五話
「少し良い?」
「どうしましたか?」
ギネカは事務所に入ると事務員に文句を言う。
内容は当然、薬のことに関してだ。
「嫌われる薬って言ったわよね!?確かに嫌われてたけど目の前にいた相手には嫌われず、むしろ呪われているんじゃないかと心配していたわよ!!」
「へぇ……」
ギネカの言葉に事務員は面白そうに笑った。
「ひっ!!?」
「事務員さん?」
突然、笑ったことにギネカは怯えイラと呼ばれていた幼い女の子は不思議そうにしている。
幼い女の子がいることに気合を入れギネカは平然としているように装う。
「面白いですね。あれは感情が変化しても自覚は普通はしないはずなのに。もし気づいても気にしない筈なんですよね……」
感心したように言う目の前の事務員にギネカは文句を叫びそうになる。
だが次の言葉で黙る。
「それだけ情の深い相手がいるんですね。素晴らしい……。貴女も不満があるでしょうが納得してください。代わりに何かで補填しますから」
復讐相談なんて趣味が悪いことをしている目の前の相手も同じようにフェアニの母親の行動に素晴らしいという感情を抱いたことに共感してしまった。
それに思った通りの結果が出なかったことに変わりの何かで補填すると聞いたからだ。
「他の補填って何よ?もし決めていなかったら薬の分の代金と監禁するための部屋ぐらいはタダにして欲しいのだけど」
「良いですよ?あぁ、それと監禁部屋に関してはまだ時間が掛かるので待っていてくださいね?」
あっさりと自分の提案が受け入れられたことにギネカは驚いてしまう。
かなりの損をするはずなのに受け入れた理由が分からない。
「先程、面白い者に教えてもらったからですよ。そのお礼です」
相手は結婚して子供もいる。
それなのに手を出すつもりなのかと事務員を睨む。
そもそも相手は自分の復讐相手の母親だ。
尊敬の念を抱いてもそこは変わらない。
「もしかして人妻趣味?」
「違いますよ。ただ薬の効果を無効化したことに興味があるだけです。これ以上強力にするべきか、それともこのままで例外の一つにするべきか、少し悩む」
父親の反応とアムルの家族の反応から例外にするべきだろうとギネカは思う。
実際、アムルの両親は当たり前のようにアムルを嫌いはじめた。
「ふぅん。そういえば、あの薬の効果って何時まで続くのよ?薬だしいつかは効果が消えるんじゃないの?」
「一ヶ月は続きますよ?それ以上に時間を掛けるなら、また飲ませないと行けませんね。もしかしたら必要は無いかもしれませんが」
事務員の言葉にどういうことかとギネカは視線を向けて説明を求める。
薬の効果が切れたら、元通りになるんじゃないかと考えている。
「一ヶ月もずっと嫌っていたら、それが普通の状態になると思いますよ。それに虐めや嫌がらせをするでしょうし。その行為によって優越感も感じるでしょうから、それを味わい続けるために止めないでしょうね?」
「はぁ……?」
ギネカは虐めたことも虐められたことも無いから事務員の言葉は理解できない。
虐めているからといって相手より優越感を感じるなんて意味がわからなかった。
そして嫌っているからといって虐めるのはおかしい。
嫌っているのなら虐めをしてないで関わらなければ良いと思っている。
「ねぇ。それって私が何もしなくても周囲から嫌われ傷つけられていくってこと?」
「そうなると思いますよ?」
どちらにしても継続的に嫌わせさせようと考えていたが、そこまで必死に考えることは無いと聞いて安堵する。
他にも考えること、やることがあるから余裕が出来るのは喜ぶところだ。
これなら虐め嫌がらせが当然になるのなら簡単に二人を苦しませ追い詰めることが出来る。
子供の出産をするなら最悪な環境だが、母親のせいだと諦めて欲しいと考える。
「そうだ!!」
「キャッ!!」
ギネカは何か思いついたのか急に立ち上がる。
イラは突然立ち上がったことに驚いて運んでいた飲み物をこぼしてしまい濡れてしまう。
自分が急に立ち上がったせいで幼い女の子がずぶ濡れになったことに顔を青くする。
慌てて立ち上がった勢いのままにイラの元へと駆け寄ろうとしていた。
