第七話 「副臣、怒りを買う」
ここは魔界。魔王は暇を持て余していた。
そんな中突如として現れた勇者との戦闘に向かった魔王だが、そこで目にしたのはその勇者たちとくつろぐ副臣の姿だった!?
ここは魔界。
悪魔達巣食う混沌の世界。魔界である。
「なにやってんのおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」
魔王は叫んでしまった。叫ばずにはいられなかった。
自分が戦いの準備をしている間、その時間稼ぎをする。みたいなオーラで勇者に立ちはだかった副臣が、あろう事か戦っている筈のその勇者達と、ぬくえに入っている。
「魔王様。かっこいい登場ですなぁ、うぷぷ」
「これが魔王。なるほど」
「かっこいいじゃん」
「・・・くだらない」
「あら、以外とイケメンねぇ」
副臣、勇者一団は魔王の登場について好き勝手言っている。
「ど、どういう事だ副臣!?」
魔王は状態が理解できないでいた。
先ほど装備を装着し終わってようやく王の間に戻ってきたのに、副臣が勇者を倒していても登場はこの登場の仕方を副臣は知っているから別に恥ずかしくもないだろうと思ってきたのに、なぜこんな状況が目の前にあるのか。
「魔王様、落ち浮いて下され」
「は?だからどういう状態なんだ、なぜ勇者達とお前がぬくえに入っている?戦っていたのだろう?」
「はい、一度ボコボコにしました」
「もう恐ろしく強かったぜ」
あっさりと答える副臣、それに続く武闘家。こいつの神経は太いのだとこの段階でわかる。
「は?ボコボコにした相手が、なぜ無傷でいる?」
「回復させました」
「なんで!?」
「魔界に来た理由を聞くために」
「・・・そういやそんなのあったな」
「ボコボコにしたせいで、此奴らほとんど喋れませんでなぁ、回復させて理由を聞きました」
「な、なるほど」
「それはそうと、さっきのあれかっこよかったな」
ぴくっ←魔王の顔が引きつる音。
無邪気にそう言ったのは武闘家であった。
武闘家は普段、基本的に馬鹿である。しかしその天才的な戦闘技術を買われて今ここにいるのである。
「・・・そうでもなかった」
ぴくぴくっ←魔王の顔がよく引きつる音。
「あら?カッコ良かったじゃない」
ぴくぴくぴくっ←魔王の顔がとても引きつる音。
「あぁ、私もああいった登場は一度やってみたかった。参考になる」
ピキッ←魔王の顔が引きつる音最終段階。
ぶっ←好き勝手に言われ顔を引きつらせる魔王を見て思わず副臣が吹き出した音。
ぶちぃ←突然勇者が来て慌てて退避したものの武装が無くて散々探したりその武装があったはいいが一人では着ずらいものだったりそれを必死になって来たのにいざ本番となったら肝心の勇者は自分の部下とくつろいでいたりその登場をとやかく言われたり、最終的に部下に笑われた奴の何か理性的なものが切れる音。
ちなみにこのキレる理由、長々とした前者が5%、後者な95%である。
「・・・・・・・・」
沈黙した魔王の周囲に強烈な程の魔力が集まる。
「これはまずいぞ」
「え、なにが?」
副臣は戦慄し、冷たい汗を流す。
次第に魔王の周囲の魔力は密度を増し、登場の時の黒霧よりも濃い霧を発生させていた。
「貴様らぁ―――」
その声には魔力の影響でノイズがかかり、さらに迫力を増させた。
「―――好き勝手に言ってくれてるじゃないか」
魔王周囲の魔力は姿を変え始める。一部は炎となり身体に纏わり付き、一部は電流となり身体から放出される。
「覚悟は、できているな・・・・」
炎と電流は強さを増す。
「死ねぇぇぇえぇぇぇぇぇ!!!!」
炎は火炎に、電流は雷となり爆裂する。
「ぐわあああああああ!!」
「きゃあああああああ!!」
「ーーーーーーーーっ!!」
雷で痺れ、火炎に焼かれる。
勇者以外の三人は一瞬で深手を負った。
「なんなんだあれは!?」
魔王の殺気を感じすぐに逃げた勇者は無傷だった。しかし、尋常ではない魔王の雰囲気に身体中から汗が吹き出していた。
「魔王様を怒らせてしまった。少々度が過ぎたようだ」
