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六話

「出ていけ!!」


 アムルの家では息子が相手を妊娠させたことが伝わり、それを知った父親は怒り狂ってアウルを殴り、母親は泣き崩れる。

 相手が年上の女性だとしても学生だということもあり申し訳なかった。


「もう二度と家の敷地を跨ぐな!!お前のような無責任な奴は家族でも何でもない!!」


 そう言って父親はアムルを家の外に追い出す。

 鍵も閉められアムルは家の中に入ることは出来なくなった。



「最悪だ……」


 アムルは自分が家の外に追い出されるのは納得していた。

 だけど制服のままで追い出すのは酷すぎないかと思う。

 最低でも下着とか替えの服とかも持っていきたかった。


「それでも財布を持っていて運がよかったけど……」


 あの調子じゃ運が悪かったら身無一文で追い出されてた。

 お金があるだけ幸運だ。


「取り敢えずいつまでも制服じゃアレだしな。もしかしたら学生なのに学校に行っていないと言われそうだし制服は捨てないと……」


 少し勿体ないが制服は捨てるしかない。

 そして服を買う必要がある。

 普通にお金も結構使うのがキツイ。

 だけど必要であり、直ぐに働けるバイトを探そうと決めていた。


「アウル君?」


 そうして服屋に行こうと行き先を決めたらフェアニの母親が目の前にいた。

 大事な娘を孕ませた男に文句を言いに来たのだろうと想像できる。


「ねぇ、どうして娘に手を出したの?貴方、ロリコンなのかしら?」


「違います。そもそも、貴女の娘は幼女じゃないですし」


 アウルの言葉にフェアニの母親は目を瞬きさせる。

 そんな言葉を言われるとは夢にも思わなかった。


「え……。でも娘は身体が年齢に反して幼すぎるし」


「でも精神的には、かなりしっかりしていると思いますよ?見た目の年齢で色々と馬鹿にされたりしているみたいだけど、しっかり言い返したり自分の意見を通したりしますし」


 見た目の年齢ではなく、中身の方を見て言い返して来たことにフェアニの母親は嬉しくなる。

 そして娘も確かに身体を許すと納得していた。

 今まで娘は自分達両親も含めて見た目をバカにしていた。

 だけど目の前の男の子はそんな欠点よりも長所を見て反論してくれる。

 自分達よりは余程、信頼できるかもしれないと考えてしまう。


「そう……」


 それでも疑問はある。

 どうして娘に手を出したのか?

 娘にどれだけ好意を持っていたとしても見た目の容姿が手が出せなくなるはずだ。

 ロリコンでもない限り。


「娘に手を出した時点で私は貴方をロリコンだと思っているわ。それなのに何で否定をしたの?ロリコンじゃないなら、そもそも手を出さないわよね?」


「………向こうから誘ってきて我慢がどうしても出来ませんでした。いえ、お互いに思い出してみれば妙に最初から理性が無かったような……?途中からヤルのが当たり前の空気になっていたような……?」