「安心して下さい。ずぶ濡れになりましたが、それ以外の被害は有りません。イラももう奥に戻って服を着替えてきなさい。一人でも大丈夫だろ?」
「はい……」
「こぼしたことに怒っていないから、そんなに落ち込まない。それよりもそのままだと風邪を引くから、さっさと着替えない」
心配そうに声を掛けてくる事務員に怒られるわけじゃないと安心してイラは落としたオボンや割れたコップをそのままに事務所の奥へと消えていく。
その姿に事務員は苦笑し魔法で破片や濡れた床を片付け始める。
「さてと……。何を思いついたのでしょうか?」
そして片付け終わったらギネカに視線を向け、何を思いついたのか質問する。
復讐相談事務所という名前をしていることもあり協力できることは協力したいと考えていた。
「質問だけど相手が、この地から離れない様にすることが出来る?」
「逃げないようにするということですか?それなら大丈夫です」
ギネカの質問に事務員は肯定する。
そのことにギネカは安心する。
この地から離れ逃げて行ったら復讐するのも難しくなる。
きっと一からやり直して何も無かったことにするのだろうと想像して許せなかった。
「良かった。それなら苦しめることが出来る」
安心したように笑うギネカ。
その為の道具は渡さないのかと首を傾げる。
「相手を逃がさないためには私が直接行く必要があるので道具は無いのです。どうかご理解していただきませんか?」
本当は少し不満だがギネカは納得することにした。
どれだけ自分が復讐を望んでいても結局頼りにしているのは事務員の力だ。
しょうがないと受け入れるしかない。
「それでどこの誰に、この地から離れない様にすれば良いのか案内してもらえませんか?流石に分かりませんので」
ギネカは事務員に教えるのは自分の獲物が奪われそうで何となく嫌だった。
だから複雑そうな表情を見せるも、相手はこちらのことを気にせずに頷くのが当然だと思って視線を向けている。
それにギネカはため息を吐いて頷くことにした。
「イラ!これから私はお客様と一緒に出掛けてくるけど、何があっても事務所の外に出てはいけませんからね!?事務所内にいる限り安全ですから!?」
「え……」
ギネカは幼い女の子一人事務所に置いて出かけるということに戸惑いを覚えてしまう。
正直に言って心配だ。
安全だと言われても自分のせいで一人置いていくのは不安だった。
少しぐらい待つことは出来るから一緒に来れないかと思ってしまう。
「あの……?」
「どうしましたか?」
「少しぐらいは待てますので彼女も一緒に来れませんか?幼い女の子一人を置いていくのは不安になるんですが?」
心配そうな表情をしているギネカに事務員は、優しいと思いながら言葉に甘えることにする。
イラも仕事の邪魔をしないだろうし一緒に連れて行こうと決める。
「ありがとうございます。それじゃあ待っててもらえませんか?」
相変わらずマントを被っているせいで顔は見えないが安心したような雰囲気を感じる。
そこことに大事にしているのだろうと思えてギネカも安心した。
「それではこれをちゃんと被ってくださいね?」
「はい!」
「分かっているわよ」
イラが着替え終わって出てくると事務員とイラとギネカの三人で事務所から出て行った。
先導しているのはギネカであり、今からフェアニの家へと向かう途中だった。
「えへへ」
イラは事務員と手を繋いでおり、嬉しそうに歩いている。
醸し出している雰囲気の年齢から事務員は自分と同じぐらいの年齢だとギネカは考えているが、それにしてはかなり懐いており家族なのかと疑問に思ってしまう。
そうだとしたら、何て仕事を幼いころからさせている家族だと考えてしまう。
「本当に手を繋いで歩くのが好きですね?」
「うん!前の家族は私を怖がって手を繋いでくれなかったもん!!」
「ちゃんと愛情を持って行動していたら、そんな不安を持つ必要も無かったのにね?」
二人の会話に前の家族とはどういうことだとギネカは疑問に思ってしまった。
血が繋がっていないのかと考え、どういう関係なのか不思議に思う。
「ねぇ、さっきから話が聞こえてくるけど二人はどんな関係なの?」
「ええっと……。むぎゅ!」
イラは疑問に答えようとして口を抑えられてしまう。
