4話 勇者3人組【挿絵アリ】
私はお腹が空いたファンタジー3人組に食事を与えるべく、人と交流が出来るガルドに食事を買ってくるよう指示をした。
ガルドがお使いから帰ってくるまでの間、3人に軽く質問を投げかけてみる事にした。
「まずは自己紹介でもしておこうか。私の名前は籠山智恵だ、宜しく」
「僕の名前はラファーです」
「俺はゴドーだ」
「私はメレンって言います」
成る程、比較的普通そうな金髪の少年はラファー、身体がデカい赤髪の男がゴドー、魔法使いっぽい
白髪の少女がメレン……ん?
「ちょっと待て。君達、先程と衣装が違うようだが……」
先程までこの3人は鎧や法衣などを身につけていた筈なのに、いつの間にかシンプルな服装に変わっている。
まるでファンタジー世界に住む村人の…いや、これはもはや現実世界の部屋着並に質素な服だ。
「あ、周りに魔物の反応が無かったので脱いじゃいました」
「そうだったのか…」
どうやら私が少し目を離している隙に着替えたようだ。恐らく、魔法の類であっという間に着替えたのだろう。
(装備の下は結構シンプルなんだな……)
『智恵…さっきも思ったけど、この3人全く匂いがしないね』
「(ああ。血塗れだったにも関わらず、血の匂いすらしなかったな。これも恐らく魔法…)」
ガラガラガラ……
『主、スペシャルバーガーのセットを買えるだけ買ってきました』
ルルーと一緒にあれこれ考えていると、扉から大量のビニール袋を提げたガルドが帰って来た。
「おお!ガルド、ありがとう!」
私はガルドから荷物を受け取ると、紙袋を破って床に広げ、その上に大量のハンバーガーやポテトを雑に並べた。
「凄い…賢者様、魔物を手足のように扱えるなんて…」
どうやらこの3人組にはアルカナの姿が見えているようだ。流石異世界の住民だ。
『私達は魔物じゃ無いよ!あ〜あ、私もガルドみたいに人に化ける力があったらいいのに……そしたら智恵と一緒にショッピングとか楽しんだり出来たのになぁ〜……』
「ルルー、誰にも姿が見えなくても私とショッピング出来るだろう。さあ、ラファー、ゴドー、メレン、気が済むまで好きなだけ食べてくれ」
「すごい…!こんなに沢山…!」
「旨そうな匂いがするな…」
「あの……これ、本当に食べていいんですか…?」
「勿論だ。お前達が元気にならないとまともに会話が出来ないだろう。むしろ食べてくれ」
「はっ、はい!ありがとうございます!!」
3人組はスペシャルバーガーの山から1つのハンバーガーを掴むと、包みを恐る恐る剥がし、現れた中身にそっと齧り付いた。
「「「!!」」」
「う……美味い……!!」
「すごく美味しい…」
「うまい!久しぶりに美味しい食事にありつけた…!」
「飲み物も沢山あるからな、遠慮せず飲み食いしてくれ」
「はい!頂きます!!」
3人は大喜びでハンバーガーを頬張り、出された飲み物の蓋をストローごと外して中身をガブガブと喉に流し込んだ。
「いたたた…この飲み物、甘くて美味しいんだけど口の中で弾けて飲み辛いな…」
「ヴッ…この飲み物は薬のような味がするな……」
「うっ……ぐすっ……」
「……メレン、どうしたんだ?嫌いなものでも入ってた?」
「違ゔ……違ゔんでず……ぐすっ……ざっぎ……目の前で死んでしまったラファーとゴドーど……こうやってまた一緒に……楽しく食事できるなんで、おぼわなぐでぇ……」
「メレン……ごめんね」
「大丈夫だ。もう俺はお前達の前で死なないからな」
ラファーとゴドーは、静かに泣き出したメレンを慰めている。
(これは暫くの間、3人だけにしておいた方がいいかも知れないな……)
私は3人を気遣い、ルルーとゴコとガルドを連れて静かに教室から抜け出した。
「……2組の教室を見失ってしまった……」
数十分後……
ガラガラガラ……
「あっ!賢者様!」
「ご馳走様、物凄く美味かった」
「気を遣わせてしまってすいません…」
「いや、大丈夫だ……」
結局、ルーナを呼び出して教室の扉の位置を教えて貰ったのだが、まさか自分も教室を見失ってしまうとは……
「そうだ、このサンドを何処のレストランで買ってきたのか詳しく教えてほしいのだが……」
「ゴドー、今はそんな事を聞いている場合じゃないよ…」