 目の前の少年の言葉に何となく自分にも見覚えがある。

 今もそうだが急に娘のことや目の前の男の子が忌々しくなったことを思い出す。

 それと同じなのか確認する。


「もしかして直前まではシようなんて思ってなかったのに急にシたくなって我慢できなくなったとか……?」


「?よくわかりますね」


「…………もしかして私たちの家でヤりましたか?」


「…………」


「答えてください」


「…………」


「私にとっては必要な事なので答えてください」


「………ハイ。フェアニ先輩の家でシました」


 相手の母親にどうしてそこまで言わなくてはいけないのだと考えながらアウルは答える。

 当然、答えるときも遠慮があり黙秘をしようとした。

 だが相手の圧が答えざるを得なくする。

 そして答えさせられた内容が恥ずかしくフェアニの母親から視線を外してしまう。


「………我が家は呪われているのかしら?一度、お祓いをしてもらった方が良いわね」


 アムルは目の前の女性が何を言っているのか理解が出来ない。

 まるで妊娠してしまう行為に奔ってしまったのも家に原因があるような言い方だ。


「それで貴方はこれからどこに行くの?」


 これ以上は話を聞かせないためか話題を切り替えるフェアニの母親。

 アムルも聞かなかったことにして行き先を答える。

 どんな理由があろうとフェアニが授かったのはアムルの子供だ。

 それを呪われた家を原因にして否定するのは卑怯だと思っていた。


「今から服屋に行くんです」


「は……。ふ「家から追い出されて服はこれしかありませんし、退学になった以上制服を着続けるのも問題ですし……」……追い出されたの?」


「はい」


 のんきに服屋に行くことに文句を言おうとしたが家から追い出されたと聞き理由を知って怒りも消える。

 むしろ、追い出されてそんなに時間も経っていないと想像できるのに直ぐに必要な行動を起こしていることに感心してしまう。


「そう……。なら私たちの家に来る?」


「え?」


 目の目の女性が言っていることが信じられなかった。

 大切な娘を孕ませたのに受け入れてくれるなんて正気かと疑ってしまう。


「来るなら寝るときは縛らせてもらうけど、それで良いのならね」


 娘を孕ませた以上、当然の行動だろう。

 縛られていたとしても外で野宿するよりはマシだとアウルは頷いた。



「ただいま」


「お邪魔します」


 フェアニは母親の声が聞こえてきたことに帰ってきたのだと理解し、そしてお腹にいる赤ちゃんの父親の声が聞こえてきたことに首を傾げる。

 もしかして母親が連れてきたのかと想像する。


「お帰りなさい。でもアムルまでいるけど、どうしたんだよ?」


「彼は家から追い出されたみたいだから連れて来たのよ。それといい加減にその口調は改めなさい」


「やだね」


 母親の文句を流しながら顔はアムルに向けて心配そうにしている。

 実の両親に追い出されるなんてショックだろうと考えていた。


「でお前は大丈夫なのかよ?家族に追い出されてショックなら少しぐらいは癒してやるぜ?まぁ、妊娠させているし甘えても性行為はさせねぇけどな?」


「………性行為はしませんけど、お言葉には甘えさせてもらいます」


 フェアニは傷ついているように見えるアムルを自分に甘えさせようと考える。

 この身体でも男を逃がさないために何でもするつもりだ。

 ゆくゆくは自分に依存させたいと考えていた。


「そもそも身重の身体で性行為をしようとしたら私が怒るけどね」


 母親から聞こえてくる言葉に二人は身を震わせる。

 込められている怒りが感じられて押し黙ってしまった。


「それにしても追い出されたって聞いたけど、何も持っていないのか!?」


 話を変えようと話題を切り出すフェアニ。

 目の前の男の子が制服で荷物もほとんど持っていないことに疑問を抱いていた。


「はい。偶然、持っていた財布とスマホしかありません。他には何もないです。だから服も買いに行かないと行けないんですよね……」


 アムルの言葉に最低限、服ぐらいはいくつか渡して追い出せば良いのにとフェアニは思う。

 それだけ怒りが強かったのだと想像も出来てしまう。


「申し訳ないけど夫の服で我慢してくれないかしら?サイズが合わなかったら買う必要があると思うけど、多分大丈夫のはずよ」


 フェアニの母親の言葉にアムルは目を輝かせて頷く。

 正直に言って服を買うのにも学生のお金じゃ負担が大きいから助かる。


「ありがとうございます!!」


「気にしなくて良いわ」


 フェアニの母親からすれば本当に気にしなくて良い事だった。

 これから一緒に住む目の前の男の子には言っていないが夫を追い出したから使う者はいない。

 使わずにタンスの中のスペースを狭くするのなら着てもらった方が有意義だ。


「取り敢えずサイズが合っているか着てもらうわよ」


 フェアニの母親はそう言ってアムルの手を引いて案内する。

 その後に面白そうだからとフェアニも後を付いて行った。



「取り敢えずこれを着てみてくれないかしら?」


 場所を移動して服を渡されての言葉にアムルは困惑する。 

 せめて見えないところに移動して着替えようとしても後を付いてこられてしまう。

 恋人であるフェアニとその母親の前で下着になって着替えるのは流石に恥ずかしい。


「あの……?着替えたいのですが?」


「別に今更、男の子が下着になっても何とも思わないから早く着替えなさい」


「そうだそうだ!恥ずかしがってないでさっさと着替えろー」


 アムルが目の前で着替えるのは恥ずかしいと言うが、母親は下着姿になっても何とも思わないと言い娘は野次を飛ばす。

 下着姿を見せるのは嫌だとアムルも訴えているが、二人はさっさと着替えろと言うだけ。

 諦めるしかなかった。



「サイズも問題ないですね」


 そして目の前で服を着替えてアムルはサイズを確認する。

 目の前で着替えてもフェアニの母親は何も反応はしなかったことに少しだけ気が楽になったが、フェアニは顔を赤くしていたのが見えていた。

 それを認識してアムルも顔を赤くする。


「あらあら」


 妊娠した以上、もうお互いの裸を見ている癖に初々しい反応をする二人に少しだけ微笑ましくなる。

 だけど同時にこれから一緒に過ごすのだから慣れろと思っていた。


「ところで、これから君はどうするの?その年齢だし働ける場所は少ないと思うけど」


「それでもバイトでも何でもして働ける場所を探します。自分の無計画が理由とはいえ子供が産まれますし、出来るだけ苦労せずに生活させたい。いずれは、この地から離れようと思っています」


