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四話

「ここは………」


 結局その日、ギネカは復讐相談事務所を見つけれず外が暗くなったから家に帰った。

 家に帰ってもギネカは家族に心配されたが何でもないと返す。

 だが家族たちは何かあったんだと察して、それ以上聞かず黙っていた。


 そして夜、また明日も探そうと決意して眠りについたら、どこかの路地裏にギネカはいた。

 周りを見渡してみても、いくら暗くても記憶にない風景だった。

 そして何となく気になる方向へと歩いていくと明かりが付いている建物が見えた。


「こんな暗い時間に経営しているの?何て………」


 ここが何処なのか調べるのも丁度良いと名前を調べてみたら復讐相談事務所と書いてあった。


「もしかして夢?」


 少なくとも自分は家の中で寝ていたはずだとギネカは思い出す。

 今まで自覚していなかっただけで夢遊病だったのかと考えて否定する。

 もし夢遊病だったとしても外にまで出歩いて偶然、路地裏にまでたどり着いて、偶然探していた場所が見つかるなんて有り得ない。

 だから、今のこれは夢だと判断していた。

 そして探検気分でギネカは中に入る。


「こんばんわ」


 そこにはマントを被った男と二人の女、そしてメイド服を着た小さい女の子がいた。

 三人はともかくメイド服を着た小さい女の子は見ていてとても可愛らしく思える。

 思わず手を伸ばして撫でたくなる。


「イラ、飲み物を出して上げて」


「はっ、ハイ!!」


 イラと呼ばれたメイド服を着た女の子が奥へと引っ込む。

 それを見てギネカは小さい女の子一人だけでやらせるのかと不満を持ち、二人の女は心配そうに見ている。


「心配なら一緒に見てきて良いですからね?私は彼女から話を聞こうと思いますし」


 それなら早速と二人の女はメイド服を着た少女の後を追っていく。

 どうやら可愛がっているみたいでギネカは安心する。


「さて、それで復讐をしたくて来たんですよね?何をお求めで?」


 ギネカは事務員の男に話しかけられて考え込む。

 復讐したいとは思ってはいたがどう復讐するかまで考えていなかった。

 丁度良いと今ここで考える。


「ねぇ、妊娠させる薬はある?」


「無精子症などといった場合を除けば確実に妊娠させる薬がありますけど、それでよろしいですか?」


「えぇ!」


 ダメもとで言った薬が実在すると聞いてギネカは嬉しそうに手を叩く。

 これさえあればフェアニを妊娠させることが出来る。


「これを使って妊娠するつもりですか?」


「いえ、妊娠させるのは憎い相手よ」


 憎い相手を妊娠させると聞いて強姦させるつもりかと事務員は予想する。

 それなら犯されやすいように誘導する道具も渡すべきだと考える。


「それじゃあ、強姦されやすいように誘導する道具も使いますか?」


 強姦と聞いてギネカは首を傾げる。

 何でそんな提案が出てくるのか分からない。


「強姦?私は憎い相手が私の恋人との間に妊娠させるつもりだから強姦にならないと思うわ」


「???」


 事務員は意味が分からなった。

 どうして自分の恋人で憎い相手を妊娠させるのか理解が出来ない。

 普通はそれを防ぐんじゃないかと関g萎える。


「申し訳ありませんが、どういうことですか?」


 事務員に質問にギネカは本当なら教える必要は無いが道具を渡してくれることも考えて教えることにする。

 間違っていたら指摘してくれるだろうと考えたのも理由の一つだ。


「憎い相手も私と同じ学生。だから妊娠したら学校を辞めることになるでしょう?」


 ギネカの意見に事務員は少し考えて納得してしまう。

 たしかに妊娠したら学校を辞めさせられるのが想像できてしまう。


「それに上手くいけば家からも追い出されると思ったんだけど……」


 それは確かに有り得そうだと事務員は思った。

 だけど、それは恋人も同じじゃないかと考える。


「それは恋人も同じじゃないですか?」


「かまわないわ」


 恋人も家から追い出されるのにうっとりと笑うギネカ。

 何となく事務員は察して、それ以上は聞かないことにする。

 代わりに他の香水や道具を提案する。


「理性を失くして性欲を促す香水と姿を消すマントを使いますか?」


 姿を消すマントと聞いてギネカはそれは良いと手を叩く。

 それさえあれば簡単に薬を盛ることが出来る。

 是非とも使いたい。


「それじゃあ、それらの道具を使う場合、120万の金額を払ってもらいますけど、大丈夫ですか?一括にするか無利子のローンにするか選べますが?」


 最初は学生には無理な金額に文句を言おうとしたが無利子のローンと聞いてギネカは目を輝かせる。

 ただ期限のことを思い出していつまで伸ばせるのか疑問だ。


「期限のことも気にしなくて良いですよ。取り敢えずあなたが死ぬまでには貴女がどんな目にあっていても回収できますので。本来なら貴女が手にすることが出来たお金を、こちらに引き寄せるようにするだけですし……」