相手は事務員でギネカはイラの口を抑えられ詳しいことを隠されたがしょうがないと納得していた。
むしろ軽々しく教えようとしたイラが不安になる。
「申し訳ありませんがプライベートのことなので秘密です」
事務員は有無を言わせないように圧力を掛けてくるがギネカは当然のことだろうと頷く。
今回の件が終わったら、関わることのないだろう他人のプライベートに深くまで関わるつもりはない。
それでも漏らしていた言葉である程度は推測できてしまうのが辛かった。
前の家族と言っていたしイラという女の子は捨てられてしまったのかと想像できてしまう。
あんな小さくて可愛い子を捨てるなんて、どんな親だと興味を持つ。
一度、見てみたいと思っていた。
「ここです」
そしてギネカはイラのかつての両親に思いをはせながらも目的まで案内できていた。
家の前に堂々と立っているが姿を消すマントを被っているため誰も疑問に思わない。
「………一人一人魔法をかけるのは面倒だから敷地内の者全員に掛けるか」
「………?」
事務員が何か口にするとフェアニの家の地面が一瞬だけ光る。
これはバレたんじゃないかとギネカは冷や汗を流す。
「それじゃあ戻りますよ」
「………っ」
本当に大丈夫なのかギネカは疑問に思い口に出そうとする。
「どうせ光っても見間違いだと思われる。安心しろ……」
耳元で事務員に呟かれ何も言えなくなる。
ギネカは呟かれた瞬間から事務員の言葉を疑うことが出来ず信じ切ってしまう。
これまでも力になってくれたし、事務員がそう言うのなら間違いないのだと、そう思う様になっていた。
「ねぇ、フェアニ?貴女のお腹の中に赤ちゃんがいるってホント?」
そして翌日、学校ではフェアニに対して多くの者が集まっていた。
目的はフェアニのお腹にいる赤ん坊についてだ。
学校に来ている全員がフェアニのお腹の中に赤ちゃんがいることを知っている。
「………何を言っているだ、お前?」
そしてフェアニは誰にも言っていない。
知られたのも母親だけのはずなのに何で学校の皆が知っているのか疑問だ。
どこで漏れたのか想像も出来ない。
「あと父親は一年生のアムルっていう子なんだよね?出産するの?相手は養えないと思うけど大丈夫?」
「…………」
フェアニは父親まで特定されていることに冷たい汗が流れる。
本当にどこからそんな情報が流れているのか不思議だ。
「私が妊娠しているって誰が言ったんだよ?しかも何でお前ら信じてんの?」
「……?誰がとかじゃなくて皆知っているよ?」
誰が、どうして知っていて学校の皆に伝えたのか疑問だ。
妊娠していることを知っているのは母親だけ。
それでも知ったのは家で検査薬を使っての結果だから、まだ病院に行って調べてもらっていない。
だから病院で働いている家族から教えてもらうことはあり得なかった。
残ったのは母親だけだが、それもフェアニはあり得ないと断じる。
子供を産むことに協力してくれると言ってくれたのに、周りに伝えるのは嘘になるからだ。
興味深い視線に晒されてストレスが溜まってしまいそうだ。
アムルもいるが、子供を授かるようなことをしたのは一回だけ。
そして妊娠したことも伝えていないから、アムルもあり得ないと判断している。
「皆って、いつからよ?昨日まではそんな素振りは無かったじゃない!」
「あれ?」
フェアニの疑問を聞いていた者たちは、自分達も何時から知っていたのかと疑問に思ってしまう。
気付いたらフェアニがアムルとの間の子を妊娠していることを知っていた。
そして、それは他の皆も同じで背筋が凍ってしまう。
全員が言われるまで気づかずに当たり前の情報としてインプットされていた。
まるで洗脳されてしまったような恐ろしさに皆は考えることを止めてしまっていた。
「………それで産むの!?」
恐怖から思考を止め、別のことに意識を割こうとした内容がそれだった。
先程までの話題とあまり変わっていないがクラスメイトからすれば、どうして自分達が知っているかより赤ちゃんを産むかどうかの方が気になってしまう。
自分の身近な相手が学生出産するかもしれないという話題なのだ。
アムルもフェアニもバカだとは思っているが産まれてくる子供に罪は無い。
出産するまではフォローしようとは思っている。
