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コスパの悪い魔法の世界で、僕は地球に論文を送る。 ~異世界転生した天才物理学者は事象の地平線を越えて真理を証明する~  作者: あとりえむ
第2部:シュバルツシルトの深淵編

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第60話:開戦

東の空に昇った太陽が、ゆっくりと黒い影に呑み込まれていく。


皆既日食の始まり。天体同士の巨大な質量が一直線に並ぶことで重力ベクトルが極大化し、高次元バルクのノイズを突き破る数百年ぶりの巨大な重力レンズが形成されようとしていた。


だが、その神秘的な静寂を切り裂くように、王都の空気を震わせる重く冷たい音が響き渡る。


五千名の聖騎士団の進軍を告げる、開戦のラッパだった。


「撃てぇぇぇッ!!異端の魔都を浄化せよ!!」


教団の指揮官の号令と共に、学院を外界から遮断していた強固な『封鎖結界』がパキリと音を立てて解除された。


それは籠城戦の終わりと、一方的な浄化の始まりを意味していた。五千名の魔導士が一斉に魔法を放ち、空を覆い尽くすほどの無数の炎弾、氷槍、そして雷撃が学院へ向けて降り注ぐ。


「封鎖が解けたぞ!総員、防衛結界を展開しろぉぉッ!」


地上の防衛ライン最前線で、ガスト教官が怒号を上げ、自身の命を削るような凄まじい魔力で上空に巨大な魔力障壁を張り巡らせる。


土魔法が得意な生徒たちで物理的な防壁を隆起させ、教師や生徒たちも泥だらけになりながら必死に魔力を注ぎ込んだ。


ズドガガガガガガッ!!


五千の攻撃魔法が、即席の防衛結界に雨あられと着弾する。

凄まじい爆発音と閃光が吹き荒れ、大地が悲鳴を上げて揺れた。圧倒的な暴力が結界の表面で弾け、空気が焦げるような熱波が学院内へと押し寄せてくる。


「退くな!我々の学院を守るのだ!意地でもこの門は抜かせるな!」


ガスト教官が血を吐くような声で叫び、結界の崩壊を必死に食い止める。


だが、敵は五千。さらにその後方には、総大将であるラプラス枢機卿が、神の裁きを下すかのように冷徹な瞳でこちらを見下ろしている。


結界に亀裂が走り、絶体絶命の危機が学院を飲み込もうとしていた。



一方、激しい震動が伝わる第4廃校舎の地下施設。

天井からパラパラと土ぼこりが落ちてくる中、私はメインコンソールの前に立ち、マギフォンの校内放送用マイクを力強く握りしめた。


「レイ君、皆既日食が最大直列位相に入る!重力レンズの焦点、地球座標にロック!」


ボブの叫びに、私はアリスと視線を交わした。

彼女は静かに頷き、その瞳に真っ暗な宇宙と青い星の座標を映し出している。

準備はすべて整った。


私は白衣の裾を翻し、学院中に響き渡る校内放送のスイッチを入れた。


「諸君、授業開始だ。古い常識を、物理学で書き換えてやろう」


私は迷いなく、巨大加速器のメインスイッチを押し込んだ。



ゴォォォォォォォォォッ……!!



その瞬間、学院の外周数キロメートルを囲むように敷設された巨大リングに、青白いプラズマの光が一斉に灯った。


地下から湧き上がるような、内臓を揺らす重低音の駆動音。

テラワット級の電力が超伝導コイルを駆け巡り、星を繋ぐ大砲たる巨大シンクロトロンが、ついに完全な目覚めを果たしたのだ。


「な、なんだあの光は……結界の内側から、信じられないほどのエネルギーが……!」


攻撃を続けていた聖騎士団が、足元から伝わる未知の振動と青白い光に圧倒され、思わず詠唱の手を止める。


ラプラス枢機卿の眉が、忌々しげにピクリと動いた。


教団の圧倒的な魔法の爆発音と、物理学の結晶たる加速器の起動音が重なり合う。

皆既日食の暗闇の中、青白いプラズマの輪が学院を煌々と照らし出す。


神の奇跡と物理学が正面から激突する、最終決戦の幕が、ついに上がった。




── 第2部 シュバルツシルトの深淵編 完 ──


第3部 事象の地平線を越えて編へ続く……

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異世界転生した天才物理学者 やっぱりせかいはまあるいほうがいい S級清掃員 監査の魔王 至高のミミちゃんを見守る会

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