットから『例の装備カード』を取り出し、ラファーとメレンの2人に見せた。


『ちょっ!?そのカードって……!?智恵!いくら何でもやり過ぎだよ!!これだとゴドー以外魔王城に入れないじゃん!!』


『下手したら魔王城所か土地すら残らないぞ』


「別にいいさ、魔王を消せるのならばこれくらいしなくてはなぁ…!」



あの外道大臣に、魔王になった事を後悔させてやる……!!

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