第八話 「魔王、勇者と話す」
ここは魔界。魔王は暇を持て余していた。
マジギレした魔王は勇者と副臣をしばいた。そうしてその後魔王は勇者が魔界に来た理由を聞くのだが・・・。
ここは魔界。
魔物達巣食う混沌の世界、魔界である。
「何故魔界に来て俺の命を狙った?」
「はい、それは」
魔王達にすっかり怯えて自然と正座に敬語となっている勇者は言う。自分達が魔王を倒しに来た理由。
「それは、あるお方に言われたからです」
「・・は?・・あるお方?」
魔王は不審に思った。誰かに言われて勇者が魔王を殺しに来る。それではただの殺し屋ではないかと、それでは勇ましい者ではないじゃないかと。
勇者が魔界に来て、魔王の命を狙う理由。例えばどんなものがあるだろうか。
・自国の姫君を攫われたから
・魔物達が村や街を破壊するから
・魔王が持つ秘宝が必要だから
こんなところだろうか、勇者が勇者として魔界に赴き魔王に対峙する理由。
だが目の前にいる勇者は違う。
「なにを言われたんだ?」
「ええと、それは・・・」
勇者が言い淀む。それを見て弓使いが続けた。
「近いうちに魔王軍が国に攻め込んで来るって言ってたわ。だからそれを未然に防ぐために魔王を討伐してしまおうと、それが私達がここに来た理由」
「ふむ、なるほど、でもここに入って来た時「今日こそは―」とか言ってなかったか?」
「あれは舞い上がった勇者が勝手に言ったのよ」
「はぁ」
魔王は釈然としなかったがとりあえず話を聞くことにした。
「基本的にこの子馬鹿だから」
「なんだと!?私は馬鹿ではない!」
「馬・鹿でしょ?ここに来る前に、相手が強かったらすぐに撤退って言ってたじゃない。なのに勇者ってば逃げる事なんて一切頭に無かったでしょ?」
「うぐっ、そ、それは」
「旅の途中の山の中の時だってそうよ」
「な、なんだよぉ」
すでに勇者は涙目だが、弓使いはここぞとばかりに言葉で攻める。
「山で大熊と戦った時、勇者だけ突っ込んで行くから皆がその手助けで怪我したの、忘れた?」
「あ、あれはぁ、ううぅ」
勇者の目からぽろぽろと涙が零れ始める。
「あとお師匠の特訓の時だってそうよ。一人図に乗ってお師匠との対戦なんかして、怪我した勇者を誰が介抱したと思ってるの?」
「だ、だってぇ」
勇者は最早言い返せず、ただただあうあうと言うだけだった。
「魔界に入ってからだってそうよ。早く魔王を倒すんだぁ!って一人先走って、思ったより魔王城が遠くていち早くヘトヘトになってたのは誰よ?」
「うわぁぁぁあん!だってぇぇぇ!」
「しかも――」
「もうやめろ!!見てられんわ!!」
堪らず魔王は弓使いの言葉攻めを止めた。
「ばおぉぉ」
勇者は魔王の助けが嬉しかったのか、涙と鼻水で顔をグショグショにしながら隣にいた魔王に抱きついた。鼻水のせいで何を言ってるかわからなかった。おそらく魔王と呼んだのであろう。あ、わかっていました。
「なによぉ事実でしょお」
「でもっ、ひぐっ、でもぉぉ!!」
「というか汚いわっ!」
グショグショの顔で魔王にくっついたせいで魔王の腕もグショグショ状態である。
「あ、ごべんなばい」
「あーもうグショグショじゃないか」
魔王はふぁっとハンカチ状の布を魔力から創り出す。
武装となると苦手だがこのくらいなら魔王でも出来るのである。全くそこらへんの線引きもいろいろややこしいのだ。
「ほらこっちむけ」
「むぐっ」
勇者の顔を優しく拭う魔王。とても微笑ましい光景なのであえて言おう。
先程この魔王、今同じ部屋にいる者達を皆殺しかけた。とってもとっても恐いお方なのだ。
「ぢーん」
まぁそれはさておき、鼻もかんだ勇者はグショグショ状態から復活したので、そろそろ話を戻そうという空気になる一同。
「まるで親子ですなぁ」
「いや話戻せよ!そういう空気だっただろ!?」
さすがは副臣。魔王に殺されかけても結局我を曲げない奴である。このように現魔王就任以来やってきたのだ。
「ふっ」
「あんだよ気持ちわりぃ」
「あいや、勇者に対してお優しいなと思いまして」
「は?そうか?」
なんとなく生ぬるい空気が流れる魔王城、王の間、ぬくえ周辺。心なしか勇者一団もにやにやと魔王を見ている。
だが、あえて言おう。先程この魔王、今同じ部屋にいる者達を皆殺しかけたのだ。怒らせるととってもとっても恐いお方なのである。
「どうだ勇者一団。この魔王城にしばらく滞在せんか」
「え?」
突然とんでもない事を言い出した副臣。それを怪訝そうな顔で見る勇者一団と魔王。
「誰だか知らないが、お前達をここに差し向けた奴についてもう少し知りたい。それにお前達も全快ではあるまい?適当に回復するまで過ごすといい」
「・・・・・」
互いに見合ってどうする?みたいな顔をしている勇者一団。
「別にとって食おうなどとは考えておらん。安心するといい」
「じいいいい」
安心するといいと言われ、勇者一団は魔王を見つめた。なぜならば、しつこいようだがこの魔王。怒らせるととっても恐いお方なのだ。
「・・・大丈夫だ。もう何もしない」
魔王は空気を読み、大丈夫だアピールをした。
「決まりだな」
副臣の一言で決着がついた。
「というか――」
魔王が周りを見て言った。
「もう真っ暗だからな」
そう、なんやかんやとあったので現在魔界はとっぷりと日が暮れて真っ暗なのである。辛うじて蝋燭の火の明かりで互いの顔を認識出来るレベルの明るさだ。
「わかった。世話になる」
こうして、魔王城に勇者が滞在するという、未だ嘗て無かった事が起きたのである。
そして、魔界と勇者という敵同士のイチャイチャラヴラヴの日々は幕を開けないが、暇だった魔王城の少し騒がしい日々が幕を開ける。
待て、次回。
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