 この地から離れるというのは良い意見だとフェアニの母親は思う。

 何時までも、ここに残っていたら学生妊娠をさせたと知っている者たちが後ろ指をさされるかもしれない。

 そうなって二人の子供が将来的に辛い思いをするぐらいなら賛成だった。


「それでも何年間かはこの地に残っていた方が良いかもしれませんけど……」


 その言葉にも頷く。

 あまりにも幼く見える女を妊娠させて出産させたことを移動した土地で見せるつもりはない。

 もしかしたら、その土地でもロリコンだと後ろ指をさされるかもしれない。


 だけど数年後には容姿があまり変わらなくても滲み出るだろう大人の雰囲気が問題にしなくなる可能性がある。

 そのぐらいなら年齢を聞かれない限り子供がいても問題にしないだろうとアムルたちは祈っていた。

 それまではこの土地で頑張ろうと気合を入れた。



「なぁ……」


「何ですか?」


「悪かった」


「は?」


 フェアニはアムルと二人は二人きりになると頭を下げて謝罪する。

 そのことにアムルは意味が分からず困惑する。


「何を言っているんですか?むしろ謝罪するのはこちらの方ですよね!?女性の負担も考えず妊娠させてしまったんですよ?」


「でも、最初に誘ったのは私だろ。そえさえなければお前も手を出さなかったんじゃないかと思うんだ。だから、ごめん」


「違います!!」


 人生を奪ってしまことになったことを謝罪するフェアニ。

 アムルはそれを否定する。

 たとえ誘われたとしてもアムルは自分の意志を手を出したのと思っている。

 だからフェアニだけが悪いとは思っていなかった。


「ありがとう。でも、お前は家から追い出されたんだろう?私とは違う。子供を授かっても親は家に置いてくれる」


「関係ないです。成人前の女性を妊娠させたから追い出されて当然で、むしろ受け入れてくれたことが不思議です」


 アムルの言葉にフェアニは気まずそうに顔を逸らす。

 何で首を傾げられたのかアムルは想像が出来なかった。


「それは多分、今回の件に関しては自分のせいだとも思っているからだろうな?」


「………どういうことでしょうか?」


 アムルは今回のことは何も考えずに行動した自分とフェアニのせいだと考えている。

 実際にそうだと思っているし、何でフェアニの母親も悪いと思っているのか理解が出来ない。


「………私ってこれじゃん」


 そう言って見せる自分の身体。

 アムルは誘ってんのかなと思う。

 服は着たままだが、そんなことを言われると想像してしまう。


「おい……」


 そんなアムルにフェアニは軽く蹴った。


「そういう意味じゃねえ。私の身体が他の奴らと比べてもかなり貧相だって話だ」


 フェアニの蹴りで落ち着いたアムルは冷静になってフェアニのスタイルを眺める。

 たしかに本人の言ったとおりに貧相。

 もっといえば同学年で最も女らしくない身体だ。

 成長が昔に止まっているんじゃないかと考えてしまいそうになる。


「………たしかに」


 真顔で頷いたアムルにフェアニは更に蹴りを入れる。

 わかってはいたが、わかっていてもムカついたからだ。


「………その私にのせられたとはいえ手を出した癖に」


「女性としては肉体はともかく内面に惹かれたので……」


 アムルの言葉に顔を赤くしてフェアニは蹴る。

 そしてベッドへと顔埋めて隠す。


「何で顔を隠しているんだ?」


 うるさいと拒絶するフェアニ。

 それにアムルは意味がわからないと不思議そうな顔をしていた。



「そろそろ機嫌を直してください……」


 ずっとベッドに顔を隠していると困ったように声を掛けられてフェアニはチラッとアムルの方を見る。

 そこには緊張した表情をして少しだけ落ち着いたフェアニも興味を持った。


「フェアニの父親は何時頃に帰ってくるんですか?」


「………家から追い出されたんだよ」


 ますます意味が分からなくアムル。

 いってはあれだが普通は追い出されるのはフェアニなんじゃないかと思ってしまう。


「………さっきの話の続きだけど私はこの身体だから昔から孫が出来ないと結婚相手もいないと言われてきたんだよ」