「フェアニ!先生が職員室に呼んでいる!」
だけど、きっと退学処分を受けて学校からいなくなるのだろうと予想してしまっていた。
いまだ学生なのだ。
それなのに子供を授かって育てられるのかと呆れてしまう。
学校側も学生が妊娠したとして風紀が乱れていると思われたくなく追い出すかもしれない。
もし、そうなったら笑ってやろうとは思っていた。
「来たか……」
職員室には学校に在籍しているほとんどの教師とアムルがいた。
呼ばれたことで色々と予想はしていたが、やはり妊娠したということについて確認するために呼ばれたのだと理解できる。
「君たちが子供を作ったという噂が流れているが、どういうことかね?」
「え!?」
アムルは子供が出来たと聞いて顔を赤くしてフェアニを見る。
まさしく心当たりがあるような反応に事前に会って話を合わせることが出来なかったことを悔やむ。
「その反応は心当たりがあるみたいだな……」
学生なのに子供を作ったということに怒るような視線を向けられる。
だがフェアニは、まだ何となると思っていた。
「別に恋人なんだし関係ないだろ。誰だって恋人同士ならやっているし。それよりも何でアンタらも妊娠したっていう証拠も無しに怒ってんだよ。クラスの皆もそうだったけど証拠も無しに思い込みだけで確信しているのは何なんだ?大人だけクラスの連中とは違うと思っていたけど勘違いだったな」
「なら、子供は授かってないと……?」
「だから何で子供を授かったと思っているのか疑問なんだけど?」
フェアニの答えに教師の一人は腹を叩こうとする。
それに対してフェアニは一瞬で距離を取り腹を護るように抑えている。
「…………っ」
フェアニの顔は大切な者を傷つけられそうになって必死に護る顔をしていた。
それで教師の中でも特に子供がいる女性は妊娠をしているのだと直感する。
「ねぇ、フェアニちゃん?」
「何だよ……?」
「私は結婚していて子供もいるわ。だから今の行動と表情で妊娠していることが察することが出来るの」
その言葉にフェアニは顔を青くする。
本当ならもう少しの間、学校に通いながら隠すつもりだった。
だが自分よりも色々と経験している大人の女性もいて隠し通すことは出来なかった。
「そうか……!そうか……!!」
まだ学生なのに子供を授かったことに教師たちは怒りを抱く。
そして他の生徒たちも同じようなことを起こさないために見せしめとして校内の二人の名前と顔を晒し退学にする理由を公表しようと決める。
また必要とあれば謝罪会見もしようと考えていた。
上手くいけば学校側は何も悪くないのに、ごく僅かな一部の生徒のせいで謝罪することになったのだとイメージを持たれることが出来そうだった。
「あれ?」
結局、アムルたちは授業が終わっても帰ってくることは無かった。
そのことにクラスメイト達は気分が良くなっていたが気になってしまっていた。
最後のSHRで確認しようと思っている。
「皆、いるな?」
そして担任の教師が教室に戻ってきて好都合だった。
忘れてしまわないうちにSHRが始まる前に確認しようと思う。
「すいません、アムルがずっと来ていないんですけど。何かありましたか?」
「あぁ。あいつは三年の先輩であるフェアニを妊娠させたからな。退学になった」
「「「「「「「「おぉ……」」」」」」」」
自分と同い年なのに相手を妊娠させたことに侮蔑を覚え、そして相手がフェアニだと知って嫌われ者同士いい気味だと思う。
そして同時に尊敬の念を向けてしまっていた。
「尊敬の念を向けてしまっているが真似をするなよ。退学になったら中卒だぞ。まともに就職できると思うなよ」
担任の言葉にクラスの者たちは背筋を震わせてしまう。
就職できないということは生きていくのも難しくなる。
想像するのも辛い。
そんな目にあうのなら避妊はきちんとすることを決意する。
「…………」
「ギネカ?」
そしてギネカは教師の話を聞いて顔をにやけさせる。
それを見た教師はそんなにアムルとフェアニが嫌いだったのかと想像して声を掛けた。
「何?」
「急に顔をにやけさせていたけど、そんなにアムルとフェアニ先輩のことが嫌いだったの?」
「アムルのことは嫌いじゃないわよ。フェアニ先輩のことは嫌いだったけど」