 そんなことが出来るのか疑問だったがギネカは夢の中だからと納得する。

 それに渡された道具が実際にそれだけの能力を持っていたら妥当どころか安いぐらいだ。


「お待たせしました!!」


 そしてメイド服の少女が持ってきたお茶とお菓子を口にして使った頭を回復させる。

 可愛い少女が一生懸命持ってきたことが分かりギネカは一層美味しく感じる。


「それでは、また。何か気になったことが有ったら来て下さい」


 その言葉と同時にギネカの視界は暗転した。



「ふわぁ……」


 ギネカは目が覚めると家のベッドの中にいた。

 やはり復讐相談事務所にいたのは夢だったのだと理解する。

 夢は自分の願望が形になると聞いたことがあるが、どれだけ復讐相談事務所に行きたいのかとギネカは苦笑した。

 そしてハッキリと見た夢を覚えていることに珍しいと思っている。


「うん?」


 そしてギネカは起き上がると違和感を覚える。

 昨日、眠ったときは自分のすぐ傍に何も置いていないはずなの直ぐ傍に見覚えのない道具がある。

 これは何かと調べてみると夢で見た道具だった。

 夢で見た復讐相談事務所で受け取った道具そのものだということにアレは夢ではないのかと思う。

 望んでいたとはいえ少し恐怖を覚えてしまう。


「………まさか本当にお伽噺の魔法でも使えるの?」


 理解できない現実にギネカは信じられない気持ちになる。

 だが欲しい道具は実際にそこにあり認めるしかなかった。


「そういえば姿を消せると言っていたわね……」


 ギネカはマントを手に取り本当かどうか疑問に思ってしまう。

 本当だったら容易く薬を盛ることが出来る。

 マントを使って家族から姿を消してみることにする。


「………まずは確実に起きているお母さんから調べてみるか」


 ギネカはマントを被って母親の前に出ることにする。

 これで目の前にいるのに何も反応が無かったら本物だと実感できる。

 香水や薬も同じように本物だと信じることが出来る。


「…………」


 そして母親の前にギネカはマントを被って出た。

 見えていたら家の中で何でマントを被っているのか質問するはずだ。


「……………」


 だが目の前にいても母親は何も言わなかった。

 何度母親の目の前に出るのを繰り返しても何も言わない。

 本当に見えていないのだとギネカは理解する。


「これなら香水や薬を確実に盛ることが出来るわ……」


 もう復讐相談事務所からもらった道具を疑うことは出来なかった。

 これだけの効果を持つ道具を渡してくれるなら薬の効果も本物だろうと信頼できるとギネカは笑みを浮かべる。

 アムルたちに早速使おうとギネカは考えていた。


「おはよう!!」


「あら、おはようギネカ。今日は機嫌が良いわね?何かあったのかしら?」


「えぇ!!」


 マントを脱いで部屋から出て挨拶をすると母親から返ってきた言葉にギネカは頷く。

 アムルを取り戻せるとギネカは考えて気分が良かった。




 そして数日後、未だにギネカは薬を盛る機会が無かった。

 姿を消して尾行をしているが家の外でデートをするのが基本で、偶に家の中にいてもどちらかの家族がいたりする。

 そうなったら邪魔をしそうでギネカは薬を使う気にもならなかった。

 それでも絶好のチャンスを逃さないために今日も尾行する。


「少し待っていろ」


 今日はギネカの家で二人はデートをしていた。

 今はまだ家の中に誰もおらず絶好の機会かもしれないとギネカは考える。

 今日も機会が無かったら復讐相談事務所に相談しようと考えていた。


「待たせたな。今日は家族は誰も帰ってこないからゆっくりして行け。いつもはからかわれるから気が楽に出来なかっただろう?」


「ぶっ!?」


 ギネカの言葉にアムルは口にしていた飲み物を吹き出し、ギネカは口元に弧を描く。

 絶好のチャンスが来たとギネカは考えていた。

 フェアニの手元にあるコップとアムルの手にしているコップに薬を入れ二人に香水を掛ける。

 これで互いに性欲のままに行動するはずだとギネカは予想する。


「何を口から飲み物を吹き出しているんだよ。もしかして、そういうことでも想像したのか?」


 胸元を開いてアムルに抱き着くフェアニ。

 それを見てギネカは能面のような表情になる。

 恋人が他の女とイチャ付くのは見ているだけで嫌だった。