「は?」


「まあ、だからこそ私もどんな手を使っても男とか欲しかったんだけどな」


「は?」


「それでも、どんな手を使っても基本的に幼い子供が行動しているとしか思われなかったんだけどな……」


「は?」


 同級生相手にも色仕掛けをしていたことを嫉妬し、相手にされていないことに安堵し、それに欲情して最後までシた自分に少しショックを受ける。

 周りは子供扱いしているのに女と感じた自分の違いに他人と価値観が違うと自覚したのもあった。


「だから嬉しかった。お前が私を欲情を抱いたことも……」


 そしてニヤリと笑うフェアニ。

 それにアムルは理性が吹き飛ぶ。


「先輩!」


「やめろ」


 押し倒したアムルにフェアニは頭をぶん殴る。

 ヤる気は一切無いし身体を許す気は一切ない。

 スるとしても子供を出産してからだとフェアニは決めている。


「おごっ………」


 アムルはフェアニの本気の一撃を受けて方から床へと崩れ落ちる。

 そしてフェアニはため息を吐いた。


「フェアニ?どうしたの?」


「気にすんな。ちょっと躓いて転んでしまっただけだ」


 部屋の外から聞こえてくる声にフェアニは平然と嘘を吐く。

 流石に理性をいきなり失くして襲われそうになったとは言いたくなかった。

 この家から追い出したくない。


「そう?部屋を片付けておきなさいよ」


 それで納得してくれた母親に感謝し、フェアニはアムルを自分のベッドの上に寝かせる。

 流石に倒れたままに放置をするのはダメだと考えていたからだ。


「さてと………」


 そしてフェアニも自分のベッドの中に潜る。

 何となく人肌が恋しくなってしまったせいだ。

 起きるまで寝顔を見続け、起きたら腹の子供に悪影響だと言ってやろうとフェアニは決める。


「………絶対に逃がさない」


 フェアニはアムルの身体を腕を足を拘束してベッドの隅に縛り付ける。

 その後に自分自身も逃がさない様に抱き着いた。 

 そして起きるまで気絶して意識が無いアムルの顔を眺め続けていた。



「あっ、起きた?」


 アムルが目を覚めると目の前にフェアニがいた。

 思わず抱き締めようと思うが両腕両足が動かない。

 拘束されていた。


「えっ?」


「アムル、私は子供がお腹にいるから無理をさせようとしないで」


 ジト目で言われた言葉にアウルは意識を失う直前のことを思い出す。

 確かに蹴られたが自分も悪いと自覚していた。


「すいません。それで……」


 それなのにまだ言いたいことがあるのかとフェアニはアムルを睨んだ。

 何を言いたいのか興味を持つ。


「何時まで俺を拘束しているんでしょうか?いい加減に外して欲しいですが」


「嫌よ。もう少しこのままでいて」


 やわらかい体を圧しつけられてアムルは感触を味わう。

 だが身体を動かせず生殺しだ。


「ふふっ」


 そしてフェアニはアムルが起きているのにも関わらず更に身体を押し付ける。


「うわぁ………」


 それをフェアニの母親が見ていた。


「あっ」


 フェアニは見られたことに冷や汗を流し、アムルは助けてくれてと目で訴える。

 母親は何も言わずに扉を閉めて部屋から出て行った。




「はぁ……」


 フェアニの母親は娘の部屋から出てため息を吐いた。

 正直に言って、アレを見て本当の被害者は娘ではなく向こうの方なんじゃないかと考えてしまう。

 手を出したのも薬を使って自分を襲わせたんじゃないかと想像する。


「どうして、あんな風に育ったのよ……」


 自分より年下の男の子を縛って抱き着くなんて色々とヤバイと考えている。

 自分にそんな趣味も無いし追い出した夫にもそんな趣味は無かったから、どこで受け継いだのか疑問だ。


「あの娘、男勝りだし孫の教育には私も直接手伝った方が良いわね」


 フェアニの母親の中では真実は娘が薬を盛って子供を授かったのだと確信していた。

 それでも被害に合った男の子を真実を話して逃がそうとしないのは、子供には両親が必要だと考えているからだ。

 幸いにも男の子も自分にも責任があると思っているから決して余計なことを言わない様に心掛ける。