「ハンバーガーを買った場所については後でいくらでも教えてやろう。とりあえず、まずはこの状況について詳しく説明を……」
「あっ!賢者様すいません!その前に、どうしても1つだけ確認したい事が……」
「ん?ラファーか、何だ?」
「あの、僕達が……僕達が魔王に敗れて死んでから、何年経過したんですか?」
「何年か、だと?」
「はい、この世界は僕達がいた世界とは明らかに違っていますし……お願いします!正直に教えてください!」
……それはつまり、魔王にやられてから生き返るまでの時間を聞いているという事で間違いは無いだろう。
あの状況からして恐らく、そう時間は経っていない筈だから……
「2分だ」
「2分!?」
「えぇ…数十年とか数百年とかでは無いのですか…?」
「だが、周りの環境は明らかに違っている…異国の地だったとしても流石にこれは…一体どうなっているんだ…」
「まあ、色々と聞きたい事はあるだろうが…とりあえず私の説明を聞いてくれるか?」
私はファンタジー3人組にこれまでの出来事を事細かに説明し、ずっと賢者様と呼ばれるのもアレなので私の名前を改めて説明した。
「異世界…?僕達が居る世界とは別の世界……?」
「この世界には魔法が存在しない…だが、賢者…ローザンは魔法と召喚術が使える……?」
「えっと…あんなに沢山召喚出来るのに、賢者ローザン様は私達とほぼ同じ歳なんですか…?」
どうやら余計混乱させてしまったらしい。しかも賢者呼びはまだ抜けていないようだ…
「まあ、我々については以上だ。次は君達について教えてくれないか?」
「分かりました。簡単に説明すると…僕達は魔王を討ち倒す為に天上王国から派遣された勇者なんです」
「天上……」
【何処の国よりも天に近い国だからそう言う名前が付いたんだってさ。ちゃんと日本語に翻訳できてるだろ?】
確かにしっかりと日本語に翻訳出来ているが…
折角の異世界なのだから、スカイなんたらとか、もっと英語っぽい感じに翻訳してくれても良かったのではないのだろうか。
「俺達は幼い頃に、故郷である村を、両親を、魔物達に焼かれてしまったんだ。だから俺達は仲間や親の仇を獲る為に、天上王国の元で厳しい訓練や鍛錬、修行を行い…
結果、天上王国の国王様に勇者として認められ、国王様に支援を受けながら打倒魔王の旅をしていたんだ」
「最初は天上王国の王子様も私達と一緒に旅をしていたんでずか…魔王城に乗り込む前に致命的な怪我を負ってしまって……結局、私達3人だけで魔王を討伐する事になってしまったんです」
「だけど、魔王は想像以上に強くて……僕達はあっという間に魔王にやられて……で、気がついたらこの部屋の中に居たんです」
「成る程……つまり君達は親の仇を獲る為に魔王を討伐しようとしていたのだな?」
まさに絵に描いたような、王道のシナリオのような人生を歩んで来た訳だ。
「はい、そうです。まだ魔王が生きているのなら、今すぐにでも魔王の元へと向かいたいのですが…今の私達には魔王を倒せる力が無くて…」
「ふむ……ならば、私が君達を強化してやろう」
クラスメイトを助けられる上に、異世界で色んな道具を全力で試せる絶好の機会でもある。この機会を絶対に逃す訳にはいかない。
「えっ!?賢者ローザン様…!それは本当ですか!?」
「だから私は賢者では無いと…まあ、死んでしまった君達を無闇に生き返らせてしまった私にも責任があるし、魔王を討伐してくれたら、先程説明した『魔王城に居るクラスメイト』も無事に回収出来る。どうだ、双方にとって悪い話では無いと思うが……」
「いや、クラスメイトの話があったとしても、むしろ僕達にとって利益しか無いですよ!
先程から散々助けられてばかりで、僕達はローザン様に恩を1つも返せていない……」
そんな大袈裟な…それに、何の根拠も無しにやたら私を慕っているように見えるが、もし私が悪い人間だったらどうするつもりなのだろうか。
「だが、この機会を逃したら俺達は永遠に魔王を討ち倒せないかもしれないんだぞ」
「……分かりました。ローザン様、どうか僕達に力を貸して下さい……!」
「よし!決まりだな!では私が持てる全ての力を君達に貸すとしよう!!」
ふふふ…魔王よ、首を洗って待っているがいい……