「ふふっ。そんなに興奮しているのならスル?」


 フェアニの誘いにアムルが乗って手を伸ばしたところでギネカは家から去る。

 これで妊娠はしただろうなと考えた。

 後は子供が出来て追い出されるのを待つだけだ。

 生まれてくる子供は可哀想だが恨むのならフェアニにしてほしい。

 他人の恋人を奪った報いだ。


 ギネカはふと思ったが子供が出来ても自分の予想通りにいかない可能性を思い出す。

 フェアニはあんなに小さく貧相なのだ。

 彼女の家族も彼女の子供を期待していないのかもしれない。

 そう考えると、子供が出来ても追い出すどころが囲い込む可能性があった。


 妊娠の症状が出るのは時間が掛かる。

 それまでに時間はあるのだから、意図通りに動くように復讐相談事務所に相談しようと考える。


「また来てくださいって向こうも言っていたし大丈夫よね?」


 あれから夢のような経緯で復讐相談事務所に着いた以外は一度も行ったことが無い。

 ついさっきまでは必要が無かったからだが、今必要になった。

 もう一度行くために探す必要がある。


 そして、あれだけの道具があるのだから、もしかしたら意図的に相手を動かせることの出来る道具もあるかもしれないとギネカは考える。

 そして、もう一つ復讐とは違うが相談したことがあった。

 受けてくれるかどうかは分からないが、相談できるのは復讐相談事務所の者しかいなかった。



「あれ、ここは?」


 そして何となくギネカは路地裏を歩いていると見たことのある景色が目に映る。

 それは前に復讐相談事務所に着いた時と同じ景色だった。


「もしかして私、気付かない間に寝てる?」


 以前の経験から夢を介して復讐相談事務所に辿り着くのだと考えていたから、そう思ってしまう。

 事前の記憶が無いのは不便だとギネカは考えていた。


「お久しぶりですね」


 そして復讐相談事務所を見つけて中に入るとマントを被った男が出迎えてくれた。



「そうね。久しぶりね」


 ギネカは事務員に挨拶に久しぶりだと返す。

 そして早速、相談しようと思っていたことを話す。


「正直、フェアニ先輩を妊娠させても追い出されるのか不安。だから追い出すための案が欲しい」


「なるほど……」


 ギネカが望むのは確実に家から追い出すこと。

 憎悪を煽れば上手くいくかもしれないとフェアニは考える。


「それでは周囲の者に嫌われるようにすれば良いでしょうか?」


「そうですね……。嫌っている娘が妊娠したと知ったら家を追い出すと思いますし、それでお願いします」


「分かりました。それはフェアニ先輩という方のみにしますか?それとも貴方の恋人にもしますか?」


 事務員の質問にギネカは笑う。


「二人ともよ」


 当然、二人とも嫌われることをギネカは望んでいた。



「えぇ?」


 ギネカの答えにイラは困惑する。

 恋人相手にも周囲から嫌われるのを望むのは理解が出来なかった。


「あら?どうして私が恋人にも周囲から嫌われるように望むのか分からない?」


 それを察したのかギネカはイラに声を掛ける。

 それにイラは頷くとギネカにこちらに来るように声を掛けられる。

 それに答えるべきか事務員に視線を向けると首を縦に振られてしまう。


「理由は簡単。周囲を敵だらけにして味方は自分だけだと思わせるためよ」


 ギネカの答えにイラは首を傾げる。

 そんなことをして意味があるのか分からなかった。


「ふふっ。周りが敵だらけの中、唯一の味方が一人だけだったら依存しやすくなるでしょう?私の恋人が今度こそ別の女のところに行かせない様に私に依存させたいの」


 自分に依存したアムルを想像しているのかギネカは光悦の表情を浮かべている。

 事務員とイラは独占欲が強い女に捕まったのだと彼女の恋人に同情していた。


「なるほど。依存しやすくなる香水も渡した方が良いですか?」


「そんな物もあるんだったら是非お願いするわ」


 依存させやすくなる香水と聞いてギネカは即答する。

 依然のも合計するとかなりの金額になるのは予想できるが後悔は無かった。



「それともう一つ相談したことがあるけど大丈夫かしら?」


「かまいませんよ?」


 他にも憎い相手がいるのだと事務員は予想して頷く。

 それでも珍しい事だから興味深くなる。


「私の恋人を、もう二度と他の女のところに行かせたくないのだけど良い監禁場所とか知らないかしら?」