「やっぱり私たちのせいよね………」


 娘があんな風になったのは自分達両親のせいだと母親は考えてしまう。

 フェアニも言っていたが何度も何度も孫が出来ない、結婚できないと言ってきた。

 そのせいで、どんな手を使っても逃がさない様に拘束の術を覚えたのではないかと想像する。


「ごめんなさい……」


 でも、そのお陰で期待できなかった孫も授かることが出来る。

 もしかしたら別の男が同じような目に遭っていた可能性がある。

 自分が犠牲になって他の者が助かったと考えて欲しいと祈っていた。


「おい勘違いするなよ!?子供がお腹の中にいるしシていないからな!それに拘束をするのは趣味じゃない!」


「いや嘘でしょ」


 前半はともかく後半は嘘だとフェアニの母親は即答する。

 趣味だからこそ、あんな風に縛れるし用意もしてあるんじゃないかと思っている。

 更に孫に悪影響が無ければ性的なこともある程度は見逃すから隠さなくても良いのだと告げる。


「性癖なんて人それぞれだから隠さなくて良いわよ。ただ出来るだけオープンしなければ良いだけで……。君も出来るだけ付き合って上げてね」


「はい………」


「ちげえから!!」


 母親の言葉に同意しているアムルにフェアニは自分の恋人にも拘束趣味があるのだと思われて焦る。

 拘束で連想すると言ったら監禁などであり、それをアムルもそれを連想したら逃げられてしまんじゃないかと考える。


「単純にムラっときて襲われない様にしただけだから!それで手を出されて子供が死んだら嫌だし!!」


 必死に言い訳をしていくフェアニ。

 だがアムルや母親からすれば、そのための道具があること自体が疑わしい。

 とはいえフェアニの母親もアムルが逃げようとしたら協力するつもりではあった。


「なら良いけど……。とりあえず子供が産まれるまでの間は添い寝であろうと二人で寝ようとしないでね。それでお腹の子供を死なせたら次は本気で追い出すわ」


 母親の言葉に二人は頷く。

 本気で言っているのを感じた。


「そういえば子供の名前を考えた?」


 子供のために気を引き締めようと考えていると、子供の名前を聞かれて顔を赤くする。

 そして自分達の子供がいるということに意識を割き過ぎて名づけるのを忘れたことに気付く。


「まだ考えていませんでした」


「そう。まぁ、一生ものだしね。良い名前を付けて上げなさいよ」


「わかっているよ……」


「あとその口調も子供が産まれたらやめなさい。真似したらどうするの?」


「………わかったわよ」


 子供が産まれるのだからという、ここぞとばかりに言う母親の不満を受け入れるフェアニ。

 流石に子供が自分と同じような口調になるのは抵抗がある。

 男の子だとして自分に言われたらショックを受けるし、女の子だったら猶更だ。


「…………なにかしら?」


 それを理解してもフェアニは母親に対して口調を改めようとする気にはならない。

 流石に子供がいる前では控えるが二人きりの場合は変われない気がする。

 むしろ我ながら更に攻撃的な口調になる気がした。



「先輩、子供の名前なんですけど……」


「何か思いついたの?」


「………」


 フェアニの口調にアムルは固まる。

 いつも強い口調なのに急にやわらかい口調になっていることに驚いたせいだ。


「何を急に固まっているのよ?」


「すいません。いつもと口調が全く違うので……」


「別に良いじゃない。それよりも名前は……?」


 口調が変わったからこそ雰囲気も変わったように見えアムルは驚いたのだが、フェアニはそんなことよりと子供の名前を聞く。


「男の子ならフォル。女の子ならテミスにしたいです」


「どういう意味を持たせているの?」


「どちらも正義をつかさどる神の名前から取りました。俺たちみたいに勢いのままに行動するんじゃなくて誰にでも認められる方法でちゃんと幸せを掴んで欲しいですから」


「そういうこと………」


 アムルの言葉にフェアニは納得する。

 勢いのままではなく少しづつ時間を経過して進んでいけば学校を退学することもなかった。

 焦って行動に起こした自分に怒りを抱く。