副臣もまた魔王の殺気を感じ、直様飛び退いていた。
「度が過ぎたってなんだ!?戦う必要なかったんじゃないのか!?」
勇者はなぜ魔王が怒っているのか理解ができていない。自分たちが魔王に言っていたコメントが怒りを募らせたという自覚が無いのだ・
「・・・うむ、本当はそうだったのだが、こうなった以上止むを得ない。たが、ああなった魔王様を止めるのは難しい。疲れるまで待つしかない」
「なんだと!?これでは仲間が殺されてしまう!どうにかできないのか!?」
「魔王様は純粋に能力だけならば私などより圧倒的に強い。まずいな」
そう、魔王は伊達に魔王というではない、ここ魔界で王として過ごしたければ誰よりも強い必要があるのだ。ここ魔界では王は継ぐものではなく、勝ち取るものなのだ。
現魔王は先代が失踪し一時的にと就任したものの、その圧倒的な強さに十年以上もの間、降りかかる火の粉を容易く払っていたのである。
「どうするんだ!?このままでは私達も殺されるぞ!」
「くっ、せめて怒りの原因が―――」
「副臣、貴様よくも笑ったな」
「――わか・・・れば」
魔王は倒れている武闘家を踏み越えて憎しみの方向を露わにする。
結果、勇者たちのコメントより副臣に笑われたことが一番頭にきた魔王であった。
「わかったじゃないか」
顔を見合わせる勇者と副臣。
「あれ?」
「あれ?ではない!貴様のせいではないか!?」
「ふぅむ」
「なんとかしろ!」
副臣と勇者が話している間にも火炎と雷を振り撒きながら魔王はゆっくりと近づいて来る。
「・・・こうなれば私が」
「何をする気だ勇者」
「私は勇者だ、勇ましい者、今戦わずしていつ戦うのた!!」
「だが、魔王様は私より強いのだ、さっき私にボコボコにされていたお前じゃ無理だ」
「もともと魔王と戦うつもりで来たのだ、これが正しい道だ」
「・・・勇者」
副臣は見た。これぞまさに勇者。勝てぬとわかっていても立ち向かうこの勇気、女だが漢だ。そう思った。
というか副臣は自分が原因でありながら何もしない。
「でやあああああああああ!!!」
剣を手に、一気に走り込み、魔王に向かって飛び込む。
「ふんっ」
「きゃん」
しかし勇者、一瞬だった。勇ましく飛び込んだが、斬りつける前に魔王の裏拳で吹き飛ばされる。その時の悲鳴は可愛らしい女の子だった。
「きゅ~」
勇者は呆気なく気絶してしまった。
「ふ~く~し~ん~」
魔王は怒りながらもニヤリと笑う。後はお前だけだと言わんばかりに。そして魔王の纏う炎と雷は威力を強めている。
「・・・・・・」
「覚悟はいいな」
「・・・前にもありましたな、こういったこと」
「あ?」
「あれは魔王様が就任して2年程経った頃でしたかな」
「あぁ、あったな」
そう、あれはまだ
「させねーよ!なに回想行こうとしてんだよ!」
「ちっ」
「舌打ち?今舌打ちしたな?」
「いえいえしてませんよ舌打ちなんて」
「そうか、よし。大丈夫だ心配するな、最後は回復させるから」
「え?」
閑話休題
「んで、結局なんだったんだ?勇者が魔界に来た理由ってのは」
結末から言うと先ほど魔王は、副臣含め王の間にいた者全てに攻撃し殺しかけた事になる。
そして現在はぬくえを囲んで会議のような状態になっている魔王、副臣、勇者一団。
魔王は玉座を背にぬくえに入り、対面に副臣両側に勇者一団を座らせているのだ。
「はい、それは直接勇者から聞いた方が良いかと」
副臣も魔王に殺されかけたの一旦は真面目に正座をしている。しかしすぐにいつも通りに戻るのは魔王も経験上知っていることだ。
「勇者」
「は、はいぃ!」
そして魔王城に乗り込んで来てから、二度も圧倒的な力を見せられた勇者一団は目の前にいる魔王が恐ろしくてガクブル状態である。なので、呼ばれただけで返事が上ずってしまったのだ。
「何故魔界に来て、俺の命を狙った」
「そ、それは―――」
そして、ようやく告げられる勇者が魔界へと来た理由。
それはなんと、次回に続く!!
待て、次回!!
ご意見、ご感想、質問等ございましたらお気軽にどうぞ。