 そして事務員はギネカの恋人に心底同情した。


「良い監禁場所ですか?将来的に一人暮らしをするなら、いくらでも手はありますが……」


「できれば今すぐに欲しいわ」


 ギネカの望みに事務員は頭を抱えたくなる。

 まさか監禁について相談されるなんて思ってもいなかった。


「一人暮らしを出来るようになるまで耐えた方が良いと思いますよ?」


「それでも私は出来れば今から欲しいのだけど……」


 ギネカの言葉にアムルは少し悩んでしまう。

 いっそのこと復讐相談事務所のように特定の者しか見つけれず入れない場所を作って渡そうかと思う。

 復讐でもないため本当なら相談を受けて何とかする義務は無いが事務員は協力しようと考えている。

 恐ろしくも感じたが怖いもの見たさが上回った。


「そうですね……。今すぐというのなら貴女にしか恋人が見えない様にしますか?」


「良いの?」


 出来るのかとは聞かない。

 姿を消してしまうマントがあるのだ。

 あってもおかしくない。


「そうだ………!!」


 急に事務員は良いことが思いついたと声を上げる。

 ギネカは姿を消すマントは確実に返してもらうと言っていたから、それかそれと類似したものは渡さないと思っていた。

 だから信じられない気持ちで聞き返したが、やはり渡したくなかったらしい。

 声を上げたのも姿を消すマントを渡す以外に良い案が思い浮かんだのだろうと想像できてしまう。


「まだ監禁するのは、まだ先ですよね?」


「そうだけど……」


「それなら出来る限り早く用意するので待っててもらって良いでしょうか?」


 事務員の言葉にギネカは頷く。

 無茶なことを言っている自覚はあるのだ。

 待つことぐらいは余裕だった。


「それは良かった。では用意が出来ましたら教えますので……」


 常識ではありえない道具を渡してくる場所だ。

 ギネカは期待して待つことにする。


「それと事務所の外に出ても意識は暗転して気付いたら家の中なんてことはありませんよ?更に言わせてもらえば夢を介しているわけではありませんし……」


 そういえばという感じの事務員の言葉にギネカは視線を向ける。

 夢でも無いのにどうして何処にあるのか知らない復讐相談事務所までたどり着けたのか予想できない。

 目の前の男が自分に何かをしたのではないかと考えてしまう。


「ちゃんと貴女は自分の足でここに来たんですから、道はちゃんと覚えていますよ。それでは、また」


 それを察して事務員にそう言われるがギネカは記憶にないから信じられない。

 だが実際に歩いてみて、記憶では始めて通った道のはずなのにどこを進んでいけば帰れるのかギネカは理解できていた。



「本当に謎ね……」


 ギネカは家へと帰る途中、貰った道具を手に取りながらため息を吐く。

 事務員の言う通り、家への帰り方を覚えており記憶が無いのに分かるのは変な感覚だ。


「それに、これらの道具もどうやって手に入れたのか。どうやって製造しているのか謎すぎるわ」


 普通に非合法な道具もあれば、現在の技術では出来るはずのない道具まで渡してくれる。

 姿を消すマントもそうだし、使われた相手に向けられる感情を狙ったものに変える薬も有り得ないものだ。


「あれだけの技術があれば世の中はもっと発展するだろうに……」


 おそらくは、これらの薬や道具は事務員が作っているのだろうとギネカは想像する。

 こんなものが出来ていたら、どんな形でも既に噂になっていてもおかしくない。

 それなのに聞いたことは一度も無かった。


 おそらくは製造者が隠して口止めさせてきたことが理由だろう。

 それをここまで完璧に出来るとしたら復讐相談事務所しかない。

 こんなことに技術を使うのは勿体ないと、頼っておきながらギネカは考える。


「それにしても敵意を向けてしまう薬か……。いつ使おう?」


 子供を妊娠したと分かってからか、それとも生まれた後に使うか悩んでしまう。

 生まれる前に使えば何てことをしたんだと親が堕胎させるかもしれない。

 そうでなくても感情的に追い出して出産出来ない状況に追いやられる可能性もある。


 そして生まれてしまってから使ったら子供に罪は無いとどちらかの両祖父母が引き取る可能性がある。

 それは子育ての経験もあるし安心できるかもしれないが、両親に会えず孤独を覚えるかもしれない。