 そして、たしかに子供たちには自分達の様にではなく正しい道を進んで欲しいと思う。


「私もその名前に賛成よ。それじゃあ子供のために頑張って仕事を探してね。パパ?」


 アムルはフェアニのパパに顔を赤くする。

 そして少しでも楽になってもらうために頑張ろうと決意した。






「おめでとうございます!!女の子ですよ!」


 月日が経ちフェアニから二人の赤子が産まれる。

 元気な鳴き声を上げる赤子は女の子だった。


「生まれてくれてありがとうテミス」


 女の子だったらテミスという名前を付けたことを思い出すフェアニ。

 その名の通り正しく生きて欲しいと思いフェアニは意識を落とした。



「あうー!」


「はははっ。よしよし」


 フェアニの意識が戻ると楽しそうな声が聞こえてくる。

 目を覚ますと夫が娘を可愛がっている。


「私にも抱っこを指せてもらって良い………」


 フェアニの声が聞こえてきたことにアムルは起きたことを理解し頷く。

 そして娘を近づける。


「あー!!」


 テミスをフェアニへと近づけると楽しそうに母親の顔を叩くテミス。

 子供だからあまり力はなくペチペチと音がするだけ。

 あまりにも可愛くフェアニは今出せるだけの力を込めて頭を撫でる。

 自分の腹を痛めた子供だから愛おしくてしょうがなかった。


「うあー?」


 そうすると嬉しそうに笑う我が子。

 本能的に母親が誰かわかっているみたいだ。


「それじゃあ時間だし、また来るよ」


「そう………。頑張ってね」


「あぁ。早く一緒に家で過ごすのが楽しみだ」


 ほとんど会話をしていないのに、そろそろ帰らないといけない時間だと言われてフェアニは少しだけ寂しく思うがアムルの言葉に退院すれば、また一緒に入れることを思い出す。

 出来れば早く退院したい。


「早く一緒に家族皆で過ごそうね?」


「う?」


 娘の反応が可愛くて、ついついニヤケてしまいそうになった。



「お帰りなさい」


 そしてフェアニが娘と一緒に帰ってきて出迎えたのは母親だった。

 アムルは仕事らしい。

 それがフェアニは少しだけ残念に思う。

 早く家に帰ってこないかと思ってしまう。


「フェアニ。真面目な話があるから座りなさい」


 真面目な話と聞いて素直にフェアニは従う。

 腕に抱いた我が子を捨てるなり、アムルと引き離されるなら全力で抵抗するつもりだ。


「確認だけど私たちはお金が溜まったら、この地を出て新天地でやり直そうと思っているわ。貴女もこの住み慣れた地を離れる覚悟は出来ている?もう二度とこの地には戻ってこないから、これまでの友人にも会えないだろうけど」


 母親の提案にフェアニは安堵の息を吐いた。

 想定した最悪なことでは無かった。

 むしろ、それぐらいなら喜んで受け入れる。

 

 病院では、この身体で年齢で子供を産んだことで冷たい視線を何度も向けられていた。

 それが辛かった。

 この土地では既に知られていてどこでもあんな視線を向けられるなら、この土地を離れたい。


「別に何も問題は無いわ。取り敢えず今はお金を溜めながら良い土地を探すってことで良いわよね?」


「そうね。取り敢えず貴女は内職でお金を稼いでいなさい。私とアムル君は外で出稼ぎに行くから」


 働ける三人で金を稼ぐことに頷くフェアニ。

 取り敢えず自分が内職で良かったと思う。

 お陰で娘と触れ合える時間を確保できる。


「それと言っておくけど子供はこれ以上は増やさないでよ。今はお金を貯める方が大事。妊娠したら、それが長引くしお金の費用も増えるわ」


 つまりスルにしても避妊してやれだという意味だとフェアニは理解する。

 今度こそは本能に流されないと決意する。


 それに今回こそは大丈夫のはずだ。

 何度か襲われない様に縛って添い寝をしていた。

 最悪の場合、もう一度縛れば良い。

 そうすれば安全だ。


 子供がどうしても欲しければ、この土地を離れて別の土地に住み慣れてから授かれば良い。

 その為にはお金が必要で更に稼ぐ意欲がフェアニは湧いてきていた。

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