「そうなの?」
「えぇ」
ギネカは嘘は言っていない。
アムルのことはまだ好きだ。
だが自分からアムルを奪ったフェアニは嫌いだった。
「それにしてもアムルのことは嫌っていないなんて珍しいわね。何かあったとか?」
「特にないわよ。好きな理由も無いけど嫌いな理由も無いだけ。………フェアニ先輩は嫌いだけどね」
そういったギネカの表情は本気で憎悪を向けていた。
そのことに話しかけていたクラスメイトは女の勘が働いてしまう。
アムルのことが好きだったからこそ、アムルの子供を授かったフェアニを嫌っているのだと。
「もしかしてアムルのことが好きだったの?」
ニヤニヤとした笑みを浮かべるクラスメイト。
ギネカはそれに対して顔を真っ赤にして否定していた。
それが逆にクラスメイトに確信を抱かせてしまう。
そして同時に幸運だと思う。
アウルが別の女を妊娠させて退学になったことを。
もしかしたら目の前の友人が妊娠させられて退学になっていたかもしれない。
そうなるよりは別の女が被害にあって良かった。
嫌いな先輩より目の前の友人が大切なのは当たり前だった。
「まぁ、良いけど。それにしても妊娠なんてよくできるわよね?私だったら、学生だし怖くてまだ出来ないわ」
「そうね。折角だし、ディアロ様にも色々と話を聞きに行く?アムルたちと同じように妊娠して退学というのは嫌だし」
それもそうだと話が聞こえてきたクラスの皆はディアロとレイの二人へと詰めよる。
教師も同じで顔を青くして二人の元へと移動する。
「ディアロ!!」
「レイ!!」
会話が聞こえていたのはディアロとレイも同じ。
近づいてくるクラスメイト達に顔を赤くしたり、逸らしている。
「手を出したのか!?」
「うるさい」
ディアロに何を言われてもクラスメイト達は退く気は一切なかった。
何を言われたとしても照れ隠しだろうと思えるし、相手がディアロだからこそ興味がある。
是非とも色々と語ってほしいと思ってしまう。
「それでどうなの!?」
人前でキスをしたりしているのだ。
二人きりの時はもっとすごいことをしているのだろうと想像してしまう。
もしかしなくても避妊が必要なこともしているんじゃないかと思っていた。
「別にキスとか腕を組むぐらいしかしていないし……」
「「「「「「「嘘だ!!」」」」」」」」
レイの言葉に教室にいる全員が嘘だと判断する。
教師もだ。
絶対にもっと進んでいるだろうと思っていた。
「………事実だ。普段は作ってくれる料理を食べたり一緒に色んな所に出掛けたりとかしかしていない」
本当かと疑ってディアロに視線を向けるが肯定されてしまう。
妊娠させた前例がいるから信じられなかった。
「別に良いだろうが……」
信じられない者を見てくる視線にディアロは文句があるのかと逆に文句を言う。
妊娠させるようなことはしていないから別に良いだろうと思っていた。
それに対してレイは少し不満そうな顔をする。
別に手を出されても何も問題は無かった。
アムルとフェアニも問題なのは妊娠させたことで、ちゃんと避妊をしていれば退学になんてならなかった。
どうせ他にも恋人同士で最後までいっている者たちもいるのだ。
肝心なのは、ちゃんと避妊をすること。
レイは自分なら護れると考えていたし、いざ求められても時期が悪かったら拒否することが出来る。
そして幸いにも失敗した一例も同じクラスにいる。
だから自分は大丈夫だとレイは確信していた。
「はぁ……」
「どうしたのレイ?」
放課後になり、それぞれが帰ったり部活に行くなかレイは久しぶりに友達と一緒にいた。
「ほら今日、ディアロが私に手を出してないって言ったじゃない」
「そうだね。あれってマジ?」
「マジよ」
「こんなに綺麗なのにもったいな!」
「キャっ!!」
そう言いながらその友達はレイの胸を揉みしだく。
女子だけでなく男子もいる空間に胸を揉まれたことにレイは顔を赤くする。
そして腕の中から全力で逃げて胸を抑える。
「ディアロ以外の男がいる空間で胸を揉まないでくれる!?普通に見られるのは嫌なんだけど!?」
「ごめんごめん」
普通に男もいる空間で胸を揉まれたことに怒りを抱くレイ。