 それに両親がいないということで虐められる可能性もある。

 もしくは学生妊娠をしたせいで退学になり、家から追い出され中卒で働ける場所がなく貧しい生活をする可能性があるし、生活が辛いからと捨てられることも考えられる。


 どちらにしても生まれてくる子供に罪は無いから困ってしまう。

 生まれてきて辛い目に遭うぐらいなら最初から堕胎させた方が良いか、それとも辛い目に遭うと分かっていても産ませるのか考えなくてはならない。


「ここはいっそフェアニ先輩に任せるか……?」


 出産させる前にギネカは薬を飲ませることに決める。

 本当に子供を産みたいのなら辛い目に遭っても生むだろうとギネカは考えたからだ。

 アムルが気になっているのなら引き取って上げるから安心して欲しいとギネカは思う。


「さて、どうなるかな?」


 ギネカは早速、姿を消してフェアニの家へと向かう。

 そして敵意を持たれてしまう薬を使おうと考えた。

 アムルはその後にするつもりだ。





「まさかね………?」


 フェアニは自分の身体の異変に心当たりがあり妊娠検査薬を使うことを決める。

 そして早速、使って見ると結果は陽性だった。


「あなた、それは何?」


 そして何故か母親にそれを見られてしまう。


「陽性……?誰に手を出されたの!?もしかしてアムルって子じゃないでしょうね!?貴女に手を出すなんて変態なのよ!今すぐに別れなさい!!」


 母親は娘が手を出されたことで変態がいたと悲鳴を上げる。

 それだけ娘には女としての魅力が無いと思っていた。

 だから手を出すとしたら余程の変態だと母親は想像する。


「何を言っているんだ?私にもちゃんと女としての魅力があるってことだろ?妊娠したというのは、その証拠だろうが」


 フェアニからすれば別れるなんて受け入れられなかった。

 少し成長したころから孫は望めない、幼児体型、子供は諦めろと言われ続けてきた。

 だから、それを覆せたことでアムルを逃がすことは考えられなかった。


「私はあんたが何を言ってもアムルと別れるつもりは無いし逃がさない。必要なら家を出て行ってやる」


 フェアニはギラギラとした眼を母親に向けて宣言する。

 自分に対して散々言ってきたのだ。

 前言を撤回する気は一切ない。


「あ………」


 母親は絶望していた。

 自分の娘が頑なに否定している理由が自分たちのせいだと理解してしまったからだ。

 そして、もしかして子供が産ませることが出来るのなら本当は誰でも良かったのだと考える。


 長い間ずっとフェアニに言い続けてきた言葉が娘をここまで子供を産むことを、結婚する相手を望んでいるのだと理解して心が壊れそうになる。

 娘を妊娠させることが出来るのは変態だけだと母親は思っているが、求めさせるようにしたのは言い続けてきた家族だった。

 もしかしたら何度も言われ続けてきたことで限界まで心が傷ついているんじゃないかと今更ながらに考えてしまう。


「どんな男の子がもう一度、確認する必要があるわね……」


 娘に手を出した以上、変態であるのは確実。

 だけど以前に会ったときは娘の良いところをしっかり見ていた記憶がある。

 もう一度、確かめて信頼にたる男だったら母親は二人をサポートしようと考えていた。

 取り敢えず信頼できるのであれば男の子の方は娘を妊娠させたことを黙っており、娘を妊娠させたことを聞かれても嘘を吐くように忠告しようと考えていた。



 ギネカはフェアニが検査薬で妊娠しているのを確認して真顔になる。

 恋人が別の女を孕ませていることに分かっていてもムカついていた。

 それでも母親が別れなさいと言っているのに無視をしたり、まだ学生なのに産む覚悟を決めていたことに少しだけ尊敬の視線を向ける。

 アムルを逃がすつもりが無いのは、やはり腹が立つが。


「知ったことでは無いわね」


 だけどギネカはやることは決めている。

 フェアニを周囲から嫌われさせようと決めていた。

 たしかに覚悟を決めているかもしれないが実際に経験したら、そんなことを言ってられなくなる可能性がある。

 自分からアムルを奪ったお前が悪いのだと口にする飲みものに薬を入れた。




「あら?」


 母親は急に娘のフェアニを忌々しく思えたことに違和感を持つ。

 先程までは後悔の気持ちを抱いていたのに急に忌々しく思ったのが自分のことながら変だと感じたのだ。


「何だよ?」


「私、急に貴女のことが忌々しく覚えたんだけど何か呪いに掛かっていない?」


「はぁ?」


 母親の疑問にフェアニは何を言っているんだと意味が分からないと首を傾げ、姿を隠して見ていたギネカはどういうことだと母親を見る。

 薬が効かなかったのかと考えるが、忌々しく覚えると言っていたから薬は本物だと理解できる。

 だからこそ何で理性的に話しているのか理解できなかった。


「こんなの相談できる場所なんて無いわね。急に嫌ってしまうようになるなんて明らかにおかしいわ」


「何を言っているんだ……?」


 フェアニは母親の言っていることが理解できない。

 狂ってしまったんじゃないかと考えてしまう。


「フェアニ、私が貴女がどんな手を使っても子供を産もうと結婚しようとしていたのを聞いて、申し訳なさと責任を感じてサポートしようとさっきまでは思っていたわ」


「………」


 急な自分語りにフェアニは目の前の女は何を言っているんだと思ってしまう。

 どうせ自分には何も期待していないのだから、自分も助けなんていらないと思っていた。

 それなのにサポートしようとするなんて何のつもりだと考えてしまう。


「だけど急に貴女に対して感じていた申し訳なさと責任が消えて忌々しさを覚えてしまっているわ。貴女を前にしての急激な変化だから気付いたけど、明らかにおかしいわ」


 ギネカは母親の言葉を聞いて失敗したと理解する。

 薬の効果が強すぎるのもあるが、目の前で当人がいて感情の変化を自覚させてしまったことが原因だった。

 少なくとも目の前でやらなければ良かったと思う。

 そうすれば母親もフェアニを嫌っていたはずだ。


「子供もいるし、一度お祓いに行くわよ」


 母親に嫌われている自覚は無いが子供を産むときに悪いモノが来ない様にするには良いかもしれないと考えていた。



「はぁ……」


 ギネカは本当なら嫌っている筈なのに我慢してフェアニを心配している母親に彼女は本当の意味で嫌わないだろうなと予想する。

 だが、それでも父親は別だろうと考えている。

 もしかしたら両親の不和で家族が別れるかもしれないが、それはそれで都合が良いと思ってしまう。


 それよりも次はアムルだ。

 今度は失敗しない様にする必要がある。

 できれば周りに親しい者や関係の深い者がいない場所。

 一人の時に薬を飲ませなくてはならない。


「後で事務員の人には文句も言わないと……」


 ギネカが望んでいたのは皆に嫌われて追い出され孤独になる姿。

 望んでいたモノと実際にはかなり違う。

 当人の目の前で薬を使ったら違う効果になるかもしれないとか説明責任を果たして欲しいと考えていた。


 正直に言って薬を使っている筈なのに忌々しく思っているのを我慢して理性的に振る舞い協力的な姿は感動してしまう。

 ある意味ではこの姿を見られただけで薬を使った意味はあった。

 だけど望んではいたものではない。


「そういえば父親はどう思っているんだろう……」


 母親は効果が無かった。

 それは目の前で使って感情が変化したのを自覚したせいだから。

 なら既に使った後ならどうなるのか興味がある。


「ただいま……」


 そして都合よく父親が帰ってくる。

 これで、どうなるのか見ることが出来てギネカは気分が良くなる。

 父親にも効果が無かったら不平不満をぶつけてやると考える。


「フェアニ……」


「なんだよ?」


「お前、良い加減にその言葉使いを止めろ!」


 父親はそう言ってフェアニを叩こうとする。

 だがフェアニもそれを防ぎ睨みつける。


「いきなり何だよ?」


  どうやら父親は薬の効果でちゃんと娘を嫌っているようだ。

 母親は忌々しく感じると言っていたが、効果が目に見えてなかったから本当に効果があるのか、少し不安だったが、やはり本物だったらしい。

 それならと安心してギネカはアムルにも使うことが出来る。


 フェアニの家族については数の差もあるし、どうせ母親が味方して父親が追い出されれると想像できる。

 そして追い出された父親の代わりにアムルが、あの家の中に入れば後の行動がしやすくなるとギネカは考えていた。

 その為に早速、アムルへと薬を飲ませようとギネカは家から出て行った。

 向かう先は当然、アムルの家だ。

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