胸を揉みしだいた友達も、その形相に謝る。
「それにしてもディアロ様がいるなら良いんだ?」
「ディアロ以外に男がいない空間よ」
レイの言葉に友達たちも苦笑する。
思っている以上にレイの身持ちは堅かった。
「ところで質問だけど、どうすれば手を出してもらえると思う?」
「「「「………」」」」
その質問をされたことに友達たちは苛立ちを覚える。
この中に恋人がいるのはレイだけで、そんなこと分かるはずが無かった。
どうせならフェアニという先輩にでも聞けば良いと思っている。
「退学になったけどフェアニ先輩に聞けば?」
「名前は知っているけど、ほとんど赤の他人相手にそんなこと聞けるわけないじゃない。それに何処に住んでいるかも知らないし」
それもそうかと納得する友達たち。
たしかに色々と無理だ。
「それにしても気になったんだけど、フェアニ先輩って子供を産むと思う?」
「あぁ~、どうなんだろ?」
レイの疑問に友達たちも不思議に思う。
フェアニ先輩は年齢に対して幼すぎる身体を持っていることで有名だった。
常に強い口調でいるのも、そのことにコンプレックスを持っているのが見て分かる。
「どうせ、あの身体じゃ産むの無理でしょ。つうか、アムルがヤバ過ぎる」
誰もがアムルに対しての評価に頷く。
フェアニの身体で赤ちゃんを産むことに関しては危険だが方法はある。
だがそれよりもアムルに対して嫌悪感が湧いていた。
「フェアニ先輩。有名だから見たことがあるけど、本当に身体が幼い少女にしか見えないもんね。あれに欲情して孕ませるってガチのロリコンじゃん」
「絶対にフェアニ先輩じゃなくても問題を起こしていたよ」
「そうそう。それに今まで同じクラスで過ごしていたとかマジで無理なんだけど」
だよね~、と笑い合う友人たち。
本当に消えてくれて良かったと思う。
それでも出来れば早くに同じクラスで勉強していたことも忘れたかった。
「アムルのことで思い出したんだけどレイはそんなに手を出して欲しいの?妊娠したら退学だよ?」
「避妊すれば良いじゃない」
「「「おぉう……」」」
友人はレイに対して考え直すように退学のことを口にするが避妊すれば問題ないとレイは答える。
言いたいことはそういうことでは無かったが友人たちはレイの言葉に圧されてしまう。
「いや、そうだけど……」
何とか言い返そうとする友人にレイは首を傾げる。
何を言いたいのか分からない。
そもそも何度でも考えるが、他にも一線を越えた恋人が他にもいるはずなのだ。
それなのに妊娠して退学になっていないのは避妊をちゃんとしていたから。
それさえしっかりしていれば退学にならない。
「いくら避妊をしても妊娠する時は妊娠するんだよ?ゴムを付けてもピルを飲んでも妊娠するんだよ?」
「………そのぐらいは知っているわよ」
それなのに積極的に意見を求めようとするとか馬鹿なのかと友人たちは思う。
何をそんなに焦っているのか疑問だ。
「何をそんなに焦っているの?」
「………既成事実を作れば、ずっと一緒にいれると思って」
恥ずかしそうに顔を赤くしているが考えていることはえぐかった。
それに、それは結局退学になってしまうんじゃないかと考えてしまう。
「それは結局退学にならない?」
「別に赤ちゃんを授からなくても互いに裸でベッドの毛布に包まっている写真さえ良いわよ」
それは脅しじゃないかと友人たちは思う。
そんなことをしてディアロに嫌われないか考えて絶好のチャンスだとも思っていた。
もしかしたら、それが原因で別れて自分が恋人になれるかもしれないと考えて目を輝かせる。
積極的に協力しようとかと雰囲気になる。
「そうね。まずは薄着にして誘ったら?」
「ほぼ下着でいると服を被せられる。風呂を使う機会があったから裸で突撃しても狭くなると文句を言われる。ベッドに薄着で潜り込んでも抱き枕にされるだけだし、服をはだけさせて色っぽくしても無視される。もう直接抱いてと言っても学生で妊娠はマズいと言われて止められたわ」
ディアロ様は理性が強いなと友人たちは思う。
そして同時にそれだけ女が誘っているのに手を出さないのはヘタレだと思うし、女のプライドが傷つけられる。
レイにも友人たちは同情してしまっていた。




